http://www.asyura2.com/19/warb23/msg/304.html
Tweet |
日本も参加する黒海での軍事演習を前に英艦艇がロシアを挑発、逆に脅された
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202106240002/
2021.06.24 櫻井ジャーナル
ウラジミル・プーチン露大統領とジョー・バイデン米大統領がスイスのジュネーブで会談する2日前、イギリス海軍の駆逐艦ディフェンダーとオランダのフリゲート艦エバーツェンが黒海へ入った。その前にアメリカ海軍は6月11日に駆逐艦ラブーンも黒海入りしている。
そのディフェンダーがオデッサを出港、クリミアへ接近し、6月23日午前11時52分(現地時間)に領海を侵犯して境界線から3キロメートル内側を航行、ロシア国防省によると、ロシアの警備艇が12時6分と12時8分に警告の銃撃を行った。それでも進路を変更しなかったため、12時19分にSu-24戦術爆撃機が飛来して艦船の前方へ4発のOFAB-250爆弾を投下、ディフェンダーはすぐ領海外へ出たという。模擬弾ではなかったとみられている。イギリス側はロシアが軍事演習していたとしているが、説得力はない。
本ブログでは繰り返し書いてきたように、ジョー・バイデン政権は中国やロシアに対する軍事的な圧力を強めている。例えば、3月10日にウクライナ南部のオデッサへNATO加盟国の軍艦4隻を入港させ、3月14日には少なくとも2機のC-17A輸送機がトルコからウクライナへ空輸、それ以外にカタール空軍が5機の輸送機を使い、トルコを経由で物資を運んだと伝えられている。ABCニュースの司会者からウラジミル・「プーチンは人殺しだと思うか?」と問われ、「その通り」とバイデン大統領が答えたのは3月16日のことだ。
アメリカ空軍は4月に入ると1週間の間に少なくとも3度、物資を空輸していると伝えられている。ドイツのラムシュタイン空軍基地からC-130輸送機とC-17輸送機がキエフへ飛来したほか、アメリカからリビウへC-17、そしてポーランドのポズナンからイギリスのBae 146-200がキエフへそれぞれ来ているという。
アメリカ軍は5月3日から14日まで軍事演習「トロイの足跡21」を黒海周辺の国々、つまりブルガリア、ジョージア、モンテネグロ、北マケドニア、そしてルーマニアで実施、その演習にはアメリカの海軍特殊部隊、陸軍、空軍、イギリス軍、ドイツ軍、スペイン軍、ウクライナ軍、そして演習の舞台になる5カ国の軍隊が参加した。
こうしたアメリカの軍事的な恫喝に対し、ロシアに噛みつこうとする外国勢力の歯をへし折るとプーチン大統領は警告、セルゲイ・ショイグ国防大臣は5月31日、ロシア西部地域の軍事的な緊張に対処するため、新たに20戦闘単位を組織すると発表した。経済面ではアメリカが基軸通貨であるドルを発行する権利を使い、他国を攻撃しているとプーチンは非難、ロシア政府はドル離れをさらに進める意思を示している。
東西ドイツを統一する際、アメリカ政府はミハイル・ゴルバチョフに対してNATOを東へ拡大させないと約束していた。例えばドイツのシュピーゲル誌によると、アメリカはロシアに約束したとロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックが語っている。またドイツの外相だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年にエドゥアルド・シェワルナゼと会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約し、シェワルナゼはゲンシャーの話を全て信じると応じたという。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009)
それだけでなく、アメリカのジェームズ・ベイカー国務長官がソ連側に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、NATO軍の支配地域は1インチたりとも東へ拡大させないと1990年に語ったとする記録が公開されている。言うまでもなく、アメリカ政府はこうした約束を守らなかった。
1991年3月にロシアと8つの共和国で行われた国民投票では、76.4%がソ連の存続を望んでいた。国民投票が実施された共和国の人口はソ連全体の93%だ。(Stephen F. Cohen, “Soviet Fates and Lost Alternatives,” Columbia University Press, 2009)
そのソ連を新自由主義化するためにG7の首脳は1991年7月、ゴルバチョフをロンドンに呼び出すが、その要求をゴルバチョフは拒否。その直後にクーデター騒動があり、実権を握るのが西側支配層の操り人形だったボリス・エリツィンだ。そのエリツィンは同年12月、ベラルーシのベロベーシで勝手にソ連の解体を決めた。準備のできていなかったソ連国内は混乱に陥る。
G7の前、1991年6月にスロベニアとクロアチアが独立を宣言、同年9月にマケドニアが続いた。そしてユーゴスラビアを解体する工作が始まるのだが、それを指揮していたのはリチャード・マイルズ。この工作にはユーゴスラビア駐在米国大使だったウォーレン・ジンマーマンが関係しているが、その背後にいたのは国務副長官のローレンス・イーグルバーガー。ジャーナリストのレナテ・フロットーによると、サラエボにあったイザドベゴイチのオフィスで1993年から94年にかけてオサマ・ビン・ラディンを何度か見かけたという。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018)
アメリカの国務長官がクリストファー・ウォーレンから好戦派のマデリーン・オルブライトへ1997年1月に交代、99年5月にNATOはユーゴスラビアに対する空爆を始めた。4月にはスロボダン・ミロシェビッチの自宅が、また5月には中国大使館も爆撃されている。中国大使館に3方向からミサイルを撃ち込み、破壊したのはアメリカ軍のB2ステルス爆撃機で、CIAが設定した目標に入っていたという。それ以来、アメリカ/NATOの東部への進撃は続いている。
そして2014年2月にはウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを成功させた。オデッサは反クーデター派の住民を虐殺するなどして制圧したが、東部地域では戦闘が終わっていない。最も動きの速かったクリミアはネオ・ナチに蹂躙されずにすんだが、アメリカ/NATOはクリミアへ軍事侵略する動きを見せ、ロシアを恫喝してきた。
そうしたアメリカ/NATOの軍事的な圧力に対し、これまでロシアは緊張を高めないよう、慎重に対応してきたが、バイデン政権が「ルビコンを渡った」ことから姿勢を改めた。
ウラジミル・プーチン大統領はロシアに噛みつこうとする外国勢力の歯をへし折ると警告、セルゲイ・ショイグ国防大臣は5月31日、ロシア西部地域の軍事的な緊張に対処するため、新たに20戦闘単位を組織すると発表した。経済面ではアメリカが基軸通貨であるドルを発行する権利を使い、他国を攻撃しているとプーチンは非難、ロシア政府はドル離れをさらに進める意思を示している。
ジュネーブでバイデンと会談した後、プーチンはトーンを下げたが、アメリカに対する対応を緩めることはないだろう。そうしたことをディフェンダーへの対応が示している。アメリカ/NATOはロシアの対応を探るため、イギリスの駆逐艦に領海を侵犯させたのかもしれない。
黒海で6月28日からアメリカ主導軍は軍事演習「シー・ブリーズ」を実施する。兵員は4000人が参加、艦船は40隻、航空機は30機に達するという。参加国はアルバニア、オーストラリア、ブラジル、イギリス、ブルガリア、カナダ、デンマーク、エジプト、エストニア、フランス、ジョージア、イギリス、イスラエル、イタリア、ラトビア、リトアニア、モルドバ、モロッコ、ノルウェー、パキスタン、ポーランド、ルーマニア、セネガル、スペイン、韓国、スウェーデン、チュニジア、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦、アメリカ、そして日本だ。
「領海内であろうと無害通航権があるので、ロシア側の警告射撃及び警告爆撃は国連海洋法条約では認められない行為です」などと脳天気なことを言えるような状況ではない。ロシアや中国に反撃され、バイデン政権は攻撃的な姿勢を弱めたように見えるが、これは表面的なものにすぎない。体制を立て直し、再度、圧力を強めてくるだろう。ロシアや中国が健在では「リセット」も思い通り進まないはずだ。
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。