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ヤマダ電機、大塚家具“救済”で揺らぐ業界トップの座…極めて低い相乗効果
https://biz-journal.jp/2020/02/post_141251.html
2020.02.14 文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント Business Journal
LABI1日本総本店 池袋(写真:アフロ)
家電量販店最大手のヤマダ電機は2月7日、大塚家具が扱う商品を販売する家電量販店を東京と大阪に4店舗、同時にリニューアルオープンした。ヤマダは家電と家具の併売を強化して暮らしにまつわる商品を複合的に提案し、販売を拡大させたい考えだ。
だが、安売りのイメージが強いヤマダの家電と、中・高級家具を販売する大塚家具の家具を一緒に販売して相乗効果が得られるかは未知数だ。はたして両社の協業はうまくいくのか。
新たにリニューアルオープンしたのは、「LABI1日本総本店 池袋」(東京都豊島区)、「LABI品 川大井町」(同品川区)、「LABI LIFE SELECT 千里」(大阪府 豊中市)、「LABI1なんば」(大阪市)の4店舗。家電とともに大塚家具の商品を販売する。
ヤマダと大塚家具は2019年2月に業務提携し、12月にヤマダが大塚家具の第三者割当増資を引き受けて子会社化した。これを機に大塚家具によるヤマダへの商品供給が進み、大塚家具の商品を展開する店舗は18店から34店にまで拡大した。
大塚家具は販売不振により、18年12月期まで3期連続で最終赤字になるなど苦戦が続いている。それに伴い財務状況が悪化していたため、ヤマダからの出資で財務状況の改善を図った。また、ヤマダへの商品供給で収益拡大を目指している。
一方のヤマダは、家電市場が頭打ちになるなかで住宅関連事業を収益の柱にしようとしており、大塚家具の商品を増やすことで品ぞろえの強化を図りたい考えだ。また、ヤマダは17年から家電に加えて家具などを販売し、住空間をトータルで提案する「家電住まいる館」の展開を始め、19年12 月末時点で108店を展開するまでに拡大したが、大塚家具の商品が増えることで提案力の強化も図る。
■相乗効果が低いヤマダ電機と大塚家具
こうした状況のなか、ヤマダは大塚家具の商品を置いた店舗を4店舗同時オープンした。そこで筆者は「LABI1日本総本店 池袋」を訪れてみた。
同店では、地下1階のフロアに大塚家具の商品を大々的に展開している。品ぞろえは、中価格帯のソファーやダイニングセットなどが中心。こうした家具などを家庭の部屋のように並べ、所々にテレビや電子レンジなどの家電を置いていた。こうしたかたちで「暮らしにまつわる商品を複合的に提案」するということだろう。
ただ、家電の配置は圧倒的に少なく、申し訳程度にしかない。コラボによる相乗効果を狙っている意図はほとんど感じられない。
上階の一部コーナーでもコラボ展開はある。たとえば、テレビのコーナーに大塚家具のソファーを売り物として配置しているといった具合だ。テレビを見るためのソファーを提案するということだろう。だが、買い替えサイクルが異なるテレビとソファーを一緒に買う人がどれだけいるのかは、疑問だ。
やはり、安売りのイメージが強いヤマダと高級家具を扱う大塚家具のコラボによる直接的な相乗効果は限定的だろう。大塚家具の商品を目的とした客が、ヤマダの家電をついでに買うケースは多少あるかもしれないが、その逆はほとんどないのではないか。
また、大塚家具がターゲットとする比較的裕福な人が、ヤマダで大塚家具の商品を購入するかは微妙なところだ。大塚家具の商品を置いたフロアで集客ができなければ、大塚家具の商品を目的とした客のヤマダの家電コーナーへの送客も見込めない。
実際の売り場を見たところ、相乗効果を見込むというよりは、大塚家具に販売機会を提供する意味合いのほうが強そうだ。大塚家具はこれまでに、賃料削減を目的とした店舗の閉鎖を進めてきた。それにより採算性はある程度改善したが、一方で売り上げが減ってしまった。そこでヤマダは大塚家具に商品を販売する機会を提供することで、大塚家具に売り上げを上げる機会を与えたのではないか。
ただこの場合、家電を配置する売り場が減ってしまうので、家電の品ぞろえが悪化してしまい、家電の販売が落ち込んでしまう可能性がある。そのため、家電の売り上げの落ち込み以上に家具の売り上げを確保する必要がある。結局は、大塚家具の商品力とブランド力が向上しなければ、にっちもさっちもいかないということだ。相乗効果も大塚家具の商品力とブランド力があってこそだろう。
大塚家具は商品力とブランド力の低下が一因で、販売不振が依然として続いている。1月の既存店売上高は前年同月比7.2%減と大きく落ち込んだ。昨年10〜12月に至っては、いずれも20%超の大幅マイナスとなった。販売不振に歯止めがかかる兆しは見えていない。こうした状況から脱却するために、ヤマダは大塚家具の商品力とブランド力を高めることも求められている。
■ヤマダ電機、増収増益でも頭打ち感漂う
もっとも、ヤマダ自身も収益が伸び悩んでおり、大塚家具だけを心配すればいい状況にはない。
足下の19年4〜12月期連結決算は、売上高が前期比2.2%増の1兆2179億円、経常利益が51.5%増の416億円と増収増益となっており、決して悪い内容ではない。だが、中長期的な視点で見ると、風景は異なる。
直近本決算の19年3月期の売上高は1兆6005億円、経常利益は368億円だった。巨額の収益を叩き出しているが、ピークとなる11年3月期(売上高2兆1532億円、経常利益1378億円)と比べると、大きく落ち込んでいる状況だ。この8年間で売上高は7割強、経常利益は3割弱の水準にまで低下した。近年は、かつてのような強さがないのだ。
競合との比較でも懸念がある。ヤマダの売上高は業界最高だ。競合の18年度の売上高はビックカメラが8440億円(連結)、エディオンが7186億円(同)、ヨドバシカメラが6931億円(単独)、ケーズホールディングスが6891億円(連結)となっている。ヨドバシは非上場企業で単体決算しか開示していないため単純比較はできないが、ヤマダの売上高が突出していることがわかる。だが、利益率は必ずしも高いとはいえず、経常利益は業界最高ではない。
ヤマダの18年度の売上高経常利益率は2%で、ヨドバシ(8%)、ケーズ(6%)と比べると低い。また、ヤマダの経常利益は368億円で、ヨドバシ(573億円)、ケーズ(385億円)よりも少ないのだ。
こうした状況下にあって、ヤマダは多少のリスクを冒してでも大塚家具を傘下に入れて住宅関連事業を強化し、収益を高めたいのだ。家電市場に頭打ち感が漂うなか、各社は非家電分野の強化が急務となっている。ヤマダは大塚家具との相乗効果を発揮して収益を向上させ、売上高の向上はもちろん、利益の面での復権を目指す。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。
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