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苦境に陥ったサウジとトルコを米国が操り、戦乱を拡大させる動き
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202010150000/
2020.10.15 櫻井ジャーナル
シオニストの一派であるネオコンが描く世界制覇の絵図に乗ったサウジアラビアとトルコが苦境に陥り、中東の不安定要因になっている。アメリカはその状況を利用しようとしているようだ。
サウジアラビアで実権を握っているモハメド・ビン・サルマン皇太子はアメリカのドナルド・トランプ大統領やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と近く、政治経済の政策は新自由主義の影響を強く受けている。その政策が失敗、国は破綻の危機に直面している。
新自由主義を導入したことが失敗だが、直接的には石油相場の大幅な下落が大きい。相場が大きく下がり始めたのは2014年の半ばだが、これはアメリカとサウジアラビアが仕掛けた結果。バラク・オバマ政権はロシアと中国に対する戦争を開始、2013年から14年にかけてウクライナでネオナチを使ったクーデターを実行し、14年から15年にかけて香港ではイギリスと「佔領行動(雨傘運動)」を仕掛けている。
ソ連消滅の時に石油相場の下落が効果的だったという記憶があったようで、同じことをしようとしたのだろう。WTI原油の場合、2014年5月には1バーレル当たり110ドルを超す水準にあったが、年明け直後には50ドルを切る。2016年1月には40ドルを割り込んだ。
値下がりが始まって間もない2014年9月11日にアメリカのジョン・ケリー国務長官とサウジアラビアのアブドラ国王は紅海の近くで会談、それから加速度的に下げ足を速めたことから原油相場を引き下げる謀議があったとも噂されている。
ところが、原油価格の下落はロシアでなくサウジアラビアやアメリカの経済にダメージを与えることになった。ロシアの場合、石油相場と同じようにロシアの通貨ルーブルも値下がりしたことからアメリカ支配層が望んだような効果はなかった。
2014年にサウジアラビアは約390億ドルの財政赤字になり、15年には約980億ドルに膨らんだという。2020年におけるサウジアラビアの財政赤字は500億ドルと予想されていたが、これは1バーレル当たり60ドル強という前提での話。COVID-19(新型コロナウィルス)の影響で経済活動が急減速、その影響で石油相場は40ドルあたりで推移している。このまま進むと、サウジアラビアの財政赤字は500億ドルを大きく上回る可能性が高く、金融資産が底をつくとも見られている。
そうした状況の中、サウジアラビアのサルマン国王は2017年10月にモスクワを訪問、ロシア製防空システムのS-400を購入したいという意向を伝え、ロシア側は受け入れる姿勢を示し、その半月ほど後にロシアのウラジミル・プーチン大統領がサウジアラビアを訪問した。それに対し、ビン・サルマン皇太子はその翌月に王族、閣僚や元閣僚、軍人などを大量に拘束して資産を取り上げる。
ビン・サルマン皇太子による粛清で皇太子にものを言える人物が激減したが、例外的なひとりが国王の個人的な警護責任者だったアブドル・アジズ・アル・ファガム少将。国王が絶対的な信頼を寄せていた人物で、皇太子にとって都合の悪い情報も伝えていた。そのファガム少将が昨年(2019年)9月28日に射殺された。
その2週間前、9月14日に18機のUAV(無人機。ドローンとも呼ばれる)と7機の巡航ミサイルでイエメンのフーシ派はサウジアラビアのアブカイクとハリスにあるアラムコの石油処理施設を攻撃、大きな損害を与える。サウジアラビアの支配層が動揺したことは言うまでもない。その翌日、フーシ派はサウジアラビアの3旅団を壊滅させたと発表していた。
そこでサウジアラビアの内部にイランとの関係を修復しようと考える人が現れても不思議ではない。実際、イラクを仲介役として緊張緩和に関する話し合いが始まった。イラン側のメッセンジャーがイスラム革命防衛隊の特殊部隊とも言われているコッズ軍を指揮してきたガーセム・ソレイマーニーだ。
サウジアラビアの自立はアメリカの支配システムを揺るがす。そこでドナルド・トランプ政権はイスラエルの協力を得て今年1月3日、ソレイマーニーをイラクのバグダッド国際空港で暗殺した。イスラエルから提供されたソレイマーニーに関する情報を利用し、アメリカ軍がUAV(無人機、ドローン)で攻撃したと言われている。国家テロだが、「国際世論」は沈黙した。
イラクのアディル・アブドゥル-マフディ首相によると、緊張緩和に関するサウジアラビアからのメッセージに対するイランの返書を携えていた。これはイランへの宣戦布告行為であると同時に、サウジアラビアに対する警告でもあったのだろう。
そして2月20日にアメリカのマイク・ポンペオ国務長官はサウジアラビアの国王と皇太子に会い、2月24日にはサウジアラビア国王は宮殿へイスラエル人ラビを迎え入れた。ソレイマーニー暗殺はアメリカやイスラエルにとって中東における和平の流れを断ち切る重要な作戦だったと言えるだろう。
8月4日にはレバノンの首都ベイルートで大きな爆発があり、インターネット上に流れている映像には核爆発を思わせるキノコ雲や衝撃波が映っている。保管されていた硝酸アンモニウムが爆発したという話が流されたが、その一方でミサイルを目撃したとする証言や複数の映像も伝えられている。最初の爆発はイスラエルが発射した対艦ミサイルガブリエル、2度目の爆発はF16が発射した核弾頭を搭載したデリラだとする説もある。爆発の様子やクレーターの存在などから小型核兵器、あるいは核物質を使った新型兵器だとも言われている。
その爆発から9日後にアラブ首長国連邦とイスラエルが国交を「正常化」するとトランプ大統領が発表。バーレーンがそれに続いた。アラブ首長国連邦もバーレーンも9月15日に調印したが、いずれもアメリカ、イギリス、そしてサウジアラビアの影響下にある国。この調印をサウジアラビアは承諾したと見られている。
そのサウジアラビアは自国の戦闘部隊を8月26日にシリア北東部、ハサカにあるアメリカ軍の基地へ入れたと伝えられている。戦闘部隊は約20名で編成され、石油を盗掘するため、その1週間前に現地入りしたサウジアラビアやエジプトの専門家を守ることが目的だという。昨年12月にはユーフラテス川沿いにあるシリアの油田地帯、デリゾールへ数十名のサウジアラビア兵がヘリコプターで到着したとも伝えられている。
一方、トルコは経済が行き詰まっただけでなく、自らが使っていたジハード傭兵の扱いに苦しんでいる。アメリカの場合、士官クラスは救出したが、末端の戦闘員は放置しているようだ。そうした戦闘員は食べるために徒党を組み、中東を荒らし回ることになるだろう。
中東や北アフリカの制圧に失敗したアメリカはプランBとして破壊と殺戮で「石器時代」にしようとするはず。雇い主を失った傭兵はそうした計画を実現することになる。
しかし、トルコの場合、殺戮や破壊だけでなく略奪で稼いでいた傭兵はイドリブからトルコへなだれ込む可能性がある。そこで新たな行き先としてリビアやナゴルノ・カラバフへ流れ込んでいるようだ。
アメリカの情報機関CIAはジョージアのパンキシ渓谷でチェチェンの反ロシア勢力を訓練してきた。シリアへ入っていたチェチェンの戦闘員だけでなく、稼ぎ場を求めて別の戦闘員がカフカスへ入ってきていると言われているが、これはロシアにとって好ましいことではない。トルコとアメリカとの間で何らかの話し合いが行われた可能性もある。セルゲイ・ショイグ露国防相がレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領に電話で抗議したようだが、当然だろう。
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