「双方に戦争させて、一方を軍事支援し、金は同盟国に出させる」アメリカの戦略 │ ダークネス:鈴木傾城(2023/6/12) https://bllackz.com/?p=14127
ウクライナとロシアの戦争は、実のところアメリカとロシアの代理戦争という見方もできる。
アメリカとロシアはもともと1945年から長らく対立し続けており、言ってみれば「永遠の敵同士」でもあるのだが、ソビエト連邦が1991年に崩壊してからはロシアはもはや復活不可能であるかのようにも見えた。エリツィン時代のロシアはデフォルトに見舞われ、本当に瓦解寸前であった。
ところが、プーチン時代になってからエネルギー資源を武器にして復活した。そして国際社会に影響力を持つようになると、アメリカとロシアは再び犬猿の中に戻っていき、対立の硬軟はあったとしても基本的には今も続いている。
アメリカから見ると、ロシアは西側の体制に攻撃を加えてくる「邪悪な国家」という認識である。だから、アメリカはロシアを弱体化させるような動きには積極的に加担する。
しかし、ロシアは大量の核を保有しているので、正面からぶつかると核戦争か、第三次世界大戦になってしまう。そこで、アメリカがやったのは「ロシアを追い込んでウクライナを攻撃させ、ウクライナを軍事支援する。金は同盟国に出させる」という方策であった。
「双方に戦争させて、一方を軍事支援し、金は同盟国に出させる」のだ。ロシアはアメリカの敵だ。滅ぼしたい。ウクライナはそのために「選ばれた国」である。最初からアメリカはそれを意図していたはずだ。
アメリカは、戦争を終結させたいのではなく長引かせたい。ロシアを徹底的に疲弊させて崩壊に導くために……。「戦争の継続」こそアメリカの望んでいる事態である。
アメリカは90%以上もの年月を戦争しながら過ごした
日本人は、アメリカという国を「民主主義国家」だと思っているが、本当のところは「軍事国家」と捉えるのが正解だ。それがどういう意味なのか分からないのであれば、アメリカが関与した戦争を見てほしい。(アメリカ合衆国が関与した戦争一覧)
以前にも書いたが、もう一度書く。
アメリカ独立戦争から始まって、チカマウガ戦争、北西インディアン戦争、シェイズの反乱、ウィスキー税反乱、擬似戦争、第一次バーバリ戦争、テカムセの戦争、テカムセの戦争、米英戦争、クリーク戦争、第二次バーバリ戦争……。
そして、第1次セミノール戦争、テキサスのインディアン戦争、アリカラ戦争、エーゲ海の海賊掃討作戦、ウィネベーゴ戦争、第一次スマトラ遠征、ブラック・ホーク戦争、第2次セミノール戦争、第二次スマトラ遠征、米墨戦争、カイユース戦争、アパッチ戦争……と挙げても挙げても挙げきれない戦争が続く。
さらに第一次世界大戦以後も、ロシア内戦、Posey戦争、第二次世界大戦、朝鮮戦争、レバノン危機、ピッグス湾事件、シンバの反乱、ドミニカ内戦、ベトナム戦争、第二次シャバ紛争、レバノン多国籍軍、グレナダ侵攻、リビア爆撃、パナマ侵攻、湾岸戦争、ソマリア内戦、ハイチ介入、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、コソボ紛争、アフガニスタン紛争、イラク戦争、リビア内戦……と続いていく。
今回のロシア・ウクライナの戦争にもアメリカは武器の供給を通して関与しているのだが、それはアメリカの長い歴史の中では必然的な動きであったというのが分かるはずだ。
『アメリカが建国されたのは1776年だが、それから今日まで、アメリカは90%以上もの年月を戦争しながら過ごしてきた』のである。
アメリカ軍は短期戦に強いが泥沼には本当に弱い
ただし、戦争慣れしているからと言って、常に常勝であるわけでもなければ、儲けられるわけでもない。
アメリカ軍は短期戦に強い。圧倒的な火力と物量で華々しく敵の正規軍を叩きつぶすことができる。しかし、アメリカ軍は泥沼に引き摺り込まれると本当に弱い。
現代のアメリカ軍はあまりの重装備であり、長期戦になると出費が嵩んで兵力を維持できないのである。さらに、長期戦が続くとアメリカ国内でも必ず厭戦気分が蔓延し、次第に反戦運動が大きなものになっていく。
その代表的な例がベトナム戦争だった。
ベトナム戦争で反戦運動が吹き荒れたのは、戦争が長期化したからである。ベトナムに介入した頃は、アメリカ人は「民主主義を守るための崇高な戦争だ」と言っていた。ところが、1960年代後半になっても戦争が終わらずに国費も兵士も消耗するようになると、国民は戦争に疑念を抱くようになり反対運動が燃え広がった。
カタルシスのない、だらだらとした戦争は、さっさと白黒つけたいアメリカ人には耐えられないプレッシャーなのだ。ベトナム戦争は、まさにゲリラ戦こそがアメリカを自壊させるための手法であることが証明された戦争だった。
そして、この「ゲリラ戦による長期化戦法」は、アメリカと敵対するアフガニスタンのタリバンや、イラクのテロリストにも引き継がれた。
兵力が脆弱でアメリカと真っ正面から戦えないアフガニスタンのタリバンは、最初から戦争を10年でも20年でも続けることを前提として戦っていた。また、イラクのテロリストも普段は国民の中に潜んでいて、思い立てばテロを仕掛けてアメリカ軍を翻弄する作戦を10年以上に渡って続けた。
2001年の同時多発テロ以後、アフガニスタン戦争・イラク戦争と中東に深入りしたブッシュ大統領の率いるアメリカは、こうして泥沼に引きずり込まれ、戦費を無尽蔵に消費し、いつまで経ってもアフガニスタンもイラクも制圧できずに窮地に陥った。
中国を崩壊させる「駒」として使える国はどこだろうか?
アメリカは「戦争慣れ」している。短期決戦で勝てる時は自国の軍隊を送り出して華々しく勝って世界にアメリカの軍事力を誇示する。
しかし、もし短期決戦で勝負がつかないと思ったら、「双方に戦争させて、一方を軍事支援し、金は同盟国に出させる」というやり方によって、間接的に戦争に関与して、自国に邪魔になる国家を崩壊に導く戦略を取る。
これならば泥沼になっても、戦っているのは自国ではないので厭戦気分は起きにくい。
ロシアとウクライナの戦争というのは、筋書き通り「アメリカが最初からウクライナをけしかけてロシアを挑発して、アメリカの筋書き通りにロシアがやってきたら、ウクライナを強力に軍事支援してロシアを叩かせる」というストーリーが動いていると考えるのが自然だ。
アメリカは別にウクライナという国がロシアに侵攻されて「可哀想だから助けている」わけではなく、最初からロシアを崩壊させるために筋書きを書いて、ウクライナを駒として動かしている。
ロシアが崩壊したら、ロシアの権益をすべて手中に収めるのはアメリカになる。あるいは、ウクライナの復興を引き受けるのはアメリカになる。軍事国家としてアメリカは、まっすぐ自国の権益のために動いている。
「アメリカの敵を見つける」「敵と周辺国を対立させる」「戦争を引き起こす」という戦略を取って、以下のように儲ける。
- 自国兵器を当事国に消費させて儲ける(代金は同盟国が負担)。
- 戦争が終わったら負けた国家の権益を奪い取って儲ける。
- 戦争が終わったら双方の復興を引き受けて儲ける。
日本人はこうしたアメリカの姿をよく知っておいた方がいいのかもしれない。
なぜなら、アジアでもアメリカは「次の敵」である中国を叩くために同じ手法を使う可能性は非常に高いからだ。中国もまた核保有国であり、アメリカが正面から中国とぶつかると核戦争か、第三次世界大戦になってしまう。
だから、ロシアを叩くためにウクライナを使ったように、中国を叩くために「アジアのどこかの国」を使う可能性は非常に高い。アジア情勢をよく見ると、ウクライナのポジションにあるのは「台湾」のようにも見える。では、どこの同盟国に金を出させるのか。それは、我が日本ではないのか?
そして、台湾一国だけでは中国を疲弊させるほどの戦争にならないのであれば、他の国を巻き込むことは十分に考えられる。アジアで、中国を崩壊させる「駒」として使える国はどこだろうか。やはり我が日本ではないのか?
そう考えると、ウクライナで起きていることは、対岸の火事ではないというのが分かる。同じ構図は間違いなくアジアでも起こる。アメリカが戦争の絵を描いているからである。
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