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元国税が暴露、国民に節税させない国税庁「誤誘導」の汚い手口
https://www.mag2.com/p/news/435729
2020.01.20 大村大次郎『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』 まぐまぐニュース
所得控除のひとつに「雑損控除」がありますが、その「権利」をみすみす逃している方は膨大な数に上るようです。元国税調査官で作家の大村大次郎さんは今回、メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、意図的に雑損控除を受けさせぬようHP等で国民を誤誘導する国税庁の汚い手口を暴露するとともに、自然災害はもちろん、盗難被害や蜂の巣駆除の費用など、雑損控除の対象となる事案や申告方法を詳しく紹介しています。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2020年1月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
わざと雑損控除を受けさせない〜国税庁サイトの誤誘導
「元国税が暴露。定年退職者の多くが『税金を払い過ぎている』現実」では、国税庁が、退職した人が過払いになっている税金についてほとんど広報していないということをご紹介しました。今回はそれよりももっとひどいことをご紹介したいと思います。国税がわざと誤解を招くような広報をし、国民の節税の道を閉ざしているということについてです。
国税庁は、一般の方から見れば、正義の味方のように見えるかもしれません。しかし、内部にいたものから見れば、まったくそんなものではありません。むしろ、これほど国民に不親切な官庁はないといえます。不親切どころか騙しに近いような方法で、国民から税金を取り立てているのです。国税庁の大きな問題点の一つに、税の徴収は厳しく行う割に、税に関する正しい情報を流したがらない、ということがあります。特に、「節税に関する情報」を流すのは非常に消極的です。
国税庁や税務署は、納税者が有利になるような情報は、なるべく伏せます。たとえば、納税者が税務署の窓口に税務相談に訪れたとき、税務署の職員がその納税者に対して「あなたはこういう申告をした方が有利になります」などとは絶対に言わないのです。
税務署員は、納税者から聞かれたことには答えますが、その人が得になる情報を進んで話すことは絶対にないのです。税務署というのは、行政サービスの一環です。国民が得になることがあるのを知っていながら、わざとそれを教えないというのは、行政サービスとして失格のはずです
しかも、国税庁は、国民に有利な情報を教えないばかりか、国民にわざと誤解をさせて、節税をさせないというようなこともしています。そのため、国民は、本当は、節税ができる機会があるのに、情報がないばかりに節税ができないのです。
たとえば、所得税には、雑損控除というものがあります。この雑損控除というのは、自然災害や盗難にあった人の税金が割引になるという制度です。ざっくり言えば、自然災害や盗難などで、所得の10分の1以上か、5万円以上の被害があれば、それを超えた分を所得から控除できるのです。
この制度は、本来は、かなり対象者が広いのです。台風などの被害にあった場合、修繕費などで5万円以上かかるようなケースは多々ありますから。しかし国税庁は、この雑損控除についてホームページでわざと誤解させるような記述をして、門戸を狭くしているのです。国税庁のサイトでは、「雑損控除ができる金額」として以下の文面が記載されています。
■雑損控除として控除できる金額 次のふたつのうちいずれか多い方の金額です。 (差引損失額)−(総所得金額等所得)×10% (差引損失額のうち災害関連支出の金額)−5万円 (注)「災害関連支出の金額」とは、災害により減失した住宅、家財などを取壊し又は除去するために支出した金額などです。 〜2020年1月15日現在の国税庁ホームページからそのまま抜粋〜 |
これを読んだ皆さんは、おそらくこう思うはずです。「災害関連支出というのは、建物を取り壊したり、除去したときの費用だけなんだな」と。この注意書きを読めばそういうふうにしか取れないはずです。
そして、災害で建物を取り壊したり、除去のために業者に頼むとなると、相当大きな被害にあったときに限られます。だからほとんどの人は、「自分は違う」と思ってしまいます。
しかし、この記述には一番大事なことが抜けているのです。災害関連支出というのは、「災害で被害にあったときの家などの原状回復のための修繕費」も含まれるのです。家などがちょっとした被害を受けて、修繕したような場合も対象となるのです。所得税施行令206条では、災害関連支出には「損害を受けた住宅家財などを現状回復するための費用も含まれる」と明記してあります。つまり原状回復のための修繕費が5万円以上かかれば雑損控除を受けることができるのです。だから、雑損控除というのは、かなりハードルの低い、対象者の多い控除なのです。
この部分について、筆者は国税庁の電話相談室にも確認しました。そして、雑損控除の災害関連支出には原状回復のための修理費も含まれるという明確な回答も得ており、それは記録もしております。
修繕費用は雑損控除に含まれないような文面
災害関連費の説明としてもっとも大事なものは、この修繕費のはずです。災害で被害があった人は、そこが一番重要な情報なはずです。この重要な情報を、わざとはずして記載し、それが不可能のような印象を与えているのです。
この国税庁のサイトは、わざと一番該当する人が多い事項をはずしているとしか思えません。つまりは、わざと適用条件が狭いように思わせて、雑損控除を受けさせないようにしているわけです。意図的に読者に誤解させて、節税の方法を閉ざしているのです。完全に確信犯といえるでしょう。
もしこれが民間企業だったら、「説明文に意図的な誤誘導がある」として行政指導を受けるレベルです。雑損控除というのは、災害を受けて困っている人にせめて少しでも税負担を軽くしてあげましょうという制度です。これをわざと受けにくくするなどということは「どこまで心根が腐った役所か!」という話です。
東日本大震災や近年の地震、台風の被害者の方なども、家が少し壊れて修繕したような人が、もし国税庁のホームページを読んだとき、「自分は家を取り壊したりしていないので、該当しないんだ」と必ず思ってしまったはずです。国税庁は、全体的にこういう傾向があります。市民が税金に疎いのをいいことに、わざと大事な事を書かなかったり、誤解されるような表現をして、節税をさせないのです。
本当の雑損控除の条件とは?
ついでですので、雑損控除の条件等についてここで確認しておきますね。この雑損控除の範囲は意外と広いのです。前述したように、大雨や台風、大雪などで、家の一部などが壊れてそれを修繕したような場合も対象になります。台風に備えて、土嚢やスコップなどを購入した場合、その購入費も対象になります。家に浸水などしていなくても、「塀が壊れた」「ガレージが水浸しになった」「水道が壊れた」「車が壊れた」などでその修復に費用がかかったような場合は、対象になります。
また修繕をしていなくても、実際に被害にあって、損害を受けていれば控除の対象になります。自然災害などの修繕費用は、災害の日から1年以内に修繕したものでなければなりません(災害の状況などでやむを得ない事情があれば3年以内までOK)。
雑損控除の場合、損失額が大きくて、その年の所得金額から控除しきれない場合には、申告を要件に翌年以後3年間の繰越控除が認められています。だから、台風、地震などの災害にあった場合、その年だけでなく、3年分の税金が安くなるのです。
あと、盗難にあった場合も対象になります。これは家に泥棒が入ったときだけじゃなく、スリや置き引きなどで、被害を受けた人も対象になります。また「雪下ろしの費用」「しろあり駆除」「すずめばち駆除」も対象となります。「雪下ろし費用」は、「自然災害の費用」とみなされるのです。雪かきのために、購入したスコップなども対象になります。そして、しろあり、すずめばちなどの害虫も、自然災害とみなされます。クマが出る地域で、クマ対策にお金がかかれば、それも当然、対象となります。
この雑損控除を受ける場合は、盗難などの場合は、警察からもらう「被害証明書」、自然災害の場合は、修繕費などの領収書が必要となります。都道府県によっては、警察の被害証明書を出してくれないところもありますが、その際には、受理番号などを教えてくれますので、それを控えておいてください。
ただし、この雑損控除は、サラリーマンの方は会社に言ってもダメで、自分で申告しなければなりません。が、被害状況等の資料を持っていけば、税務署で簡単に申告できます。税務署に行く前に、必要な資料などを問い合わせておきましょう。また計算方法などに不明な点がある場合、税務署で自分の被害状況など話して計算してもらいましょう。税務署もさすがに、被害にあった人が申告をしようとする段階では、嘘はつきませんので。ここで嘘をつけば、もう完全に犯罪ですから。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より一部抜粋)
(続きは『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』を購読するとお読みいただけます。2020年1月中のお試し購読スタートで、この続きを含む、1月分の全コンテンツを無料(0円)でお読みいただけます)
image by: Jarretera / Shutterstock.com
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