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※紙面抜粋
※2022年5月17日 日刊ゲンダイ
【プーチン劣勢をどう読むか】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) May 17, 2022
異様な戦争報道下でのヌカ喜びは禁物だ
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/V79kMXcnEi
※文字起こし
「ウクライナ反撃で1000以上の集落を解放」「東部の川を渡ろうとしていたロシア軍の70以上の戦車などの破壊に成功」「ロシア軍北東部にある第2の都市ハルキウから完全撤退か」──。まるで戦争当事国のような情報の渦だ。
16日も日本のメディアは「戦況はこう着」などと、ロシア軍の「劣勢」を朝から繰り返し報じていたが、いずれも情報のソースはウクライナや米欧の国防筋、諜報筋ばかり。ロシアと戦う当事国と、それを支援する西側陣営がもたらす情報を一方的に伝えているだけに過ぎない。
プーチン劣勢情報だって、全てが真実とは限らないのではないか。「フェイク」とまでは言わないが、何らかの意図を含んだ「バイアス」がかかっていても、おかしくないのだ。
例えば、ロシアの侵攻開始以来、見ない日のない「地図」だ。
日本の大新聞・テレビは戦況解説のため、ロシア軍の進軍・制圧地域や、ウクライナ軍が奪還したとみられる地域を示す「侵攻図」を使っている。
この侵攻図の情報源として常に表記されているのが、米国の政策研究機関「戦争研究所」(ISW)だ。
米国政府の公的機関などではなく、あくまで民間の非営利組織である。ISWは防衛・外交問題に関する調査と分析を提供する「無党派のシンクタンク」をうたうが、米国では「積極的な外交政策」を支持する「タカ派」グループとして知られている。
所長はキンバリー・ケーガン氏。米国を代表する「ネオコン一家」の一人だ。ネオコン(新保守主義)とは、ブッシュ(子)政権内に勢力を持ち、アフガニスタンやイラクの泥沼化した「テロとの戦い」を主導した勢力である。
侵攻図を作成する米シンクタンクの正体
ブッシュ(子)政権は共和党が支えたが、ネオコンは民主党内にもいる。その1人が、オバマ政権の国務次官補時代からウクライナをNATOに加盟させようと猛烈に動いてきたビクトリア・ヌーランド氏だ。
彼女は今、民主党のバイデン政権で国務次官となり、夫はネオコン論客のロバート・ケーガン氏。その父はギリシャ古代史の大家ドナルド・ケーガン氏で、その弟の妻が前出のISW所長、キンバリー・ケーガン氏という間柄だ。現政権にも、筋金入りのネオコン人脈はしっかりと根づいているのである。
軍産複合体に支えられたネオコンの戦況分析
ネオコンは米国型の自由と民主主義を人類普遍の価値と捉え、その「輸出」を自分たちの使命と考えている。そのためなら武力介入も辞さない思想の持ち主たちが「テロとの戦い」を推進。米国を史上最長の泥沼の戦争に引きずり込んだとも言えよう。
トランプ政権では鳴りを潜めていた連中が、再びバイデン政権内で要職を握り、ロシアのプーチン体制を打倒しようとしているのだ。
その上、ISWの運営は米国の大手軍需産業からの助成金や寄付によって支えられている。スポンサーに名を連ねているのは、レイセオン・テクノロジーズやゼネラル・ダイナミクス(GD)など。いずれも、米欧のウクライナ軍事支援で大いに潤っていることも見過ごせない。
レイセオンはウクライナに投入された携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」や、同地対空ミサイル「スティンガー」製造の一翼を担う。GDは侵攻の最中、ポーランドとの間で「エイブラムス戦車」250台の売買契約に調印。契約額は約47億5000万ドル(約6100億円)相当に上る。
バイデン政権がウクライナに投じる軍事支援の額は、総額269億ドル(約3兆4970億円)まで膨らんでいる。大半は米国製兵器の調達に費やされる見通しで、大手軍需産業の利益はますます拡大。こうして稼いだカネの一部が、スポンサードしているネオコン率いるISWに流れるという構図である。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう指摘する。
「米国とその軍産複合体は、ウクライナ軍に兵器を送り、抵抗が強く長期化するほど利益が生まれる利害当事者です。彼らのもたらす情報に偏った戦況解説は、報道における公平性や中立に照らし合わせても、非常に危うい。米国と一体化した視線だけで戦況を伝えるのは、ある種の大本営発表のようなものです。事態をミスリードしかねません。少なくともクロスチェックが必要です」
フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は月刊「文芸春秋」5月号への寄稿で〈西側メディアには、戦争研究所の「ロシア侵攻図」が溢れていますが、これを鵜呑みにしてよいのか疑問が残ります〉と書いていた。
戦争で大儲けする米国の軍産複合体に支えられたネオコンによる戦況分析を検証もできないまま、連日タレ流している日本のメディア──。この異様な戦争報道は逆に「この戦争の全てが作り事」という偏った陰謀論の土壌となりかねない。
「必ずしも全ての情報が間違っているわけでもないし、正しいわけでもない。情報の渦に溺れないためにも、『戦争報道とは一方の戦果を誇るものだ』という自覚が必要だと思います」(五野井郁夫氏=前出)
ウクライナや戦争を支える米国ベッタリの視線に流されず、冷静な視線を常に意識すべきだ。「ロシア=悪」「ウクライナ=善」の二元論に偏った報道に染まってしまったら、この戦争の本質を見失うことになる。
長期化はビジネスにしたい面々の思うツボ
西側の「プーチン劣勢」情報はもちろん、ロシアへの撹乱戦術の一環でもあるのだろう。ロシア軍が撤退したとされるハルキウにおけるウクライナ側の死者や損失があまり報じられないのも不思議だ。
欧米の国防筋、諜報筋にも、ウクライナの人々を“人間の盾”にしてロシアと戦っている負い目でもあるのか。
信頼できる情報は限られ、遠く戦地から離れた日本では正確な戦況は掴めっこない。はたして、ロシア苦戦は早期の停戦につながるのか。ウクライナ軍が反撃し、ロシア軍が撤退すれば、その後に何が起こるのか。
プーチンにとって、この戦争は死活問題だ。ロシア軍は必ず反撃に出て、強い兵器を用いるようになる。ウクライナ軍の反撃が成功すればするほど、戦闘はいっそう激化していくだろう。
それこそ、この戦争を長引かせ、ビジネスにしたい面々の思うツボだ。異様な戦争報道下でのヌカ喜びは禁物。今なおプーチンが「核のボタン」を持ち歩いていることも決して忘れてはいけない。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言った。
「侵攻から間もなく3カ月。この戦争が世界秩序を大きく揺るがし、国際社会が重大な歴史的転換期を迎えているのは明らかです。連日、報道する価値は認めますが、問題は日本のメディアの報道の仕方です。さもプーチンは『悪魔』、ゼレンスキー大統領は『正義の英雄』というスタンスで、単純な勧善懲悪論に染まっています。その結果、戦争当事国の一方であるウクライナだけに肩入れし、ロシア産石油を段階的に禁輸する方針を表明した岸田首相に世論は好感し、内閣支持率は上昇する。敵基地攻撃能力の保有など危険な道を歩もうとしているのに、メディアの『気分はもう戦争』が味方しています。戦争が長引けば経済の混乱も長期化し、値上げラッシュの日本だけでなく、食料やモノ不足で世界中の貧しい多くの人々が苦しむだけです。それなのに、ホンの1%の人々だけ潤えばいいのか。この戦争がなおも続くのかと思うと、暗澹たる気持ちになります」
大メディアに必要なのは米国の視点ではない。弱者の視点だ。
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