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(回答先: 慰安婦強制連行・吉田証言はやはり事実だった 投稿者 中川隆 日時 2020 年 8 月 15 日 07:31:19)
トラック島・慰安婦の抹殺措置
慰安所の第一南月寮,第二南月寮,第三南月寮,これらの三軒が薄赤い夜空を背景に,なにか妖花の花の踊りのように炎上した. 女たちは避難防空壕にもぐりこんでいた. 防空壕は現地人を使って掘った,洞穴に近い粗末な構築物だが,100人ほどの女を収容できるほどの大がかりなものだった. おなじく残存司令部とその兵隊は,辛うじて地下深くの防空壕の中にひそんで芋虫のように生きていた.
このとき,軍の参謀と若い将校たちは,慰安婦らを足手まといと考えたらしい.
こんどはトラック島が死戦場 → 玉砕の番
と判断したからである. そして女たちを抹消する手段を講じたのだ.
このときの模様を,トラック島の慰安婦について詳しく触れている西口克己の『廓』は,次のように描いている.
「その空襲の途切れた合い間に,密命を受けた志田少尉は二名の兵をつれて,女たちの入った洞穴へ近づいていく.
(いいか,問答無用だ. 決して言葉をかけてはならんぞ. 黙って始末するんだ.
あいつらは素人娘ではなくて商売女だ.
敵が上陸してきたら何をするか知れたものではない---国辱だ. わかったな)
緊張した少尉のささやき声に,二名の兵士は無言でうなずいた. 靴音を忍ばせて壕の入口に接近した少尉は,もう一度軽機をかまえ直した後,するどく笛[笛→西口『廓』では口笛]を吹いた.
壕の内部に果たして女たちがいるかいなか確かめるためだった. 壕はしーんとしていた. つづいてもう一度,今度は低く,君が代を吹いた.
突然,それまで何の反応もなかった壕の中から,獣の悲鳴にも似た異様なすすり泣きが一せいにわき起こったかとおもうと,暗闇にもそれと判る防空頭巾を被った5,6人の女たちがバラバラと取り乱した姿で入口からとび出してきた.
ダダダダ,ダダ--間髪を入れず,少尉の軽機が火を噴いた.
ほとんど叫び声を上げる暇もなく,女たちはキリキリと体をもむような姿勢で,地面へぶっ倒れてしまった.
同時に,少尉も兵も,猛烈な勢いで壕の入口へ突進し,次の女が飛び出してくる前に,真暗な洞穴の内部へ向けて,盲滅法な機銃掃射を加えていた.
洞穴に反響して耳を聾するばかりの凄まじい銃弾の響きにまじって,とぎれとぎれの鋭い悲鳴や,うめき声がしばらくつづき,やがて気狂いのように撃ちまくっていた少尉がようやく引き金を止めたとき--ガランとした壕の内部には……文字どおり死の沈黙がしーんと凍りついたように立ちこめていた.
それでももだ用心深く,ものの2,3分間もジッときき耳を立てていた少尉は,このときになって初めて用意していた懐中電灯で素早く壕の内部を照らし出してみた.……
露出した土壁にヤモリのようにへばりついて血しぶきを上げている女,
荒削りのパンの木の支柱にすがりついたままガックリと首を折っている女,
やや離れて一かたまりの肉布団のように折り重なって死んでいる女,
抱き合ったまま死んでいる女,
丸太ン棒のように転がっている女—
およそざっと照らしただけでも, 6,70人もの女たちが完全に事切れて血まみれの姿で死んでいた. しかも,ふと少尉が気づいたことには,それらのすでに死骸となった女の何人かの片手に顔剃り用のカミソリがしっかりと握りしめられていたのだった.
こうした種類の商売女にとっての唯一の武器ともいうべきその小さなカミソリは,……あちこちに投げ出されていた.
よし,任務完了,
"ははは"こんどは俺たちの死ぬ番だ,引き揚げろ,
昂然といい捨ていい捨てた少尉と二名の兵士は駆け戻って行った.」
だが,トラック島に,予期された米軍の上陸作戦はなく(同時に"玉砕"という名の悲劇もなく)素通りする形になった. トラック島の慰安婦の悲劇は,決してこの島に限ったものではない. いたるところの島の女たちが,この種の仕打ちに遭わされたのは確かである.
トラック島から,いちはやく日本へ引揚げてきた慰安所経営のボスらは,女たちの人命は念頭に置かず自己の金銭欲から絶えず嘆いたとか.
(わしはトラック島じゅうゲンくそ悪い島へ, 一生かかって貯めこんだ銭を捨てに行って来たようなもンや)
と. これが彼らの,よだれまじりの愚痴だったそうである.
http://d.hatena.ne.jp/dempax/20070809#p1
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