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独自】福島第一原発の処理水増加量、前年より3割減 タンク貯蔵ペースダウン 放出急ぐ根拠揺らぐ/東京新聞
2021年12月30日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/151687
東京電力福島第一原発でたまり続ける汚染水を浄化処理した水(処理水)の2021年分の量が、前年より約3割減ったことが本紙の調べで分かった。1日当たりの増加量は126トンで、前年の170トンから大幅に減少。建屋屋根の補修が進み、汚染水発生源である雨水の建屋流入が抑えられたことが要因とみられる。東電は「23年春ごろ」に保管タンクが満杯になると主張しているが、本紙試算では満杯は「23年9月初め」となり、放出を急ぐ前提の期限が変わる。
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汚染水は24時間体制で浄化処理されており、汚染水の発生量は処理水とほぼ同じと想定できる。
東電は1日150トンの汚染水が発生した場合、「23年春ごろ」に保管タンクが満杯になると主張し、処理水の海洋放出に向けた準備を急いでいる。しかし、1日130トンならば、タンク満杯は「23年9月初め」と秋までとなり、放出を急ぐ前提の期限が変わる。
21年分の処理水の量は前年よりも降水量が増えたものの、1万8000トン減り4万5000トン。16年の4分の1にまで減少した。
東電が毎週公表する処理水の貯蔵量を基に、15年以降の年間と1日当たりの増加量を計算。21年は23日時点までのデータを、年間降水量は原発から最も近い(北西10キロ)福島県浪江町にある気象庁観測所の記録を参考にした。(小川慎一)
◆「建屋の屋根補修、想像以上の効果」
福島第一原発では2020年8月、3号機建屋の屋根に開いた大きな穴をふさぐ作業が終わり、汚染水増加につながる雨水の建屋流入を防ぐ対策が進んだ。一方、東京電力が主眼に据えてきた建屋への地下水流入を抑える対策は、巨額を投じているにもかかわらず効果がはっきり見えない。
「屋根の補修が想像以上に効果があった」と、東電の広報担当者は驚く。21年の汚染水発生量は前年よりも減少したとみているが、具体的な発生量は「評価中」とした。
事故時、1、3、4号機は水素爆発で原子炉建屋上部が吹き飛び、がれきが隣接のタービン建屋などの屋根に落ちて穴を開けた。3、4号機は使用済み核燃料の取り出しに伴い、原子炉建屋を覆う屋根ができた。
3号機タービン建屋はバスケットボールコート2面強の約1000平方メートルにわたって損傷し大きな穴もあったが、東電は20年7〜8月にカバーでふさいだ。
残る1号機も23年度中にカバーで覆われる予定で、その周辺の建屋屋根の補修も同時に進める。雨水が地中に染み込んで建屋に入るのを防ぐため、アスファルト舗装も進み、建屋周辺の25%で整備が完了。23年度中に50%を目指す。
◆国費345億円投入、凍土壁の効果は不明
一方、建屋への地下水流入を抑えるため、国費345億円を投じて造られた凍土遮水壁は、効果が不明瞭なままだ。本格運用から4年以上たった9月以降、地中の壁の一部が解けるほころびも見え始めた。
原子力規制委員会の更田豊志委員長は今月2日、原発視察時に「凍土壁はずっと続けるものではない」と別の建屋止水対策を講じるよう促した。ただ、東電は具体策を打ち出せてはいない。(小野沢健太)
福島第一原発の処理水 1〜3号機の原子炉に注入した冷却水が事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)に触れ、建屋に流入した地下水や雨水と混ざって発生する汚染水を、多核種除去設備(ALPS)で浄化処理した水。取り除けない放射性物質トリチウムが国の排出基準を上回る濃度で残る。政府は今年4月、2023年春をめどに処理水を海洋放出する方針を決定。東電は、大量の海水でトリチウム濃度を排出基準の40分の1未満に薄めて海へ流す計画を進めている。
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