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トルコがロシア製防空システムS-400を導入、実験を行った事情
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202011030000/
2020.11.04 桜井ジャーナル
トルコは10月後半、ロシアから導入した防空システムS-400のテストを実施、アメリカの国防総省はトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン政権を非難した。トルコは1952年からNATO(北大西洋条約機構)に加盟している。そのトルコとNATOの中心的な存在であるアメリカとの関係が修復されていない。
バラク・オバマ大統領時代の2016年7月、トルコでは反エルドアンの武装蜂起があり、鎮圧された。エルドアン政権はクーデターを試みたのはCIAに保護されているフェトフッラー・ギュレンの一派だと主張しているが、クーデター計画の背後にアメリカ中央軍のジョセフ・ボーテル司令官やジョン・キャンベルISAF司令官がいたともしている。
その前年、オバマ大統領は政府を好戦的な布陣に作り替えている。2月に国防長官がチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ交代、9月には統合参謀本部議長がマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代したのだ。
ヘーゲルは戦争に慎重だったが、カーターは2006年にハーバード大学で朝鮮空爆を主張した人物。シリアからバシャール・アル・アサド大統領を排除しようとしていたバラク・オバマ大統領とは違い、サラフィ主義者やムスリム同胞団を危険だと考えていたデンプシーはシリア政府と情報を交換していたと言われている。
シリアより1カ月前、2011年2月にリビアではムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心に編成された地上の戦闘部隊とNATOの航空兵力を組み合わせた戦力による侵略戦争が始まり、その年の10月にムアンマル・アル・カダフィ体制は崩壊、カダフィ自身は惨殺された。オバマ大統領はシリアでもNATO、あるいは2003年にイラクを先制攻撃した時のようにアメリカ主導軍を投入しようと考えていた可能性がある。
軍事介入を正当化させる動きもあった。2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルが制圧されたのである。サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とするダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)の登場だ。
その際にトヨタ製小型トラック、ハイラックスの新車を連ねたパレードを行い、その様子を撮影した写真が世界に伝えられたのだが、こうした戦闘集団の動きをアメリカの軍や情報機関は偵察衛星、無人機、通信傍受、人間による情報活動などで知っていたはず。そうしたパレードは格好の攻撃目標だが、アメリカ軍は動かなかった。
こうした事態が生じる危険性をアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)は2012年に警告していた。バラク・オバマ政権の政策はサラフィ主義者やムスリム同胞団を支援することになり、シリアの東部(ハサカやデリゾール)にそうした勢力の支配地域を作ることになると警告していたのだ。その時のDIA局長がマイケル・フリン中将。2014年8月に退役させられた。
しかし、オバマ政権はシリアへの空爆を実行できない。統合参謀本部議長が交代になった直後の9月30日にロシアはシリア政府の要請を受けて軍事介入、ダーイッシュを敗走させたのだ。そこでオバマ政権はクルドと手を組み、自国の地上部隊を侵入させた。
軍事介入したロシア軍を脅すため、2015年11月24日にトルコ軍のF-16がロシア軍のSu-24を待ち伏せ攻撃で撃墜した。ところがロシアは怯むどころか姿勢を厳しくする。逆効果だった。
この攻撃はアメリカ軍の命令に基づくものだった可能性が高い。撃墜の当日から翌日にかけてポール・セルバ米統合参謀本部副議長がトルコのアンカラを訪問していたことも、そうした推測の根拠になっている。
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すことが難しくなる中、2016年6月にトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は撃墜を謝罪、7月13日には同国の首相がシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆する。軍事蜂起(クーデター未遂)があったのはその2日後だ。その後、トルコとアメリカとの関係は一気に悪化した。
トルコがロシアにS-400の購入を打診したのは、その年の11月頃だと言われている。その翌年、つまり2017年の9月に購入契約が結ばれたと発表された。その後、アメリカから取り引きを止めるように脅されているが、トルコは無視している。
おそらく、トルコがS-400の購入を決断した理由は性能のほかにもある。アメリカと何らかの軍事衝突が引き起こされた場合、アメリカ製の兵器は信頼できないのだ。
1982年にイギリスとアルゼンチンはフォークランド(マルビナス)諸島の領有権を巡る対立が軍事衝突に発展し、その際にイギリスの艦隊がアルゼンチンのエグゾセに苦しめられた。そこでマーガレット・サッチャー英首相はフランソワ・ミッテラン仏大統領に対し、ミサイルを無力化するコードを教えるように強く求めたと伝えられている。教えなければブエノスアイレスを核攻撃すると脅したのだという。こうしたコードは一般的に存在しているようで、アメリカの兵器でアメリカ軍と戦うことはできない。
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