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日産、販売奨励金がトヨタの2倍でも売れない末期状態…ゴーンのコスト優先経営で荒廃
https://biz-journal.jp/2020/01/post_137740.html
2020.01.21 文=松岡久蔵/ジャーナリスト Business Journal
ゴーン被告が無断出国 夫妻でインタビュー応じる(写真:ロイター/アフロ)
「結局、新車をつくれない自動車メーカーは支持されないということなんですよ」――。
ある自動車メーカー関係者は、2019年の日産自動車の米国新車販売台数が前年比1割減となり低迷が続いていることをこう評した。日産はかつて「技術の日産」として、トヨタ自動車にも並ぶ日本のトップ自動車メーカーとしてその名をはせたが、それも今は昔。調査会社マークラインズが1月4日に集計した、12月単月の新車販売台数は前年同月比3割減となっており、トヨタの6.1%減、ホンダの12%減に比べればその凋落ぶりは明らかだ。しかも、「ディーラーに支払う販売奨励金(インセンティブ)は4700ドル(約50万円)とトヨタ、ホンダの2000ドル(約20万円)の2倍以上」(業界筋)なのに、売れないことも、日産車の不人気ぶりを証明している。
日産といえばカルロス・ゴーン元会長が保釈中にもかかわらずレバノンに逃亡するという衝撃的なニュースが年末に日本中を駆けめぐった。ゴーン氏は日産のV字回復の功労者というイメージが強かったが、ある大手証券ストラテジストは新車の開発力が低下した理由を「過剰なコスト意識」にあったと分析する。
「自動車メーカーは時代に応じたコンセプトを常に考えながら、単なるモデルチェンジではなくて最新テクノロジーを基本設計に埋め込んだ『新しい車』を製造し続けていかなければ、すぐに時代遅れになっていきます。日産にはそれが致命的に欠けている。トヨタが静岡県裾野市に自動運転などの実証都市を建設するプロジェクトを立ち上げるなど、常に先手先手を打っていく姿勢と比べれば雲泥の差です。
はっきりいって、ゴーン氏は“コストカッター”としてリストラなどを進めたのはいいものの、よい自動車をつくるという肝心のところが不徹底だった。そのわかりやすい例が素材となる薄板鋼板。彼が国内高炉メーカーに値下げを迫り、海外メーカーからでも安い鋼板を仕入れるという姿勢になったために、採算が悪化した国内メーカーが再編を迫られました。その結果、川崎製鉄と日本鋼管が合併し『JFEはゴーンのせいで誕生した』と鉄鋼業界内では憎悪をもって語り継がれています。
そういう『コスト意識』が第一に来る人ですから、安全性や面白さといった車の良さはどうしても後に回る。それが今の低迷を招いたということでしょう。彼自身のスキャンダルもブランド価値を著しく落としたことは間違いありません」
さらに、ゴーン氏なき後の昨年12月、「トロイカ(3頭体制)」として経営再建を進めようとしていた矢先に、プロパーで中国合弁会社の総裁も務めたキーマンの関潤・副最高執行責任者(副COO)が日本電産に入社することを電撃発表。米国での低迷だけでなく、中国という重要市場での戦略も宙に浮いた状態となっている。
日産が巻き返せるか、前途は暗いといわざるをえない。
(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)
●松岡 久蔵(まつおか きゅうぞう)
Kyuzo Matsuoka
ジャーナリスト
地方紙勤務を経てフリーに。マスコミの経営問題や雇用、農林水産業など幅広い分野をカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや東洋経済オンラインなどにも寄稿している。ツイッターアカウントは @kyuzo_matsuoka
ホームページはhttp://kyuzo-matsuoka.com/
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