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創業320年、山形県最後の百貨店・大沼はなぜ倒産?全国で百貨店が消滅し始めている
https://biz-journal.jp/2020/02/post_140315.html
2020.02.05 文=編集部 Business Journal
山形の老舗百貨店、大沼(「Wikipedia」より/Suz-b)
■山形県は全国で唯一、百貨店がなくなった
老舗百貨店、大沼(山形市、長沢光洋代表取締役)と関連会社の大沼友の会は1月27日、山形地裁に破産を申し立て、同日、破産開始決定を受けた。負債総額は大沼が約30億円、大沼友の会が約3億円。従業員191人は26日付で解雇された。
地元紙の山形新聞(1月28日付)は次のように報じている。
<記者会見で長沢氏は27、31日の取引先約500社への支払資金約4億円を用意できず、大沼の破産を最終決断したと説明した。それぞれ年間1億円超のシステム維持費、駐車場費用も重荷だったとし、「資金繰りに追われ、策を打てず、なんともならなかった。320年の歴史に幕を閉じ、言葉では表せないほど重く受け止めている」と苦渋の表情を浮かべた>
大沼は江戸時代の元禄13(1700)年創業の老舗百貨店。本店に加え、酒田店、米沢店、酒田中町店を出店していた。最盛期の1993年2月期の売上高は196億円。その後は郊外型の大型商業施設や隣接する仙台市内の百貨店に買い物客が流れ、業績は悪化の一途をたどった。17年2月期の売上は85億円、19年2月期には74億円まで急減。19年10月以降は消費税増税の影響で前年同月比30〜40%の減少が続いていた。
この間、経営は迷走した。東京商工リサーチの「倒産レポート」は、次のように伝えている。
<2018年4月に事業再生を手掛ける投資ファンドのマイルストーンターンアラウンドマネジメント(東京)が大沼の発行済み株式の全てを取得。体制を刷新し、抜本的な再建に着手した。しかし、マイルストーンの出資金の使途を巡り、金融機関や従業員との関係が悪化。2019年3月に電撃的に臨時株主総会が開催され、大沼の執行役員らが出資する大沼投資組合が経営権をマイルストーンから奪取。大沼投資組合や地元支援者による経営再建がスタート。19年8月には米沢店を閉店するなどリストラを進めたものの、資金繰りが限界に達した>
かくして山形県は全国で唯一、百貨店のない県となった。
■北九州市が出資する第三セクターの商業施設が破産
北九州市八幡西区の百貨店、井筒屋黒崎店が入居するショッピングモール「クロサキメイト」(8階建て)の運営会社メイト黒崎(重越謙二社長)は1月24日、東京地裁に破産を申し立て、同日、保全管理命令を受けた。負債総額は約25億円。
メイト黒崎は北九州市も出資する第三セクター。1979年、JR黒崎駅前の再開発に伴い、黒崎そごう、ジャスコ黒崎店を核テナントとする専門店街としてオープンした。そごう、ジャスコが撤退した後の2001年、西側1〜7階に井筒屋黒崎店が出店、東館にファッション店や飲食店などが入居していた。
だが、黒崎地区の地盤低下に伴って、井筒屋は黒崎店を19年5月末に閉店すると発表。地元からの継続要望を受けて、19年8月に黒崎店を1〜3階に集約して、営業フロアを半分以下に縮小した。
地元紙の西日本新聞電子版(1月24日付)は、<メイト黒崎によると、井筒屋黒崎店の縮小後は賃貸料収入がほぼ半減。後継テナントも見つからず、毎月4千万〜5千万円の赤字を計上する事態が続いていた>と伝えている。専門店街「クロサキメイト」(約80店)は4月末に閉店する。ショッピングモールの破産、百貨店の撤退でJR黒崎駅前の地盤低下は一段と加速する。
■全国百貨店の売上高は前年同期比8.8%マイナス
日本百貨店協会がまとめた2019年の全国百貨店の売上高(既存店ベース)は18年比1.4%減となり、2年連続で前年を下回った。10%の消費増税後の19年10〜12月は前年同期を8.8%も下回った。6年前、消費税が8%引き上げられた後の3カ月間より、2.5ポイントも落ち込み幅が大きかった。全店ベースの売上高は18年比1.4%減の5兆7574億円で、6年連続のマイナスとなった。1年間で調査対象となる店舗が閉店などで11店も減った。
インバウンド(訪日外国人)需要は好調だ。中国が免税品の販売規制を強化するなどのマイナス要因はあったが、免税売上高は2%増の3461億円で3年連続で過去最高額を更新した。訪日客に人気が高い化粧品は通年で2.6%増と健闘した。しかし、地域別では人口減少が進む地方の店舗の苦戦が目立った。主要10都市の既存店が前年比0.8%減だったのに対し、地方店は2.8%減だった。
2020年には百貨店はさらに減る。そごう・西武は、今年から来年にかけて神戸市や徳島市など5店舗、高島屋も今年、神奈川県の店舗を閉めることが決まっている。山形県の老舗百貨店・大沼の破産は地方百貨店が存亡の危機に立たされていることを象徴している。地方百貨店の共倒れが現実味を帯びてきた。
■消費を牽引してきた大型ショッピングセンターの出店が鈍化
ショッピングセンター(SC)が日本の消費を牽引してきた。日本ショッピングセンター協会の統計によると、18年度(18年4月〜19年3月)のSC年間総売上高は32兆6595億円。17年度比1.9%増だった。再開発といえば、スーパーを核テナントとして専門店・飲食店を集めるSCが定番だった。全国至るところにSCが乱立した。だが、出店ベースが鈍化してきた。
同協会によると2019年の国内SCの総数は3219施設で18年末に比べて1施設減った。前年割れは03年以来、16年ぶり。ネット通販の伸長や衣料品の販売不振が響き、閉鎖する施設の数が新店を上回った。
苦戦する大型商業施設が増えるなか、アウトレットモールは好調だ。三菱地所、三井不動産系の2強の売上高は過去最高を更新した。三菱地所・サイモンが全国9カ所で手掛けるプレミアム・アウトレットの18年度のテナント売上高は3535億円と17年度比3%増えた。三井不動産が全国12施設を運営する三井アウトレットパークの18年度のテナント売上高は、3289億円と17年度比2%増だった。アウトレットの2強が勝ち組で優勝劣敗が鮮明になった。
米国では、ネット通販に押されカジュアル衣料の米フォーエバー21が経営破綻したように、SCを支えてきたテナントの小売店などの集客力が低下。米国ではSCの2割が閉鎖するとの予測がある。米国で起こることは数年後に日本でも現実となる。メイト黒崎の破産はSCの倒産ラッシュの先駆けとなるのか。
(文=編集部)
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