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米国政府は言論統制を強化しながらネオ・ナチを使って露国との戦争を進める
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202205040000/
2022.05.04 櫻井ジャーナル
アメリカの国土安全保障省は4月27日に「偽情報管理会議」を創設すると発表、事務局長にはニナ・ヤンコビッチが就任するという。ヤンコビッチはウィルソン・センターの「偽情報フェロー」で、ウクライナ外務省にアドバイスした経験があり、ジョー・バイデン大統領と関係が深い。
この発表の6日前、バラク・オバマ元大統領はスタンフォード大学でソーシャル・メディアの検閲が十分でないと発言している。この事実をトロシ・ガッバード前下院議員は指摘している。
アメリカ政府や西側の有力メディアにとって、彼らが流す物語と違う情報は「偽情報」だ。1970年代までは有力メディアにも権力者にとって都合の悪い事実を伝えるジャーナリストもいたが、80年代に入るとそうした人は排除されていった。
今でもアメリカに「言論の自由」があると信じている日本人もいるようだが、組織としてのメディアは昔からプロパガンダ機関にすぎない。ワシントン・ポスト紙の記者として「ウォーターゲート事件」を暴いたカール・バーンスタインはリチャード・ニクソン大統領が辞任した3年後の1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。
その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したとバーンスタインにCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)
デボラ・デイビスが書いた『キャサリン・ザ・グレート』もCIAによるメディア支配の一端を明らかにしている。彼女によると、第2次世界大戦が終わって間もない1948年頃にアメリカでは「モッキンバード」と呼ばれる情報操作プロジェクトがスタートしている。
そのプロジェクトを指揮していたのは4人で、第2次世界大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、ダレスの側近で戦後に極秘の破壊工作機関OPCを率いていたフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine the Great,” Harcourt Brace Jovanovich, 1979)
CIAのメディア支配はアメリカ国内に留まらない。例えば、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。
彼によると、CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ているとしていた。そして現在、アメリカやその従属国はロシアとの戦争をウクライナで事実上、始めている。
ウクライナでロシア軍と戦っている内務省の親衛隊で中心的な存在は2014年5月に創設されたアゾフ大隊(現在の正式名称はアゾフ特殊作戦分遣隊)。その中心になった右派セクターは2013年11月、ドミトロ・ヤロシュとアンドリー・ビレツキーによって編成されている。
ヤロシュは2007年にNATOの秘密部隊ネットワークに参加した人物で、その年の5月にウクライナのテルノポリで開かれた欧州のネオ・ナチや中東の反ロシア・ジハード主義者を統合するための会議で議長を務めている。その当時、アメリカのNATO大使を務めていた人物がビクトリア・ヌランドだ。
ヤロシュを含む自称ナショナリストの歴史は1920年代に組織されたOUN(ウクライナ民族主義者機構)まで遡ることができる。この組織は1941年3月に分裂、反ロシア感情の強いメンバーは幹部のひとりだったステパン・バンデラの周辺に集まる。これがOUN-B(バンデラ派)だ。
このOUN・Bをイギリスの情報機関MI6のフィンランド支局長だったハリー・カーが雇う一方、ドイツが資金を提供し、バンデラの側近だったミコラ・レベジはクラクフにあったゲシュタポ(国家秘密警察)の訓練学校へ入っている。
1941年6月にドイツ軍はソ連へ軍事侵攻する。「バルバロッサ作戦」だ。この作戦に投入した戦力は約310万人。西側には約90万人を残すだけだった。ドイツ軍はウクライナのリビウへ入る。
ドイツ軍は7月にレニングラードを包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点に到達した。10月の段階でドイツだけでなくイギリスもモスクワの陥落は近いと考えていたのだが、12月にソ連軍が反撃を開始、年明け直後にドイツ軍はモスクワで敗北してしまう。ドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入するが、ここでもソ連軍に敗北、1943年1月に降伏。この段階でドイツの敗北は決定的になった。
1943年春になるとOUN-Bの戦闘員はUPA(ウクライナ反乱軍)として活動し始め、その年の11月には「反ボルシェビキ戦線」を設立した。ゲシュタポから摘発されていたはずのOUNやUPAの幹部だが、その半数近くはウクライナの地方警察やナチスの親衛隊、あるいはドイツを後ろ盾とする機関に雇われていたと考えられている。(Grzegorz Rossolinski-Liebe, “Stepan Bandera,” ibidem-Verlag, 2014)
ドイツ軍の敗北を見てアメリカとイギリスは慌てて動き出し、この年の7月に軍隊をシチリア島へ上陸させた。シチリア島を含むイタリアで支持されていたコミュニストへの対策ということもあり、アメリカの情報機関はこの時にマフィアからの協力を得ている。ハリウッド映画で有名なノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)は1944年6月だ。
アメリカやイギリスの支配層、つまりウォール街やシティの住人はナチスを手先と考えていた。ナチスの戦争犯罪を研究しているアメリカン大学のクリストファー・シンプソンによると、1920年代後半にアメリカからドイツへ融資、あるいは投資という形で多額の資金が流れている。ヨーロッパ大陸全域でアメリカの投資額が激減している中、1929年から40年の間に約48.5%増えた。(Christopher Simpson, “The Splendid Blond Beast”, Common Courage, 1995)
アメリカからドイツへの投資は限られた金融機関を通して行われていた。その中心になっていたのがディロン・リードとブラウン・ブラザーズ・ハリマン。1924年にはドイツへ資金を流すため、ユニオン・バンキングが設立されるが、その重役にはプレスコット・ブッシュやW・アベレル・ハリマンが含まれている。ブッシュとハリマンはいずれもエール大学でスカル・アンド・ボーンズという学生の秘密結社に所属したいた。
プレスコットが結婚したドロシーの父親はウォール街の大物、ジョージ・ハーバート・ウォーカー。プレスコットは1924年、ウォーカーが社長を務める投資銀行A・ハリマンの副社長に就任、ウォール街でも名の知られた存在になる。そうしたことからウォール街の弁護士だったアレン・ダレスと親しくなる。プレスコットの息子、ジョージ・H・W・ブッシュがCIA長官に就任するのは必然だった。
第2次世界大戦でドイツの敗北が決定的になっていた1943年頃、アレン・ダレスたちはナチスの幹部と接触し始める。サンライズ作戦だ。そうした話し合いを経てアメリカの軍や情報機関はナチスの幹部や協力者を逃走させ、保護、そして雇用する。つまりラットライン、ブラッドストーン作戦、ペーパークリップ作戦だ。アメリカやイギリスの金融資本は第2次世界大戦の前からナチスと緊密な関係にあった。
反ボルシェビキ戦線は1946年4月にABN(反ボルシェビキ国家連合)と呼ばれるようになり、バンデラの側近だったヤロスラフ・ステツコが指揮するようになった。東アジアで1954年に設立されたAPACL(アジア人民反共連盟、後にアジア太平洋反共連盟に改名)とABNは1966年に合体してWACL(世界反共連盟。1991年にWLFD/世界自由民主主義連盟へ名称変更)になる。この組織はCIAと緊密な関係にあった。(Scott Anderson & Jon Lee Anderson, “Inside the League”, Dodd, Mead & Company, 1986)
こうした系譜に連なるヤロシュをウォロディミル・ゼレンスキーは昨年11月2日、ウクライナ軍のバレリー・ザルジニー最高司令官の顧問に据えた。軍をネオ・ナチが指揮する態勢ができたと言える。
こうした現実を認めたくない人はウクライナにネオ・ナチはいないと言い張るが、そうした主張をFBIの特別捜査官も否定している。アメリカの白人至上主義者RAMの裁判でスコット・ビアワースは2018年10月に宣誓供述書を提出、アゾフ大隊はネオ・ナチ思想と結びつき、ナチのシンボル主義を使っていると認めている。RAMのメンバーはドイツやイタリアのほかウクライナを訪問していた。
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