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※紙面抜粋
※2022年4月11日 日刊ゲンダイ2面
【狂気の戦争に国際社会の無責任】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) April 11, 2022
このまま東部の激戦に突っ込むのか
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/zAXugm8OQd
※文字起こし
ロシアによる軍事侵攻はもはや制御不能で、ウクライナでは民間人の犠牲者が相次いでいる。ウクライナ国防省は9日、首都キーウ(キエフ)近郊のマカリウで、民間人132人の遺体が見つかったと発表。射殺されていたという。
8日には東部ドネツィク州クラマトルスクの駅がミサイル攻撃を受け、子ども5人を含む少なくとも52人が死亡した。当時、駅には数千人が他の地域に避難するために集まっていたとみられ、広範囲にわたる被害状況からクラスター弾を使用した可能性もある。
ロシアの蛮行には怒りを禁じ得ない。なぜ、誰もこの戦争を止めることができないのか。無辜の市民が虐殺される狂気の戦争を前にして、国際社会はこんなにも無力なのか。絶望的な気持ちになってくる。
そんな中、英国のボリス・ジョンソン首相が9日にキーウを電撃訪問。ウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、追加支援を約束した。訪問前から英政府はスターストリーク対空ミサイルシステムや対戦車ミサイル800基など1億ポンド(約160億円)相当の武器供与に言及していたが、さらに装甲車120台と対艦ミサイルシステムの供与も発表。会談後には、ゼレンスキーの案内で市内を歩いて視察した。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏が言う。
「武器の追加提供が、本当にウクライナ国民のためになるのか。市民の犠牲者が増えているというのに、ジョンソン首相は『もっと戦え』『戦争を続けろ』と鼓舞しに行ったのです。まず考えるべきは、ウクライナ国民の命を守ることではないのでしょうか。国際社会はウクライナ国内の市民が戦争に巻き込まれて命を落とすことがなく、豊かな国土を保全し、国外脱出した避難民が安全に暮らせるよう停戦に向けた交渉の進展を支援すべきです。ゼレンスキー大統領を英雄のように扱ってロシアとの戦争を継続させれば、戦場のウクライナはますます悲惨な目に遭い、国民が苦しむことになるのです」
供与武器は防御型から攻撃型へ
ロシア軍はキーウ近郊から撤退し、ドンバス地方など親ロ派が支配的な東部に兵力を集中している。ジョンソンがキーウ市内を歩けたのも、そのためだ。今後は東部が主戦場になり、本格的な大攻勢が予想されている。
ゼレンスキーは英国の支援を手放しで歓迎し、他の西側諸国へも武器提供を要請。すでにチェコが旧ソ連製戦車などを供与したと報じられ、ドイツも戦車供与を検討しているという。米国は自爆型の戦術無人機「カミカゼドローン(スイッチブレード)」数百機やレーザー誘導ロケット、多目的装甲車の供与を発表した。
米上院では、第2次大戦中に連合国向けの兵器供与を容易にした「レンドリース法」(武器貸与法)復活が全会一致で可決され、下院でも可決されれば、ウクライナ向けの軍事支援が簡略化され、一気に加速する。
「ロシアによる侵攻当初、米欧がウクライナに提供したのは対空ミサイル『スティンガー』や対戦車ミサイル『ジャベリン』など迎撃・防御型の小型兵器でした。それが、戦車や『カミカゼドローン』など攻撃型の兵器に変わってきた。戦争を継続させる意図がハッキリしています。欧米は自分の国が戦場ではないし、自国の兵士は参戦していないから戦争を止める気もない。カネだけ出して、ウクライナ兵とロシア兵を戦わせている。あまりに無責任です。ウクライナ国民にとっての悲劇も、軍産複合体は儲かって喜んでいるかもしれません」(孫崎享氏=前出)
他国での戦争は最新兵器のトライアル、この際ロシア軍の実力を見てやろうくらいに考えているフシもある。
世論の動向を見て支持率アップに利用する高みの見物
ウクライナは、西側諸国に対してロシアへの経済制裁の強化も求めている。ゼレンスキーは「ロシアのエネルギー供給を全面禁輸にし、我々に提供する武器の数を増やすべきだ」と繰り返し訴えてきた。
資源エネルギー大国のロシアは、原油・天然ガスによる収入が1日10億ドルにもなるといわれる。EUは6日に追加制裁として「ロシア産石炭の禁輸」を打ち出したが、そもそも石炭の輸入量なんて知れている。ロシアの命運を握るのは原油と天然ガスだ。だが、ロシア産の天然ガスがパイプラインで運ばれ、安価に調達できる欧州は依存度が高く、全面禁輸は難しいのが実情だろう。禁輸したところで、その分を中国などの友好国が買えば、ロシアは痛くもなんともない。
「ロシアの通貨ルーブルは侵攻直後の経済制裁で一時、急落しましたが、今は戻しています。経済制裁の兵糧攻めは時間がかかるし、経済制裁だけでは戦争を止めることができない。この戦争を本気で終わらせようと思ったら、外交的な手段による停戦の働きかけが必須です。プーチン大統領には力の論理しか通用しない。NATOの盟主である米国のバイデン大統領が、ロシアが戦術核を使うなら米国は戦略核を使うことも辞さないと思わせる強いメッセージを出すことも必要になってくるかもしれません。しかし、大統領選の真っただ中であるフランスのマクロン大統領を筆頭に、バイデン大統領も英国のジョンソン首相も国内世論の動向次第でウクライナへの関わり方を変える可能性があることは不安要素です」(高千穂大教授の五野井郁夫氏=国際政治学)
憎悪を煽るだけでは解決しない
世論任せは、日本の岸田政権も同じだ。NATO加盟国ではないが、G7の一員として米欧の制裁に追随。それで内閣支持率が上がるのだから、ウクライナ支援の政治パフォーマンスに精を出す。みんな政権維持のためにウクライナ危機を多少なりとも利用しているのだ。
EUのロシア産石炭輸入禁止案を受けて、岸田首相は8日の会見で「ロシアからの石炭の輸入を禁止する」と表明したが、その時期については明言しなかった。とりあえず、NATOに同調してロシアを糾弾し、“やってる感”で様子見だ。こんな中途半端な経済制裁で、悪魔が戦争を断念するものか。
「プーチン政権の蛮行は決して許されない戦争犯罪です。ウクライナ市民が悲惨な目に遭い、そうした映像が全世界に配信されれば同情を誘ってウクライナへの支援が集まる。しかし、ロシアへの憎悪を煽るだけで問題が解決するのでしょうか。日本政府は米欧の尻馬に乗って在日ロシア大使館の外交官ら8人を『ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)』として追放しましたが、こういう時こそ外交チャンネルが重要なのに、自ら断ってしまってどうするのか。今後、邦人保護にも影響が出てきます。国際社会でロシアを孤立化させれば、かえって国内の求心力が高まるかもしれない。それは戦前の日本と同じです。追いつめ過ぎれば暴発する恐れもある。西側のリーダーは冷静になって、外交努力を尽くすべきです」(政治評論家・本澤二郎氏)
戦争の渦中は誰もが理性を失ってしまいがちだ。ポーランドのモラウィエツキ首相は、プーチンと会談を重ねてきたマクロン仏大統領に対し、「何回交渉して何を得たのか。犯罪者とは話し合いや交渉を行うべきではない。戦わなければならない。ヒトラーやスターリンとも交渉するのか」と糾弾。そうやって武力抗争をエスカレートさせていった先に何があるのか。
このままウクライナ東部の激戦に突っ込めば、また多くの一般市民が犠牲になる。それでいいのか。西側各国のリーダーは、支持率のための政治的パフォーマンスに明け暮れている場合ではない。
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