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2021年3月20日 20時29分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/92694
2月13日夜に東北・関東を襲った最大震度6強の地震では、東京電力福島第一原発の地震計が4カ月以上前に撤去されていたことが判明するなど、10年前の事故で損傷した原発が抱える危険性と、東電のずさんな体制が浮き彫りになった。20日には再び宮城県などで最大震度5強の地震が発生。建屋内の放射線量が高く通常の保守点検ができない状況で、終わりの見えない「廃炉」に向けて続く作業の安全性は確保できるのか。(福岡範行、片山夏子)
◆故障後も撤去されたまま
福島第1廃炉推進カンパニーの小野明・最高責任者は2月25日の記者会見で謝罪に追われた。3号機原子炉建屋に設置したはずの地震計が、故障で撤去されたままだったからだ。
「私が(故障を)把握したのは、申し訳ないです、2月19日です」。2台設置された地震計は昨年7月に1台が、たまり水につかって故障。3カ月後にはもう1台も使えなくなっていた。その事実をトップが7カ月半も知らなかった。
1〜4号機にもともとあった原子炉緊急停止の判断用の地震計は、10年前の津波と事故で使用不能になった。東電は昨年4月、水素爆発で損傷した3号機建屋の揺れ具合を把握するため、先の地震計2台を設置したのだが、結局、小野氏が強調する「貴重なデータ」は全く取れなかった。
2月の地震後、溶け落ちた核燃料(デブリ)が残る1、3号機の原子炉格納容器で水位が低下。事故時にできた損傷部分が広がったとみられる。浄化途中の汚染水などを保管するタンク53基の位置も最大19センチずれた。タンク同士をつなぐ配管が外れたら、汚染水が大量に漏れる恐れがあった。
◆「損傷の広がり分からない」
地震への備えを難しくさせているのは、建屋内の放射線量の高さだ。ある作業員は「中が見えないから、どう損傷が広がっているのか分からない」と漏らす。
鉄筋コンクリート建造物が専門の滝口克己東京工大名誉教授は2019年に、日本原子力学会の分科会で福島第一原発の建屋の性能評価をとりまとめた。「原子炉建屋は厚さ1・5メートルや2メートルの壁がざらにある」といい、倒壊の恐れは低いと指摘する。
滝口氏が懸念するのは、建屋の局所的な劣化の進みだ。壁内の鉄筋がさびて膨らみコンクリートから露出すれば、さびが加速するため、ひび割れなど異変に早く気付く必要がある。地震計による観測は劣化傾向をつかむ点で貴重なものの、「目視点検の代わりにはならない」と断言する。
◆「東電は緊張感が緩んでいる」
東電によると、1〜3号機建屋の外観は19年度から年に1度ほど目視で点検。建屋内は事故直後にロボット調査をしただけで、ほとんど分かっていない。今年4月以降に、人が入っての点検を目指しており、実現すれば対策強化につながる。
ただ、作業担当者の被ばく線量を抑えることは必須で、手法や頻度は検討段階だ。デブリが残り、格納容器の上ぶたが極めて高濃度の放射性物質に汚染されている1〜3号機の原子炉設備の点検は、困難を極める。
プールの使用済み核燃料やデブリの取り出しも、現場の安全確保が最優先。事故を知るベテラン社員が減り、作業員からは「東電は緊張感が緩んでいる」という声も聞こえる。廃炉の責任者の小野氏は「津波には感度高く動いていたと思う。地震もしっかり考えないといけない」と強調するが、備えは間に合うのか。次の地震はいつ来てもおかしくはない。
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