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NATO:地球上最も危険な軍事同盟
東欧と中欧のみならず、中東、中南米、アフリカとアジアでのNATOの大規模拡大は、果てしない戦争と、あり得る核戦争による破滅の前兆だ。
クリス・ヘッジズ
7月11日
北大西洋条約機構(NATO)と、何十億もの利益で、それに依存している軍需産業は、地球上で最も攻撃的で危険な軍事同盟になった。1949年に、東欧と中欧へのソ連拡大を阻止するため設立されたものが、ヨーロッパ、中東、中南米、アフリカやアジアでも、グローバル戦争マシンへと発展した。
冷戦が終わった途端、モスクワとの約束を破って、同盟に東欧と中欧の14カ国を取りこんでNATOは足場を拡大した。NATOは、間もなくフィンランドとスウェーデンを加える。NATOはボスニア、セルビアとコソボに爆弾を投下した。NATOは、アフガニスタン、イラク、シリアとリビアで戦争を開始し、百万人の死と、家を追い立てられた約3800万人の人々をもたらした。NATOは、アフリカとアジアでも軍事的足場を作っている。6月末、オーストラリア、日本、ニュージーランドと韓国という、いわゆる「アジア太平洋クワッド」をマドリッドでのサミットに招待した。NATOは、2021年12月、コロンビアと軍事教育連携協定に署名し、範囲を南半球に広げた。NATOは、NATOで二番目に大きな軍を持つトルコのイラクとシリア地域への違法侵略、占領を支持した。トルコが支援する民兵は、シリア・クルド人と、北部と東部シリアの他住民の民族浄化を行っている。トルコ軍は、北イラクの難民キャンプに対する複数の空爆や化学兵器の使用を含め、戦争犯罪のかどで告発されている。フィンランドとスウェーデンの連合加盟に対するレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の承認と引き換えに、2つの北欧諸国は、クルド人や他の活動家を厳しく取り締まり、シリアでの民主的自治を求めクルド人が率いる運動に対する支持を拒否する国内テロ法を拡大することに同意し、対トルコ兵器輸出制限を解除した。
ソ連の崩壊と共に時代遅れになり解体されるべきだった軍事同盟としては、なかなかの実績だ。NATOと軍国主義者は、外交、勢力圏の尊重と相互協力に基づく世界を推進する「平和の配当」を受け入れる意図は皆無だ。NATOは断固事業を継続するつもりだ。NATOの事業は戦争だ。それはヨーロッパ国境を越え、戦争マシンを遙か遠くまで拡大し、中国とロシアに対して、絶え間ない敵対関係になることを意味する。
NATOは、その報告書“NATO 2030: Unified for a New Era”「NATO2030:新時代の為の団結」で詳細に述べている通り、将来、ライバル国家、特に中国との覇権争いを考えて、長期的な世界的対立の準備を要求している。
「経済力と軍事力に支援されて、中国は、益々世界戦略の思惑を持っている」とNATO2030年構想が警告している。「中国は、インド・太平洋地域を大きく越えて、近隣諸国に対して、経済的強制と脅迫的外交と、武力を行使する意欲を証明した。今後10年にわたり、中国は、おそらく集団的回復力を構築するNATOの能力に挑戦し、重要なインフラを保護し、5Gなどの新興技術に対応し、サプライチェーンを含め経済の機微な部門を守る可能性が高い。長期的に、中国は益々ますます潜在的に欧州大西洋地域を含め世界規模で軍事力を投射する可能性が高い。」
モスクワと北京のお互いの近さより、ワシントンがモスクワと北京により近いことを確保していた冷戦戦略を、この連合ははねつけたのだ。アメリカとNATOの敵意が、ロシアと中国を友好同盟国に変えた。エネルギー、鉱物と穀物を含め、天然資源が豊富なロシアと製造とハイテクの巨人中国というのは強力な組み合わせだ。NATOは、もはや、両国を区別せず、最新の基本方針で、ロシアと中国間の「深まる戦略的提携」は「我々の価値観と権益に反する、規則に基づく国際秩序を弱体化するを企てを相互に強化する」結果となったと宣言している。
7月6日、ロンドンで、中国が「我々の経済と国家安全保障に対する最大の長期的脅威」だと発表するため、FBI長官クリストファー・レイとイギリスMI5長官ケン・マッカラムが、共同記者会見を催した。彼らは、ロシア同様、中国が、アメリカとイギリスの選挙に干渉したと言って非難した。レイは、この演説の相手である財界幹部に、中国政府は「皆様の技術、何であれ皆様の産業の役に立つものを盗み、それを皆様の会社より安く売り、皆様の市場を支配するために使うと断固決意している」と警告した。
この扇動的言説は不吉な未来の前兆だ。
市場について語らずに、戦争について語ることはできない。アメリカの政治的、社会的混乱は、減少しつつある経済力と相まって、その下落に対する解毒剤として、NATOとその戦争マシンを歓迎するようさせているのだ。
ワシントンとヨーロッパ同盟諸国は、中国の1兆ドル・一帯一路構想(BRI)が、アメリカ支配外の約70カ国の経済圏を結ぶつもりなのを恐れている。この構想はロシアと統合される鉄道、道路とガス・パイプライン建設を含んでいる。2027年までに、北京は1.3兆ドルをBRIに投じると予想されてる。10年以内に世界最大の経済になる軌道にある中国は、世界貿易の30パーセントを占める15の東アジア、太平洋諸国による世界最大の貿易協定、東アジア地域包括的経済連携をまとめた。既にグローバルな製造業生産高で、中国は、アメリカの16.8パーセントのほぼ2倍、28.7パーセントを既に占めている。
今年は約5パーセントに低下するが、昨年の中国成長率は立派な8.1パーセントだった。それと対照的に、2021年のアメリカの成長率は、5.7パーセントで、1984年以来最高だったが、ニューヨーク連邦準備銀行は、今年は1パーセント以下に下がると予測している。
世界準備通貨と、金融機関が送金指示のような情報の送受信に使うメッセージ交換ネットワークである国際銀行間金融通信協会国際銀行間金融通信協会(SWIFT)米ドルの専制から、中国やロシア、イラン、インドや他の国が自身を解放すれば、アメリカでドル価値の劇的下落と金融崩壊を引き起こすだろう。アメリカGDP全体より6兆ドルも多い、30兆ドルというアメリカ負債をもたらした莫大な軍事費は維持不能になるだろう。この負債を支払うには年間3000億ドルの費用がかかる。2021年に我々は軍にさら、8010億ドル以上使い、中国とロシアを含め、続く9カ国の合計より多く、軍に対する世界中の出費の38パーセントだ。ドルが世界準備通貨の地位を失えば、アメリカに、支出を切り下げ、海外にある800の軍事基地の多くを閉鎖し、経済崩壊で引き起こされる不可避な社会的、政治的大変動への対処を強いるだろう。NATOが、この可能性を速めたのは暗い皮肉だ。
NATOとアメリカ戦略家の目から見れば、ロシアは前菜だ。ロシア軍を窮地に落とし入れ、ウクライナで弱体化させられるとNATOは期待している。計画では制裁と外交的孤立が、ウラジーミル・プーチンを権力の座から排除する。モスクワに、アメリカのいいなりになる傀儡政権が据えられる。
NATOはウクライナへの軍事援助で80億ドル以上提供し、他方アメリカは、軍と人道援助で、ウクライナに、ほぼ540億ドルを誓約した。
だが中国がメイン料理だ。経済的に競争できず、アメリカとNATOは彼らの世界的競争相手の機能を損なうため、戦争という鈍器に頼っている。
中国に対する挑発は、NATOのロシアいじめの繰り返しだ。
NATO拡大と、2014年、アメリカが支援したキーウでのクーデターが、多くのロシア系住民がいる東ウクライナ、最初にクリミア半島占領、次にNATOに加入するウクライナの努力を阻止するため、ウクライナ全土を侵略するようロシアを仕向けたのだ。
同じ死の踊りは、中国が自国領の一部と見なす台湾を巡り、アジア太平洋でのNATO拡大で、中国と演じられている。中国は台湾の防空圏に軍用機を飛行させ、アメリカは南シナ海と東シナ海を結ぶ台湾海峡を軍艦に航行させている。5月、台湾に対する中国の主張と、南シナ海を支配する取り組みを引き合いに出し、アントニー・ブリンケン国務長官は、中国は国際秩序への最も重大な長期的挑戦だと呼んだ。最近、台湾総統は、ゼレンスキー風宣伝行為で、政府広報写真で、対戦車ロケット発射筒を持ってポーズを取った。
ウクライナでの紛争は、アフガニスタンからの屈辱的撤退を味あわされ、新しい紛争を必要としていた軍需産業にとって、たなぼただった。ロッキード・マーティンの株価は12パーセント上がった。ノースロップグラマンは20パーセント上がった。この戦争は、東欧と中欧で、軍事的存在を強化するため、NATOに利用されている。アメリカはポーランドに恒久軍事基地を建設中だ。40,000人強のNATO緊急対応軍は、300,000人の軍隊に拡大されつつある。何十億ドルもの武器が、この地域に流れ込んでいる。
だが、ロシアとの対立は既に裏目に出ている。ルーブルは、ドルに対し7年で最高に急騰した。ヨーロッパは上昇する石油とガス価格と、ロシアが完全に供給を停止しかねない不安のため、景気後退に向かって疾走している。欧米制裁による、ロシアの小麦、肥料、ガスと石油の消失は、世界市場の破壊、アフリカと中東での人道的危機をもたらしている。食品とエネルギー価格の高騰は、欠乏と壊滅的なインフレとともに、貧困と飢餓のみならず、社会構造変革と政治不安ももたらす。本当の実存的脅威である気候緊急事態は、戦争の神々をなだめるために無視されている。
戦争を作り出す連中は核戦争の脅威について恐ろしいほど無頓着だ。もし連中がウクライナに直接介入すれば、NATO加盟諸国に「あなた方が史上直面したどれよりも重大な結果に直面する」とプーチンは警告し、核兵器部隊に警戒態勢を命じた。ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダとトルコに配備したアメリカ核兵器のロシアへの近さは、どんな核紛争でも、ヨーロッパの多くが壊滅することを意味する。アメリカ科学者連盟によれば、ロシアとアメリカは、軍の備蓄で、それぞれ約4,000の弾頭を保有し、世界の核弾頭の約90パーセントを支配している。
ジョー・バイデン大統領は、ウクライナでの核使用は「全く許容できず」、そうした結果が何かはっきり規定せずに「厳しい結果を招く」と警告した。これはアメリカ戦略家が「戦略的曖昧さ」と呼ぶものだ。
中東での大失敗後、米軍は、焦点を、テロと不均衡戦争から、中国とロシアとの対決に移した。2016年、バラク・オバマ大統領の国家安全保障チームは、ロシアがバルトでNATO加盟国を侵略し、NATO軍に対し低出力戦術核兵器を使用する戦争ゲームを行った。どのように反撃すべきかについて、オバマ当局者は分かれた。
「閣僚と統合参謀本部メンバーを含め、国家安全保障会議のいわゆるPrincipals Committeeはアメリカが核兵器で報復する以外に選択肢はないと決定した」とエリック・シュロッサーがThe Atlanticで書いている。「他のいかなる類の反撃も決心の欠如を示し、アメリカの信頼性を損ない、NATO同盟を弱めると委員会は主張したが。だが適当な核目標の選択は困難なことが分かった。侵入しているロシア軍に打撃を与えれば、NATO加盟国の無辜の一般人を死なせる。ロシア内の標的を攻撃すれば、紛争を全面核戦争にエスカレートさせるかもしれない。結局、国家安全保障会議のPrincipals Committeeは、NATO同盟国への侵略に何の役も果たしていないがロシア同盟国という不幸を負った国ベラルーシへの核攻撃を推薦した。」
ニューヨーク・タイムズによれば、ロシアが核兵器を使った場合、何をすべきかについて、バイデン政権は戦争ゲームを行うため国家安全保障当局者のタイガー・チームを組織した。それほど強力でない核爆発は、何らかの形で、より受容しやすく、より大きい爆弾の使用に導かないかのように、核戦争の脅威は「戦術核兵器」議論で軽視されている。
キューバ危機を含め、我々は、これまで核戦争の瀬戸際にこれほど近づいたことはない。
「プリンストン大学の専門家が考案したシミュレーションは、モスクワが核の威嚇発射をして始まる。NATOは小さな攻撃で反撃し、それに続く戦争は、最初のわずか数時間で9000万人以上の死傷者をもたらす」とニューヨーク・タイムズが報じた。
ウクライナでの戦争が長く続けば続くほど、アメリカとNATOは、何年もではないにせよ、何カ月も、この紛争に何十億ドルもの武器をつぎ込む決意が固そうに思われ、益々、思いも寄らないことが、考えられることに変わる。軍需産業に利益をもたらし、アメリカ世界覇権の奪還を求める無駄な探求を遂行するため、アルマゲドンをもてあそぶのは、良くても無謀で、最悪の場合、大量殺戮だ。
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記事原文のurl:https://chrishedges.substack.com/p/nato-the-most-dangerous-military
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