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フクシマ事故と東京オリンピック
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2019年12月 1日 植草一秀の『知られざる真実』
2013年9月7日、アルゼンチンのブレノスアイレスで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)総会。 2020年夏のオリンピック招致に向けて、安倍首相は次のように述べた。 「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています」 英語での表現はこうだ。 “The situation is under control.” 「東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも及ぼすことはありません。」 さらに、安倍首相は質疑応答で次のように答えた。 「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の、0・3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされています」 しかし、現実には福島第一原発の貯水タンクからは毎日300トンもの高濃度汚染水が漏洩(ろうえい)していた。 汚染水が地下水に到達していたことも明らかになっていた。 東京電力は、2011年4月4日から10日にかけて、港湾内に1万393トンの放射能汚染水を意図的に放出した。 そして東電は、1日で港湾内の海水の44%が港湾外の海水と交換されていることを明らかにした。 港湾と外海は遮断されていない。 港湾は外海に接し、港湾内の汚染水は1日で約半分が外海の海水と交換されていた。 40年以上にわたり、原発をなくすための研究と運動を続けている、元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏が新著を刊行される。 『フクシマ事故と東京オリンピック【7ヵ国語対応】』 “The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics” (小出裕章著、径書房) https://amzn.to/2OAIdzO あとがきで小出氏は 「私は自分の本を出すことに興味がなく、本を出すために文章を書いたことはない。 しかし、止むに止まれぬ思いで書いた文章を、多くの人に届けて下さるというお申し出はありがたいことと思う。」 と記されている。 「筆舌に尽くしがたい被害と被害者が生まれた。 一方、原発の破局的事故は決して起こらないと嘘をついてきた国や東京電力は、誰一人として責任を取ろうとしないし、処罰もされていない。 絶大な権力を持つ彼らは、教育とマスコミを使ってフクシマ事故を忘れさせる作戦に出た。 そして、東京オリンピックのお祭り騒ぎに国民の目を集めることで、フクシマ事故をなきものし、一度は止まった原発を再稼働させようとしている。 フクシマ事故が起きた当日に発令された「原子力緊急事態宣言」は事故から8年経った今も解除できないままである。 しかし、国民のほとんどはその事実すら知らない。」 「そんな時、イタリア在住の楠本淳子さんが私に一文を書くように勧めてくれた。 彼女はそれを世界各国のオリンピック委員会に送るという。」 「そこで私は「フクシマ事故と東京オリンピック」という文章を書いた。 その文章に今回、径書房が目を止めてくれ、7ヵ国語に翻訳したうえで、出版してくれることになった。」 こうして誕生したのが『フクシマ事故と東京オリンピック』である。 圧巻は2013年9月7日のIOC総会でTOKYOが読み上げられた瞬間の日本招致団一行の写真だ。 この写真に映し出されている表情こそ、日本政治の正体である。 本書における小出裕章氏の記述は極めて簡潔、平易で明瞭であるとともに壮絶な重大性を持っている。 「広島原発168発分のセシウム137が大気中に放出された。 広島原爆1発分の放射能でさえも猛烈に恐ろしいものだが、なんとその168倍もの放射能が大気中にばらまかれたと日本政府が言っているのである。 セシウム137はウランが核分裂して生成される核分裂生成物の一種であり、フクシマ事故で人間に最大の脅威を与える放射性物質である。」 そして、いまなおフクシマ事故はまったく収束していない。 さらに炉心の溶融が進めば、セシウム137を含む放射性物質が再度環境に放出される。 これを防ぐために、 「どこかにあるであろう炉心に向けて水を注入している。」 多くの写真が併用された衝撃の書である。 各国オリンピック委員会に文章が伝えられれば大きな反響があるはずだ。 背徳の東京五輪を私たちは黙認するべきでない。 まずは、小出氏による渾身の新著にお目通しを賜りたい。 |
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