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※紙面抜粋
※文字起こし
北欧がNATOに加盟すれば、プーチンの暴走はいよいよ止められない
侵攻を続けるロシア軍の地上部隊は一時、ウクライナの首都キーウ(キエフ)周辺から撤退していたが、束の間の平穏はすぐに破られた。15日未明からキーウ市内では空襲警報と爆発音が鳴り響いていると現地メディアが伝えた。
ロシア国防省は14日夜、黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦「モスクワ」が沈没したと発表。黒海艦隊の司令塔としての役割を担っていたという戦術上の意味はもちろんのこと、首都の名を冠し、プーチン大統領が閲兵式を行ったこともあるフラッグシップを失った痛手は心理的にも大きい。
ロシア軍はすぐさま報復措置としてキーウへのミサイル攻撃を強化。15日にキーウ近郊の軍需工場を破壊した。この工場では、ウクライナが巡洋艦「モスクワ」に打撃を与えたと主張する対艦ミサイル「ネプチューン」を製造していたとされる。
憎悪が憎悪を呼び、破壊行為はますます激化。戦争は、もはや誰にも止められないように見える。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は13日の会見で、ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナ情勢について、国連が仲介を試みている人道目的の停戦は「現時点では不可能だろう」との見解を示した。停戦の可能性を探り、人道部門トップの国連幹部がロシアとウクライナを訪問。部分的な停戦など複数案を提示したが、ロシアは反応しなかったという。
いまロシアは兵力をウクライナ東部と南部に集中させている。南東部の要衝都市マリウポリはすでに壊滅状態で、死者数は数万人に上る可能性があるというが、ウクライナ軍も徹底抗戦の構えだ。欧米の軍事支援によって戦闘は長期化するとみられている。さらに多くの人命が失われ、ウクライナが焦土と化すのだ。
14日にキーウで英BBCの単独インタビューに応じたゼレンスキー大統領は、追加の武器供与を繰り返し求めた。
「私たちにはもっと、もっと素早い、もっと迅速な対応が必要です。今すぐに」
「ロシア軍が破壊しても、私たちは反撃する。私たちを殺すかもしれないが、自らも死ぬことになる」
国土を守るため戦うゼレンスキーに停戦の意思はない。もちろん、プーチンにもない。では、この戦争は行き着くところまで行くしかないのではないか。武力の応酬、大量虐殺の悲劇、核兵器使用、そして第3次世界大戦--。この絶望的なシナリオを止める手だてはないのか。
ロシアへの憎悪をことさら煽るのは選挙対策か
ウクライナを支援する北大西洋条約機構(NATO)がロシアとの全面対決に突入する可能性だってあるのに、NATOの盟主たる米国のバイデン大統領は、停戦のために動く気配がまったくない。それどころか、プーチンのロシアに対する憎悪をむき出しにし、それが日増しにエスカレートしている。
バイデンは、ロシアがウクライナで行っている蛮行、殺戮は「戦争犯罪」と批判してきたが、12日には「ジェノサイドだ」と言い切った。
国際法上、「ジェノサイド」の言葉は非常に重い。ナチスによるユダヤ人虐殺のホロコーストはジェノサイドと認定されているが、米国の原爆投下や中国の新疆ウイグル自治区での民族殺戮は認定されていない。
ロシア軍の蛮行がジェノサイドにあたるか聞かれたグテーレス事務総長は「人権侵害に深い懸念を抱いているが、ジェノサイドの認定は司法当局に委ねる」と明言を避けている。
フランスのマクロン大統領も、「ジェノサイドの言葉を使って非難すれば戦争が拡大する恐れがある」と使用に慎重だ。そういうマクロンの抑制的な態度をゼレンスキーは非難していたが、いま国際社会に求められているのは、刺激的な言葉でロシアを挑発することより、一刻も早い停戦への努力なのではないか。
「米国のバイデン大統領は、国際社会向けに戦争を終わらせるポーズはするでしょうが、本音では戦争状態を続けたいのでしょう。軍事産業が儲かり、献金が増える。ロシアに対する経済制裁で米国産のエネルギーは高騰し、アフガン撤退で地に落ちたバイデンの外交手腕も回復しつつある。経済的にも軍事的にもロシアを弱体化させることができるし、いいことずくめです。この戦争の最大の受益者がバイデン大統領だと言っていい。戦争が継続した方が、今年11月の中間選挙にも有利に働くと考えているはずです」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)
米国では、今も共和党のトランプ前大統領が一定の影響力を保持している。ただ、トランプは親ロシアであり、トランプ大統領誕生にはロシアが世論誘導に協力したともいわれている。プーチンのロシアに対する米国民の憎悪を煽ることは、民主党のバイデンにとって重要な選挙対策の一環なのかもしれない。
停戦を断念するような「ロシア包囲網」の動き
「ロシアとの緊張が高まれば、欧州の安全保障を米国がコントロールするようにもなる。冷戦後、“平和の配当”といって、欧州諸国でも軍事予算を削って教育や研究開発に振り向ける民生用転換が進められてきました。しかし、今回のウクライナ危機を受けて、ドイツは国防費をGDP比1.5%程度の現状から、2%以上に増やすことを決めた。国防費を増やすとは、兵器を買うということです。米国はロシアの侵攻直後から『終結までに数年かかる』との見通しを示していますが、この戦争を簡単には終わらせず、数年かけたいということでしょう。戦争が長引くほど、米国と軍事産業にはメリットがあるのです」(元外務省国際情報局長の孫崎享氏)
そんな中で、北欧のフィンランドとスウェーデンが、冷戦終結後に一貫して維持してきた中立政策を転換し、NATOへの加盟申請を早急に検討すると表明。フィンランドはロシアと約1300キロにわたって国境を接している。ロシアとNATOが対峙する前線が一気に延伸することになる。
ウクライナがNATOに加盟しようとしたことが今回の戦争の一因であることを考えれば、これほどロシアを挑発し、緊張を高める話はない。ロシアとウクライナの停戦合意を探る道を完全に放棄する動きのように見えるが、それこそが米国の目的なのかもしれない。
トルコ、東欧諸国、バルト3国に加え、北欧がNATOに加われば、地政学的に「ロシア包囲網」が完成する。欧州の安全保障環境が根本的に変わるわけだ。ロシアは孤立し、“北朝鮮化”する。そういう国が、国連の安全保障常任理事国という現実。プーチンの暴走はいよいよ止められなくなるのではないか? それを米国は、国際社会は望んでいるのだろうか。
「早く戦争が終わってほしいと世界中の人々が願っていますが、プーチン大統領を糾弾していれば支持率が上がるという西側諸国の事情もあって、各国の権力者の思惑のために戦争は続き、ウクライナの一般国民が犠牲になっている。これが戦争の惨さです」(五十嵐仁氏=前出)
決定的に局面が変わるとすれば、プーチン失脚か第3次世界大戦勃発か。それまでウクライナでの戦闘は続き、それを国際社会が容認して、西側諸国はウクライナへの軍事支援を続けるのか。
戦争の長期化、泥沼化で喜ぶ人もいるのだろうが、犠牲になるのはいつだって一般市民だ。
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