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クーデターで始まったウクライナ戦争の遠因はインターマリウムや米英の長期戦略
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202203310000/
2022.03.31 櫻井ジャーナル
ロシア軍は2月24日にウクライナを攻撃し始めるが、その直前、ウクライナの軍、あるいは親衛隊はドンバス(ドネツクとルガンスク)に対する攻撃を強めていた。OSCE(欧州安全保障協力機構)によると、2月17日にはウクライナ側からドンバスへの攻撃が激しくなり、18日、19日とエスカレートしている。
その前からウクライナ側は停戦合意を守らず、ドンバス周辺には親衛隊のほかアメリカやイギリスの特殊部隊やアメリカの傭兵も集結、攻撃態勢が整いつつあると言われていた。そうした中、アメリカ政府はロシア軍が偽旗作戦を目論んでいる、暗殺リストを配っているなどと宣伝している。
ロシア軍と戦っているウクライナ側の主力は親衛隊のようだが、この戦闘集団は内務省の指揮下にあり、隊員はネオ・ナチが中心。ネオ・ナチは自分たちを「民族主義者」、あるいは「愛国者」と呼んでいるが、どのようなタグをつけようと、ネオ・ナチであることに変わりはない。
アメリカの白人至上主義者に関する裁判でFBIの特別捜査官が2018年10月に提出した宣誓供述書でも、アゾフ大隊はネオ・ナチ思想と結びつき、ナチのシンボル主義を使っていると認めている。アメリカの白人至上主義者だけでなく、世界各国にネオ・ナチのネットワークは張り巡らされているのだ。
バンデラは1920年代からOUN(ウクライナ民族主義者機構)の幹部だった人物だが、この組織は41年3月に分裂、反ロシア感情の強いメンバーがバンデラの下に集まった。これがOUN-Bだ。
このOUN・Bをイギリスの情報機関MI6のフィンランド支局長だったハリー・カーが雇う一方、ドイツが資金を提供し、バンデラの側近だったミコラ・レベジはクラクフにあったゲシュタポ(国家秘密警察)の訓練学校へ入っている。
ナチスやOUN・Bの背後には「インターマリウム」という計画が存在していた。バルト海とエーゲ海に挟まれた中央ヨーロッパにカトリックの帝国を作ろうというもので、その発想の源はポーランド・リトアニア連邦の1600年頃の領土にある。この構想に参加していたローマ教皇庁の一部は第2次世界大戦の終盤、アメリカ支配層の一部と手を組んでナチの高官や協力者を逃走させ、保護する工作に加わっていた。
インターマリウム計画はイギリスの長期戦略にも合致する。イギリスのハルフォード・マッキンダーという地理学が1904年に発表した世界制覇プランは海軍力を使ってユーラシア大陸の周辺部を支配、内陸部を締め上げ、最終的にはロシアを制圧するというものだった。ロシアを制圧するため、その西側にイギリスの支配地域を作るとしているが、それがインターマリウムと重なるのだ。
日本では無視されているようだが、世界的に見るとマッキンダーの理論は今でも生きていると考える人が少なくない。締め上げるタガの東端が日本。タガの上にイギリスはサウジアラビアとイスラエルを作り上げた。ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もマッキンダーの影響を受けている。
19世紀イギリスのエリートを代表する人物、セシル・ローズは1877年に『信仰告白』を書いている。その中で彼はアングロ・サクソンを世界で最も高貴な人種だと主張、その人種が支配地域を広げることは義務だとしていた。なお、ローズはネイサン・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレットと同じように、ビクトリア女王の助言者だ。
ローズが『信仰告白』を書く13年前、トーマス・ハクスリーを中心として「Xクラブ」が作られている。その中には支配階級の優越性を主張する社会ダーウィン主義を提唱したハーバート・スペンサー、チャールズ・ダーウィンの親友だったジョセフ・フッカー、このダーウィンのいとこであるジョン・ラボックも含まれていた。彼らの思想の根底には優生学やの人口論があり、ローズやマッキンダーにつながる。
1981年1月にアメリカ大統領となったロナルド・レーガンは82年6月にローマ教皇庁の都市間でヨハネ・パウロ2世とふたりで会い、ポーランドや東ヨーロッパについて話し合い、ソ連の解体を早める秘密キャンペーンを実行することで合意した。その目的を「神聖ローマ帝国」の復興と表現する人もいた。(Carl Bernstein, “The Holy Alliance,” TIME, Feb. 24, 1992)
インターマリウムをモデルにして、2015年に「3SI(三海洋イニシアチブ)」がスタートする。翌年にはオーストリア、ブルガリア、クロアチア、ルーマニア、スロバキア、スロベニアの代表がクロアチアで会議を開くが、このプランにウクライナのネオ・ナチも影響を受けている。
ウクライナをネオ・ナチを率いているひとりにオレナ・セメンヤカなる人物がいる。ウクライナ民族主義の「ファースト・レディ」とも呼ばれている。この人物もインターマリウムの信奉者であり、白人(北欧人)至上主義者だ。
このように考えているのは特殊な人だけだと言うことはできない。今回、ウクライナからポーランドへ脱出した人について、西側メディアは「目が青く、ブロンドのキリスト教徒」、要するに北欧系の難民は助けなければならないと叫んでいた。その一方でインド人やアフリカ系の人びとは脱出を妨害されたり、棍棒で殴打された人もいる。アジア人も差別の対象だ。
西側メディアが言うところの「医療天使」に所属する弁護士、ジャナディ・ドラザンコはウクライナのメディアに対し、部下の医師たちに対し、ロシア人捕虜は全員去勢するよう命じたと語った。ロシア人は人間でなくゴキブリだからだという。のちにドラザンコは発言を取り消すが、ロシア人捕虜に対する去勢命令は本気だろう。ここにきてウクライナ軍がロシア人捕虜を拷問、足などを撃ち、射殺している光景を撮影した映像がインターネット上で公開されている。ウクライナのネオ・ナチはロシア人を劣等人種だと考えている。
マリウポリなどから脱出した市民が「アゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)」の実態を告発しているが、そうした市民によると、アゾフ大隊によって建物は破壊され、人びとは拷問され、殺された人も少なくないようだ。若い女性はレイプされているという。
別の映像や記事もあるが、そうした市民によると、アゾフ大隊によって建物は破壊され、人びとは拷問され、殺された人も少なくないようだ。若い女性はレイプされているとも告発されている。
歴史を振り返れば、ウクライナを舞台にした戦争が2月24日に始まったとする考え方には大きな問題があると言わざるをえない。少なくとも2014年2月のクーデターから戦争は続いているのであり、中期的には1999年3月のNATO軍によるユーゴスラビアへの先制攻撃から続いている。そして、その背景には19世紀から続くアングロ・サクソン支配層の世界制覇プランがあるのだ。
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