http://www.asyura2.com/19/warb23/msg/642.html
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以下はВоенное Обозрение (Military Review) の4月15日の記事の訳である。
https://topwar.ru/194963-krejser-moskva-zatonul.html
決してロシア海軍にとって良いことが書かれているわけではなく、むしろ反対であるが、このような議論を行った上で、人々が今回の軍事行動を支持していることは重要である。ロシアの言論空間は日本のそれより健全であろう。
最後の注記に書かれているように、富豪たちの取り扱いが長い間の課題であったが、今後もこれが鍵となる。
巡洋艦「モスクワ」の沈没
ロマン・スコモロホフ
弾薬庫か防空設備の弾薬の爆発によって戦隊が大きく歪み、曳航中に「モスクワ」は沈没した。すでに原因については多くのことが語られている。
○1つめの可能性:機雷
ウクライナが大量の機雷を黒海に投下したことはトルコやルーマニアの艦船にとって問題となっており、除去作業が進められている。この可能性は否定できない。
○2つめの可能性(想像)
いくつかのメディアとブロガーは、「モスクワ」が、密かにウクライナに空輸された「ペンギン対艦ミサイル」あるいはより進んだノルウェーNSMに攻撃されたという説を唱えている。
しかし、「ペンギン」の射程距離60 kmと、西側のミサイルとウクライナ(ソ連を考慮する)の誘導レーダーのペアリングの問題があって、説得力に欠ける。
また、「モスクワ」の近くで「ポセイドン」型のアメリカの軍用機が飛行しているのが確認されている。
このように想像は尽きない。相変わらず国防省が何も言わないので、羽目を外さない程度であれば、どのような憶測も可能である。
○3つめの可能性:ウクライナの対艦ミサイル「ネプチューン」
この説を強く支持している同僚マクシム・クリモフのビデオインタビューを聞いたが、筋が通っていると言わざるを得ない。 確かに、「モスクワ」が率いる船隊は「ネプチューン」ミサイル防衛システムの射程内にあり、ウクライナは「モスクワ」を攻撃することができた。
ウクライナのロケットは、もともと前世紀の70年代のソ連のX-35ロケットを少し改良したものであり、最大280 kmの射程距離と、150 kgの弾頭を有している。
ウクライナ軍が放棄した場所では、「ネプチューン」が運用できる状態になっていたところがある。なぜそんなところにあるのかというのはまた別の問題であるが、「ネプチューン」の使用自体はそれほど驚くことではない。我々はまだこの代理戦争を戦っているわけで、その結果、ロシアの領土においてさえ原料や燃料の備蓄倉庫を攻撃されるということがあり、(残念なことに)これからもあるだろう。
さらに驚くべきは、「モスクワ」と護衛艦の防空は何をしていたのか?ということだ。 国防省の報告書にわずかにしか書かれていないが、巡洋艦が単独で航行せず、他の艦船を伴っていたことは明らかである。艦船の空の安全を担当することになっていた者たちの資格と訓練について疑問を呈するのは当然である。
短距離防空システムOsaと長距離防空システムS-300Fを装備した船が、そのような2つの対艦ミサイルを受けたというのは気持ちの良いことではない。奇妙ですらある。
防空が演習中でしか飛行目標を撃墜することができないというのであれば、巡洋艦を、実際のミサイル攻撃を受ける敵海岸近くに持っていくことなどは考えられないだろう。私たちの防空システムは大したことないのか。OsaをTorに、S-300をS-400に置き換えるのは時間がかかるのか? 多くの人々がこのことを要求してきたが、まったくその通りである。
○4つめの可能性:火災
奇妙に見えるかもしれないが、爆発の原因は漏電による火災である可能性がある。 漏電以外の理由も考えられるが、とにかく火災が爆発の原因というものである。
ネットでは「モスクワ」と同型艦の「ワリヤーク」で働いた人々の話が多数掲載されている。
プロジェクト1164の3隻(もう2隻となってしまった)の巡洋艦のうち、「マルシャル・ウスチノフ」のみが近代化改修の過程でKrab-M消火システムを導入した。ガチナのクリゾ工場で開発されたこのシステムは最新の基準を満たすと考えられる。
モスクワ(訳注:巡洋艦ではなく都市)にある科学産業研究機構の「消防自動化サービス」は、より高度な制御と消火システムを提供するということだが、いつものことながら資金が十分でないために、「モスクワ」は予定された修理のみを受け、近代化を受けなかった。
「ワリヤーク」でも同じで、両方ともそれぞれ別の艦隊の旗艦でありながら、消火システムは前世紀のものであった。もちろん、少なくとも「マルシャル・ウスチノフ」が火災に対処できるシステムを受け取ったことは喜ばしいことだが、「ワリヤーク」はこのままでは明らかに「モスクワ」と同じ運命をたどってしまう。
4月14日の午後に乗組員が総員退艦したことは、火災に対処することができなかったことを意味している。 通常、乗組員が船を離れるのは損傷に対処できないと判断されるときだからである。
プロジェクト1164巡洋艦は火災に対して非常に危険であると考えられている。これはやはり消火設備の不十分なプロジェクト1134b巡洋艦の後継艦で、この問題も継承していた。実際、プロジェクト1134b巡洋艦は、7隻の船のうち「ニコラエフ」「オチャコフ」「ケルチ」の3隻が火災を起こした。
プロジェクト1164の巡洋艦は、火災の危険性と弱い消火システムの両方を継承してしまった。
(写真)「モスクワ」の装備
「モスクワ」の運命に重要な役割を果たしたもう一つのポイントは、ソビエト時代の武器運用方針に基づいて、艦船に武器を最大限に搭載したことである。
武器や弾薬は船全体に配置されている。ミサイルがどこに当たってもそこに武器や弾薬の保管場所があることになる。 また、船に発生した火災は、迅速に全体に広がることになる。
○最も難しい質問
「モスクワ」の沈没の原因はさまざまなことが考えられるが、今それは本当に問題なのだろうか。 船を引き揚げることはまずないので、真実を知ることはできない。
そして、実際に、原因を知ることは本当に必要なことなのだろうか? 設計上の問題を抱えた古い船(あと半年で就役40周年だった)の運命だったとも言える。 そして、海軍はそれについて知っていたのである。そうでなければ、艦を救うのをあきらめて乗組員を避難させなかっただろう(訳注:同艦は退役が言われていながら2030年まで運用することになった)。
私たちが検討した第三の選択肢は決して悪くはない。 軍艦は敵対行為の結果として失われた―そのような死は名誉であることさえある。 乗組員が火を消すことができなかったよりは良いだろう。しかし、そのことは、最も進歩した対艦ミサイル攻撃を防げないのか、という疑問も生じさせる。 その結果、三年間修理中であり、一年前にそれから出てきた巡洋艦は、取り返しのつかない失われかたをしたのである。ウクライナ海軍の6隻の艦船を沈めたことの代償としては大きすぎる。
○非常に悲しい注記
私たち(私自身、クリモフ、ティモーヒンおよび他の著者)は、常に艦隊を大切にせよと言い続けている。 艦隊は新しい、現代的な船を必要とする。 ロシアが5,000トン以下の排水量のフリゲートしか建造していないという状況は憂うべきである。 大型船は「モスクワ」と同じような絶望的に時代遅れのジャンクであり、実際の戦闘にはまったく役立たずである。
ロシアの水上艦隊のランクIとランクIIの艦船の建造について統計を取ると、過去20年間で次のようになる:
―プロジェクト22350のフリゲート、排水量(以下同じ)4,500トン、4.5億ドル。
―プロジェクト11356のフリゲート3隻、4000トン、4.3億ドル。
―プロジェクト20380/20385のコルベット7隻、1800トン、2.5億ドル。
―プロジェクト11711のドック型揚陸艦2隻、5000トン、1.6億ドル。
排水量も、金額も、取るに足らない。 しかし、これは私たちの現実なのだ。
一方、同じ20年の間に、わが「スマートなビジネスマン」たちは彼ら自身の「艦隊」を造った―ヨットからなる艦隊を。比較してみよう。
―「ディルバー」ウスマノフのヨット、15,000トン、長さ156メートル(「モスクワ」は186.5メートルだった)、8億ドル。
―「エクリプス」、アブラモビッチのヨット、13,000トン、4.3億ドル。
―「セーリングヨットA」、メルニチェンコのヨット、12,700トン、4.25億ドル。
―「モーターヨットA」、メルニチェンコの第二のヨット、8,800トン、2.55億ドル。
―「オーシャンビクトリー」、ラシュニコフのヨット、10,800トン、4.00億ドル。
―「オナ」、ウスマノフの最初のヨット、10,360トン、ウスマノフが2.50億ドルで売却。
―「パラジウム」、プロホロフ所有、7,900トン、2.00億ドル。
―「バーバラ」(1.25億ドル)、「ニルヴァーナ」(11億ドル)「アナスタシア」(7千5百万ドルで売却)、ポタニンのヨット艦隊。
リストは続く。 ガリツキーの「クオンタム・ブルー」(2億2500万ドル)、ブルラコフの「ブラック・パール」(2億2000万ドル)、ヴェクセルベルクの「タンゴ」(1億1000万ドル)、スコッホの「マダム・グー」(1億3500万ドル)など。
1億ドル未満の「安い」ヨットには言及したくないが、数十は簡単に入力できる。
オリガルヒなどロシアの成功した億万長者は、もしも「カリブル」を装備すれば、全世界に轟きわたるような艦隊を持っているのである。
変な状況ではないか。 オリガルヒはヨットのためのお金を持っているが、軍艦の消火システムのためのお金はないというわけだ。しかし誰でも皆、この状況をどうすればよいのか、ウスマノフがどこにいて、どこに彼の「艦隊」があるのかを知っている。 もちろん、億万長者は、快適な生活水準を維持する必要があり、彼らは自分たちが汗と血で稼いだお金をヨットに使っていると言えばそうなのだが。
そして我々には40年以上の艦歴の船がある。それらは沈むだろうが、どうすることもできない。金はない。しかし、波に浮かばなければならない。
「モスクワ」に起こったことは、起こるべくして起こったことで、事故ではない。我らが国防省がつねづね言っているような「全ては多かれ少なかれ順調に行っている」という信頼は巡洋艦とともに沈んだのだ。
今こそわが国の指導者は、「成功したビジネスマン」たちが彼らの玩具に金をかけるのをどうするべきか、考えるときに来ている。
(訳:Silverfox)
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