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性急すぎる菅政権 福島原発処理水「海洋放出」決定の大罪
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/280398
2020/10/24 日刊ゲンダイ
世界が固唾を飲んで見守る「海洋放出」(福島第一原発の汚染水タンク群と菅首相)/(C)共同通信社
全国紙やテレビはほとんど報じていないが、世界各国が固唾をのんで今後の展開を注視している。政府が27日にも決定するとみられる、東京電力福島第1原発から出た放射性物質「トリチウム」を含んだ処理水の「海洋放出」のことだ。
23日、梶山弘志経産相ら政府関係者は会合を開催。地元自治体や漁業団体に対して実施した意見聴取や、公募で寄せられた意見書面を整理したが、どう考えても性急な「海洋放出」の政府決定は間違っているだろう。
処理水とは、福島原発の燃料デブリの冷却に使った水や、原子炉建屋などに流れ込んで汚染された地下水を「ALPS」(多核種除去装置)で処理してタンクに貯蔵したものだ。政府や東電は当初、これらの処理水を「トリチウム水」と呼び、人体や環境に対する影響は低い――などと説明していたが、その後、処理水には「トリチウム」だけではなく、「ヨウ素129」や「ストロンチウム90」など多くの放射性物質が含まれていたことが判明。政府や東電は「海洋放出」する際には、これらの放射性核種を二次処理して基準値以下にする――としているが、とても信用できない。
「トリチウム」は三重水素とも呼ばれる水素の放射性同位体だ。原子核崩壊で放出されるエネルギーが小さいため、人体や環境への影響も少ないとみられてきた。実際、福島原発からは事故前の2010年にも、2.2兆ベクレルの「トリチウム」が海洋放出されていて、政府は「トリチウムは水と同じ性質のため、人体や生物への濃縮は確認されていない」と説明している。
だが、「トリチウム」を大量に取り扱う技術者の被曝被害の報告例もある上、今の処理水には事故前の約400倍の約860兆ベクレルが含まれているというからケタ違いだろう。
恐ろしい研究データもある。新生児死亡率と「トリチウム」の放出量には相関関係がみられる、というカナダ原子力委員会(AECD)が1991年にまとめた報告書だ。
「カナダの原発は、中性子の減速材として重水を使うケースが多く、その重水が放射化して大量のトリチウムができる。80年代と時代は古いのですが、重水を使った原発のあるピッカリングや隣接地域の住民が行った調査によると、一帯ではダウン症の発症率の増加がみられ、AECDも小児白血病との相関関係を報告しています」(科学ジャーナリスト)
「海洋放出」に対し、福島放送などが2月に行った世論調査では約6割が「反対」と回答。菅首相は9月に福島県を訪問した際、「できるだけ早く責任を持って処分方針を決めたい」と話していたが、できるだけ早く決めることは「処分方針」ではない。まずは住民の意向をきちんと聞く場を設け、菅首相が毛嫌いしている学術界の知見に耳を傾けることではないか。
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