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2021年3月10日 07時37分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/90604?rct=editorial
きょう三月十日は戦時下の一九四五年、東京大空襲に見舞われ、東京の下町地域を中心に十万人以上が亡くなった日です。そして、あす十一日は東日本大震災から十年。失われた命や、その後の困難に身を置く人々の痛みに思いをはせる時間が続きます。
東京消防庁の消防士だった中澤昭さん(84)は、それぞれの現場にいた消防隊員から話を聞いています。定年退職後、取材、執筆活動を続けてきました。
◆「生の声」を残したい
三七年の、現在の消防記念日にあたる三月七日に生まれた中澤さんは八歳の時、地元板橋区で空襲を体験しています。東京大空襲から二カ月後の五月。米軍は容赦なく東京を焼き尽くしていました。
父親は消防団として消火活動に駆り出され、中澤さんは母親、弟とともに逃げました。防空壕(ごう)は満員で入れず、隠れる場所のない畑で恐怖の一夜を過ごしました。
東京消防庁に入った後、「うちが燃えた記録はどこかにないのかな」と図書室に足を運び、空襲に関する記録を探しました。しかし戦時下の他の公文書と同様、敗戦とともに焼却されたものも多く、消防隊がどんな思いで活動していたかの記録は見つかりませんでした。隊員の生の声を聞いて残したいという気持ちが芽生えました。
二〇〇一年に出版した「東京が戦場になった日」(近代消防社)では、年少消防官や、学徒消防隊の元隊員たちに話を聞いています。徴兵で人手不足になった消防業務に駆り出されたのは十代や、兵役猶予されていた理系、医系の大学生だった若者たちでした。
同書によると、粗製乱造されたポンプ車はエンジントラブルが相次ぎ、隊員たちの命を脅かしたといいます。赤いポンプ車は戦争末期、「国防色」の茶褐色に塗り替えられました。防護の意味とともに、赤色の塗料が不足していたという事情もあったそうです。
◆美談にしてはいけない
劣悪な装備で三月十日の猛火にさらされた若者たちはなすすべもなく、犠牲者も出ました。救えなかった命に心を痛め、心身の回復に長く時間がかかった年少隊員もいました。
経験したことのない危険な状況の中での消防隊員の苦悩と苦闘は「3・11」にも共通します。
中澤さんは近著「行くな、行けば死ぬぞ!」(同)で、事故を起こした東京電力福島第一原発に、冷却のための放水部隊として出動した東京消防庁の後輩たちを取材しています。
妹から「お兄ちゃん、行っちゃだめ」と携帯電話に繰り返しメールを受けた隊員もいました。家族で「なぜ人は、他人のために命を懸けるのか」を話し合い、息子から「それでも行かない方がいい」と止められた隊員もいました。
がれきだらけの原発敷地内で慣れない防護服を着用しての放水作業は困難を極めました。
最初の放水の時には、敷地内で東電社員らの拠点となっていた免震重要棟の存在も知らされていませんでした。この建物を使うことができれば、移動の距離を短くできるなど、作業がもう少し効率的にできた可能性もあり、片山善博総務相(当時)は後に「応援を要請するのであれば、現地の全貌を明らかにしてほしい」と国会で苦言を呈しました。
政府事故調査委員会による吉田昌郎(まさお)・福島第一原発所長(故人)の聴取の記録、「吉田調書」では消防庁による放水の効果については、警視庁や自衛隊による放水とともに「意味がなかった」の一言で片付けられています。放水に当たった人々は命の危険と向き合い、家族とともに苦悩したにもかかわらず、です。
地下鉄サリン事件などさまざまな現場に出動した消防隊員から話を聞いてきた中澤さんは自問自答を繰り返しているといいます。人はどこまで人のために命を懸けなければいけないのか。新型コロナウイルスと直面している医療現場の人々の胸中でも同じ問いが繰り返されているかもしれません。
◆命守る行政を最優先に
中澤さんは言います。「私には分からない。答えが出ない。少なくとも命を懸けて人を救うことを美談にしてはいけない。命を守る行政を最優先にするべきだ」
中澤さんの意見に賛同します。社会にできることは、究極の判断を迫られるような状況をできる限り減らすことです。防火、防災の設備やそれを担保する法制度を充実する。非常時には関係機関が情報共有を徹底する。戦争は起こさない。原発事故を防ぐには、稼働しないのが一番の近道です。
命を救う人の苦悩を減らしていくことが、すべての人の命を守ることにつながります。そんな社会をつくることを後押しする。それが私たち報道機関の責務でもあると、あらためて思います。
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