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中東における軍事的な緊張を米軍とイスラエル軍は高めている
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202008210000/
2020.08.22 櫻井ジャーナル
イスラエルがガザ地区への空爆を続けている。「焼夷風船」への報復というようなことを言っているが、事実上、一方的な攻撃だ。パレスチナ人虐殺はイスラエルの建国が宣言された1948年5月より前からシオニストによって行われている。
シオニストの少なく一部はパレスチナだけでなく、旧約聖書に書かれた「約束の地」、つまりナイル川とユーフラテス川に挟まれた地域を自分たちの領土にしようとしている。つまり、パレスチナのほか、レバノン、ヨルダン、クウェート、シリアやイラクの大半、さらにエジプトやサウジアラビアの一部を含む地域だ。
シオニストの中にはネオコンと呼ばれる一団がある。ネオコンの中枢にはリチャード・パール、ポール・ウォルフォウィッツ、エリオット・エイブラムズ、ダグラス・フェイス、エイブラム・シュルスキーなどが含まれているが、いずれも若い頃、民主党のヘンリー・ジャクソン上院議員のオフィスで訓練を受けている。
ベトナム戦争が泥沼化した影響もあり、アメリカ国内に戦争反対の声が高まっていた1972年の大統領選挙でジョージ・マクガバンが民主党の候補者に選ばれた。戦争反対を訴えていた人物で、民主党の幹部はマクガバン潰しに動く。その時、反マクガバン派の拠点になったのがジャクソン議員のオフィスだ。
そのオフィスから巣立っていったネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン体制を倒そうとしていた。イラクに親イスラエル体制を樹立してシリアとイランを分断、シリアとイランを潰そうという計画だ。
イラクは石油の採掘をめぐって対立していたクウェートへ1990年8月に軍事侵攻、それに対してアメリカは翌年の1月にイラクを攻撃した。ネオコンはフセインの排除を望んだが、フセインをペルシャ湾岸産油国の防波堤と考えていたジョージ・H・W・ブッシュ大統領はフセインを排除しなかった。そこでネオコンは激怒、5月に国防総省を訪れたウェズリー・クラーク元NATO欧州連合軍最高司令官は国防次官だったウォルフォウィッツから、シリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると聞かされたという。(3月、10月)
ジョージ・H・W・ブッシュの息子、ジョージ・W・ブッシュが大統領に就任した2001年の9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省の本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃される。
その攻撃から10日後、クラークは国防総省でイラクを攻撃するという話を聞いたという。ラムズフェルド国防長官の周辺で決められたが、統合参謀本部の内部でも理由はわからなかったようだ。そしてイラク、イラン、シリアのほか、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンを攻撃する計画が立てられたという。
2003年3月にアメリカ軍はイラクを先制攻撃してフセインを排除するが、親イスラエル派体制の樹立には失敗した。シリアやリビアに対する攻撃は2011年春に始まるが、その攻撃はムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を主力とする傭兵が使われている。要するにアル・カイダ系武装集団だ。
イギリスの外務大臣を1997年から2001年まで務めたロビン・クックも指摘しているように、アル・カイダとはCIAの訓練を受けたムジャヒディンの登録リスト(データベース)。そのリストを利用して武装組織を編成したのである。
2011年10月にリビアではムアンマル・アル・カダフィ体制が倒され、戦闘員や武器/兵器はトルコ経由でシリアへ運ばれる。その際にNATO軍の航空兵力とアル・カイダ系武装集団LIFGの地上部隊が連携していることを知る人が増えた。カダフィ体制が倒された直後、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられたのは象徴的な出来事だった。(ココやココ)
それにもかかわらず、2012年に入るとバラク・オバマ大統領はシリアの武装集団をてこ入れする。オバマは「穏健派」を支援しているのだと弁明するが、アメリカ軍の情報機関DIAは2012年8月の段階でその主張を否定、その危険性を指摘する報告書を政府へ提出した。
その報告書には、シリアで政府軍と戦っている主力をサラフィ主義者やムスリム同胞団だと書かれていた。戦闘集団としてアル・カイダ系のアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)の名前を挙げていたが、その主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。
その警告は2014年に現実となる。1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、その勢力は6月にモスルを制圧。その際にトヨタ製小型トラック、ハイラックスの新車を連ねたパレードを行い、その様子を撮影した写真が世界に伝えられた。ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)の登場だ。
本ブログでも繰り返し書いてきたが、偵察衛星、無人機、通信傍受、人間による情報活動などでアメリカの軍や情報機関は武装集団の動きを知っていたはずで、そうしたパレードは格好の攻撃目標だが、アメリカ軍は動かなかった。2012年7月からDIA局長を務めていたマイケル・フリン中将は14年8月に退役させられている。
当初、ダーイッシュは残虐さをアピールした。残虐な武装集団を倒すためにアメリカ軍は介入する必要があるというシナリオだったのだろうが、それはロシアの抵抗で実現しない。アメリカが戦争の準備を整えた2015年9月、ロシア軍がシリア政府の要請で介入、ダーイッシュの部隊を敗走させる。アメリカなど侵略勢力の傭兵が壊滅状態になったのだ。そこでアメリカが手を組んだのがクルドである。
その構図は今も続いているが、ここにきてアメリカはジハード傭兵を増強している。今年1月3日にはバグダッド国際空港でガーセム・ソレイマーニーを暗殺する。この人物はイスラム革命防衛隊の特殊部隊とも言われているコッズ軍を指揮していた。
当時、ソレイマーニーはサウジアラビアとイランとの間で進められていた関係修復を目指す交渉のメッセンジャー。イラクのアディル・アブドゥル-マフディ首相によると、緊張緩和に関するサウジアラビアからのメッセージに対するイランの返書を携えていた。アメリカ政府やイスラエル政府はサウジアラビアとイランとの間の緊張緩和を嫌ったということだろう。
ドナルド・トランプ大統領のアメリカ軍を撤退させるという発言とは裏腹で、中東の軍事的な緊張をアメリカ軍は高めようとしている。8月17日にはアメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターがシリア軍のチェックポイントを攻撃、18日にはロシア軍の少将が殺されている。レバノンの首都ベイルートで8月4日にあった大きな爆発もそうした動きと無縁ではないだろう。
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