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2021年11月7日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/141334
政府が原子力政策の柱とする「核燃料サイクル」が行き詰まっている。中核を担う原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す再処理工場は完成が見通せない。稼働した施設の廃止作業も放射性物質を含む廃液処理すら進まない。岸田文雄首相は脱炭素社会に向け二酸化炭素を排出しない原発の維持姿勢を示すが、核燃料サイクルの見直しは避けられない。(小野沢健太、小川慎一)
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◆トラブル続きで2022年度稼働は困難
「早く終わりたいがために、この程度でいいだろうという気持ちでやっている」。9月の原子力規制委員会定例会合で、原子力規制庁の審査担当者は、核燃料サイクルの施設を担う日本原燃(原燃)を批判した。
原燃は当初、再処理工場(青森県六ケ所村)などの稼働に必要な設備の設計や工事計画の審査で、耐震性を決める際に10年以上前の地盤データを使った。
だが規制庁は認めず、原燃が新規制基準の審査で使ったデータで再計算すると、地震時の揺れは当初想定の1.4倍に上がった。規制庁の審査担当者は「(これまでの)半年分の審査が振り出しに戻った」とあきれる。
1993年に着工した再処理工場は、トラブル続きで25回も完成を延期。原燃は2022年度の稼働計画を崩さないが、「普通に考えて難しい」と規制委の更田豊志ふけたとよし委員長は7月の記者会見で指摘した。核燃料サイクルは担い手の力量不足が深刻な状況にある。
◆施設の廃止も想定外の遅れ
再処理は施設の廃止でも壁にぶつかっている。日本原子力研究開発機構の東海再処理施設(茨城県東海村)は18年に廃止作業が始まったが、再処理の過程で出た極めて放射線が強い廃液約360トンのガラス固化が進んでいない。
廃液は発熱し、保管に必要な冷却設備が故障すれば、最短1日程度で沸騰し放射性物質が外部に漏れ出す事故につながりかねない。ガラス固化はリスクを下げる。
ところが、ガラスを溶かして廃液と混ぜる溶融炉の運転がうまくいかない。今年8月に約2年ぶりに運転再開したが、2カ月で中断。想定よりも早く溶融炉の底に残留物がたまった。年内に60本のガラス固化体を造る予定は13本にとどまり、28年度までにあと551本を造る計画は遅れる可能性がある。
「不退転の決意で臨んでもらわないと困る」。更田委員長は10月、機構幹部との面談で念押しした。強い放射線を受ける溶融炉は、全ての廃液を処理する前に寿命を迎える。
機構は高性能な炉の開発を同時に進めているが、遅れた場合は「70年、国費約1兆円かかる」と見込む廃止計画全体への影響が必至となる。
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核燃料サイクル 原発の使用済み核燃料から再処理という化学処理でプルトニウムやウランを取り出し、混合酸化物(MOX)燃料に加工して原発や高速増殖炉で再利用する仕組み。高速増殖炉は使った以上のプルトニウムを生み出す夢のような計画だが、原型炉もんじゅ(福井県)の廃炉で頓挫した。放射性廃棄物の有害度を下げる高速炉の開発に転換したが、実用化のめどは立っていない。
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