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首都キエフ「市街戦」突入危機 プーチン大統領“武闘派”シリア兵投入の狙い
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/302240
2022/03/08 日刊ゲンダイ
【緊急現地リポート】 |
キエフ郊外は惨憺たる状況(砲撃を受けた住居ビル)/(C)ロイター
ウクライナの首都キエフを包囲するロシア軍は、いよいよ“市街戦”突入の準備を開始したようだ。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、ロシア政府は200〜300ドルの報酬と引き換えに、市街戦の経験があるシリア人兵士を募っているという。いまだ内戦が続くシリアから兵士を集めるのは、キエフの陥落に本腰を入れ始めたということだろう。市内の緊張感は高まっている。
◇ ◇ ◇
「キエフ中心地では、ロシア軍の銃弾は一発も飛んでいません。でも、『ドーン』という地面を揺さぶるような爆撃音が徐々に近づいてきています」
大統領府や政府機関が集まるキエフ中心地で取材を続けるジャーナリストの田中龍作氏は、日刊ゲンダイにこう話した。
ここ数日、市街地から大統領府へと続く主要な道路を塞ぐように、治安部隊や市民が「バリケード」を設けているという。2メートル弱の鉄骨3本を組んだ「戦車止め」と、巨大なコンクリートブロック、高さ10〜20センチのカメラの三脚のような形の「マキビシ」の3種を平行に並べた防壁だ。
「さらに、コンクリートブロックの上に市民が大量の土のうを並べ始めています。戦地における『土のう』は、防衛の基礎中の基礎。バリケードの重量が増すことで、戦車や装甲車の突破を封じる効果が期待できますし、戦闘員にとっても『弾よけ』の面積が増えます。治安部隊や市民の緊張感は高まっていますが、士気は高いように見えます」(田中龍作氏)
戦車止め、マキビシ、土のう…バリケードで護衛 |
土のうを並べるキエフ市民(田中龍作ジャーナルから)
機関砲を積載したウクライナ軍のピックアップトラックも、中心地を行き交うようになったそうだ。
「私は過去にアゼルバイジャンなど複数の紛争地を取材した経験がありますが、小回りの利くピックアップトラックの戦闘能力は非常に高いのです」(田中龍作氏)
AFP通信によると、ウクライナ義勇軍は、ロシア軍の侵攻を阻止するため、キエフ西部を流れる川に架かる橋を爆破。ロシア地上軍侵攻への対策が急ピッチで進んでいる。
恐ろしいのは、ロシアが市街戦に強いシリア兵を募集していることだ。シリアでは、市街戦を中心とした泥沼の戦争が10年以上も続いている。ロシアは2015年から戦争に介入し、現アサド政権の後ろ盾になっている。
シリア兵は戦車と歩兵を組み合わせた「突撃」を得意とする“武闘派”との見方がある。キエフ侵攻に加わると、戦況はどうなるのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はこう言う。
「ロシア政府がシリア兵を募集する狙いは、単純に兵士の数を増やしたいということです。ロシア正規軍の死者が増え過ぎると、政権としては不都合なわけですから、海外兵を増やしたいということでしょう。恐らく、シリア兵には戦車や歩兵による突撃といった高度な作戦は期待していないと思います。そもそも言葉が通じないので、緊密な連携が必要な高度な作戦には参加させないのではないか。あくまで『歩兵』として使うつもりでしょう」
人口300万人のキエフで市街戦が始まったら、凄惨な状況になるに違いない。
ロシア政府はキエフなどで「限定的停戦」に入り、民間人避難のための「人道回廊」設置を発表したが、果たしてどうなるのか。
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