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二転三転する桜を見る会を巡る釈明 私物化し詰んでいるのに逃げ回る
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/14420
2019年11月28日 長周新聞
安倍首相主催の「桜を見る会」をめぐる疑惑は、日を追うごとに説明が二転三転したり、見るに堪えない嘘や釈明のオンパレードで、ほとほとこの政権は私物化に目がないことを万人に教えている。前夜祭なるパーティーで山口県から出かけた支持者への大盤振る舞いをやりながら、不正行為を指摘されると国会で辻褄のあわない答弁をくり返し、証拠の公文書はシュレッダーにかけて捨て、官僚だけでなく民間も口裏合わせしたかのように真実を隠匿する。一貫しているのは、公私の区別も付かなくなった権力者を守る――ただそれだけである。規範意識とか誠実さとはおよそかけ離れた逃げ口上を延延とくり広げるさまはモリカケ事件ともそっくりで、いつになったらこの悪夢のような私物化政治に終止符が打たれるのかと思わせるものがある。
桜を見る会は、67年前の1952年から東京・新宿御苑で開催されてきた首相主催の公的行事であり、政府は「内閣総理大臣が各界において功績、功労のあった方々を招き、日頃の御苦労を慰労するとともに親しく懇談する」(政府答弁書)ためと位置づけ、皇族や国会議員、都道府県知事、議会議長をはじめ「各界の代表者等」約1万人を招いて酒や食事を振る舞ってきた。
ところがこれまで1万人前後だった参加人数が、第2次安倍政権発足後の2014年には1万3700人、19年には1万8200人へと2倍近くにまで膨張。それにともなって公費支出は1767万円に固定されてきた予算の2〜3倍にまで膨らみ続け、ついに2020年度の開催費用として従来予算の3倍にのぼる5729万円を概算要求していた【グラフ参照】。
この桜を見る会に出席してきた自民党の国会議員たちは個人のブログなどで、「地元福井の後援会の皆様も多数お越し下さり、たいへん思い出深い会となりました」(稲田朋美)、「今年は平素ご面倒をお掛けしている常任幹事会の皆様をご夫婦でお招き」(萩生田光一)、「役職ごとに案内状が割り当てられます。今回は限られた少数の案内しか入手できず、残念ながら後援会の皆様にご案内することができず、やむなく我が陣営は不参加」「選挙のうぐいす嬢の皆様をはじめ、後援会の皆様と参加」(松本純)などと記していた。
地方議員では、自民党山口県連幹事長の友田有県議は「前日の早朝に飛行機で上京して、貸切バスで東京スカイツリーや築地市場など都内観光をしました。その夜には、ANAインターコンチネンタルホテルの大広間において、下関市・長門市そして山口県内外からの招待客約400人による安倍首相夫婦を囲んだ盛大なパーティー」に出席し、「貸切バスで新宿御苑に」「今回は私の後援会女性部の7名の会員の方と同行」(2014年)などと記念写真とともに記していた。
その他、多くの国会議員から県議に至るまで自身の支援者や後援会関係者を「各界の代表者」として、公費でおこなわれるパーティーに招待していたことを公然とPRしていた。「公費の私的流用」または「有権者買収では?」と国会で問題になったとたん多くがブログ記事を削除したが、ネット上にはアーカイブが残っているため逆に拡散することとなった。
安倍首相は「自治会やPTAなどの役員をされている方方もおり、後援会と重複することもある」と釈明したが、首相お膝元の下関ではいきなり安倍事務所から招待状が届き、「なぜ自分に?」と首をかしげている人も少なくない。安倍後援会の晋友会から招待が届いたと思ったらライオンズクラブからも届くといった調子で、さらに市議からも誘われたとかの話はざらなのである。安倍事務所及び安倍後援会が思い切り呼び込みをしたために、850人もの人人が10万円近い出費をして東京に出向くこととなった。「私も行きたい!」と支持者が押し寄せて安倍事務所が困っていたのではなく、「オマエたち(安倍事務所)が呼んだんだろうが!」と、今になって850人は恥ずかしい思いもしながら心情を吐露している。そして東京から押し寄せる新聞社やテレビ局、週刊誌の記者たちに取材攻めにされることを恐れ、口を堅くしてダンマリを貫いているのである。「領収書や資料を出したら、この街では生きていけない…」などといっているのである。
旅費や宿泊費などは自腹で「10万円」とか「20万円」かかったといわれ、「安倍事務所から直直に声が掛かれば断れない」と本音をこぼす人もなかにはいる。しかし、いずれにしても山口県以外の国民から見たら、「安倍晋三とともに天下をとったくらいに思って、調子に乗っている850人もの山口県人」なのである。そして、安倍晋三の選挙を山口4区で中心的にとりくむ面面であり、実働部隊となる面面であるというのは、誰の目にも明らかな事実なのである。選挙をやってくれる支持者をもてなしていた−−のが現実である。
自民党事務局が今年1月に所属国会議員に通達した内部文書「『桜を見る会』のお知らせ」には「一般の方(友人、知人、後援会等)を4組までご招待いただけます」と記されており、「功績・功労」にかかわりなく私的な利害関係者を招待していたことを裏付けている。同時に「『行政機関の保有する情報の公開に関する法律』に基づいて名簿全体を公開されることもあります」との注意書きも添えられている。
安倍事務所が有権者に配っていた文書「『桜を見る会』について(ご連絡)」には、都内観光ツアー(A・B・C・Dの4コース)、夕食会(前夜祭)、桜を見る会をセットにして事務所が出席希望者を募り、後に招待状が内閣府から届くことが記されていた。
さらには安倍事務所秘書としても参加してきた前田晋太郎下関市長が、桜を見る会に招待されることは「ものすごく名誉なこと」であり、呼ぶ側にとっては「選挙で勝って主催になって、多くの方に喜んでもらえる」し、呼ばれる側としては「自分が何十年も頑張って応援してきた代議士がトップをとって、招待状が届いて、やっぱり今まで応援してきてよかったな」と思ってもらえる行事であり、「ある程度の権限が与えられておかしくない」のだと強弁して騒動がさらに過熱した。
疑惑にまみれた前夜祭 矛盾だらけの答弁
与党の「権限」にも限度がある。招待者が「功労者」であろうがなかろうが、公費が注がれる以上、その使途を明らかにし、招待者についても公開するのが公費支出の原則である。民主党政府時代にも内閣府から議員1人に4人までの推薦が認められ、そのさいも文書には「氏名や役職を含めて名簿全体を公開することも考えられるので、その旨、お含み置きください」とあり、公開を前提としていた。
ところが11月8日の国会で、推薦にかかわる資料や名簿の提出を求めた野党議員に対して、内閣府の大塚幸寛官房長は、各府省による招待者の推薦にかかわる書類や名簿は「桜を見る会の終了をもって使用目的を終える」ため「一連の書類については保存期間1年未満の文書として、会終了後遅滞なく廃棄」したとのべた。また12日には、招待客名簿も同様の理由で「会の終了後、遅滞なく速やかに廃棄している」とのべ、「事実上もう、今は調べることはできない」と強調した。
そして安倍首相は、「私は主催者としての挨拶や招待者の接遇はおこなうが、招待者のとりまとめなどには関与していない」(8日)と明言した。
さらに12日の本会議で、皇室主催の園遊会の招待名簿が30年間保存であるのに、なぜ今年の名簿がないのかを問われた菅官房長官は「(桜を見る会については)個人情報を含んだ膨大な文書を適切に管理する必要が生じるため遅延なく廃棄」と答弁。理由にならない理由でモリカケ同様の「記録がない」をくり返した。
ところが別角度からさらなる「不都合な真実」が露呈する。今年の桜を見る会前日にホテルニューオータニの「鶴の間」(2500人収容)で「地元後援会ら800人」を集めた盛大な「前夜祭」が開催されていたが、安倍首相の政治団体の収支報告書には一切記載がなかった。主催した安倍晋三後援会が宴会費を支払うなどで収支が発生していれば、政治資金規正法違反に抵触する。3カ月後に参院選を控えていた時期でもあり、地元有権者に酒食を振る舞えば公選法で禁じた贈収賄の疑いがかかる。
これについて安倍首相は「費用は会場の入り口の受付で安倍事務所の職員が1人5000円(会費)を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交した。受付終了後に集金したすべての現金を、その場でホテル側に渡すという形で、参加者からホテル側への支払いがなされた」と説明した。18日にも「桜を見る会の前日の夕食パーティーについて、安倍事務所も後援会にも、一切入金、出金はない。食事代についても領収書を発行していないし、領収書を受けとってもいない」と再度明言した。
だが、同ホテルの「宴会・催事規約」では支払いは「利用日の30日前まで」が原則であることに加え、首相の説明が事実ならば、ホテル側が入金もしていない宛名なしの領収書を800枚も預けるという特別な便宜を図ったことになる。しかも会費には先に発注する飲食代を含んでおり、予想した出席者数に過不足があった場合は後援会かホテルが補てんしたことになる。いずれにしても違法性が疑われる。
その内実は主催者がホテルから受けとった明細書(費用の内訳)を見れば明らかになるが、安倍首相は「同夕食会の各種段取りについては、私の事務所の職員が、会場であるホテル側と相談をおこなっている。事務所に確認をおこなった結果、その過程において、ホテル側から明細書等の発行はなかった」とのべている。
これについても、前夜祭が開かれてきたANAインターコンチネンタルホテル東京、ホテルニューオータニなどは、報道各社の取材に「パーティーについては原則として主催者側に明細書を発行する」とのべ、そのデータは社内規定でホテル内に保存されており「再発行は可能」と回答している。いかなるホテルでも宴会の発注者に対して明細書を発行しないというのは常識的に考えられない。
「会費5000円」についても、ホテルニューオータニが立食パーティーを「1人あたり最低1万1000円以上」と提示していることから「半額以上の値引き」といえる。それも毎年のことになれば膨大な値引き額となる。これは政治資金規正法で定める政治家に対する「物品やサービスの無償提供」にあたり、収支報告書で「金額に換算して寄附として収入に計上」(総務省)しなければならない。記載がなければ同法一二条(記載義務)違反であり、そもそも寄付を受けること自体が同法二一条(会社等の寄付の制限)で禁じられた「企業献金」に該当する。
これについて安倍首相は15日、「(前夜祭参加者の)まさに大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情等を踏まえホテル側が設定した価格」と説明したが、同じくニューオータニで前夜祭をした2015年には参加者の大多数が他のホテルに宿泊していたことが判明。矛盾が生じたため20日には、「ホテル側と相談をおこなった結果、提供するサービスの内容や参加者の規模等を勘案し、1人あたり5000円という価格設定になった」と修正した。
矛盾だらけの首相答弁によって疑惑はホテル側との関係にも広がった。政治団体の収支報告書への記載を省くために主催者を介さずホテルへの直接支払いとする便宜を図っていたなら、政治資金の流れを隠すための脱法行為にあたり、職務権限の広い首相のために実際の料金の差額を負担したり、特別に金額を安くしたとなれば贈収賄の疑いがかかる。
ちなみに今年10月半ばに天皇即位の儀式に合わせて海外要人を招いておこなった安倍首相夫妻主催晩餐会(600人参加)では、会場は入札なしの随意契約でホテルニューオータニ(鶴の間)に決まり、ここには予算1億7200万円という膨大な公費が注がれている(8月の皇室主催の晩餐会は競争入札により8400万円で他のホテルが受注)。単純に比較はできないものの、前夜祭の800人×5000円=400万円とは大きな差があり、「ホテル側の異例の便宜」の可能性が見え隠れしている。
「首相枠」は1000人か 全体の大半が功績外
二転三転する首相の発言が波紋を呼び、「前夜祭」に関する疑惑が膨らんだ21日、菅官房長官が今年4月開催の「桜を見る会」招待者約1万5000人の内訳を明らかにした。各界の功労者や受勲者など6000人に加え、「首相(安倍事務所)枠」が1000人あり、その中には安倍昭恵夫人の枠も含まれていること、副総理など官邸幹部の推薦枠が1000人、特別招待者や報道関係者の枠が1000人、自民党関係者の推薦枠が6000人というものだ。実際の「功績・功労者」以外に自民党からの政治的な配慮で全体の半数をこえる9000人が招待されていたことになる。
だが招待者名簿については「5月9日に廃棄」(内閣府)とのべた。そして「終了後遅延なく」といいながら開催日の4月13日から廃棄まで1カ月近く経過していることへの辻妻合わせとして「各省のシュレッダーが空いていなかったから」(大塚官房長)とのべた。廃棄日は野党議員が資料提出を求めた日であり、このシュレッダーは横幅3b超、奥行きと高さが1・5b以上ある大型で、40秒で1000枚を細断できる高性能のものだった。廃棄が事実であっても明らかな証拠隠滅だが、紙資料がなくても自衛隊日報や財務省文書の時と同じく電子データの記録はサーバーに残っているのがペーパーレス化が進む官庁の常識である。
また、「首相枠」で1000人も招待していた事実を認めざるえなくなるなかで、「主催者として挨拶や接遇はおこなうが、招待者のとりまとめには関与していない」と答弁していた安倍首相は「私自身も事務所から相談を受ければ、推薦者について意見をいうこともあった」と答弁を修正。同時に「内閣官房および内閣府における最終的なとりまとめプロセスには一切関与していない」とのべ、「最終的には」すべて他人の責任という態度に終始している。
それを援護するように菅官房長官も「総理が事務所から相談を受ければ推薦者について意見をいうこともあるが、最終的には内閣官房および内閣府がとりまとめており、総理ご自身はそのプロセスに一切関与していない」とくり返した。
さらに22日には、内閣府が「各府省庁に残っていた」という今年の推薦者名簿のうち約4000人分を国会に提出した。外務省が891人、内閣府が584人、文科省が546人などの内訳はわかるものの、各府省庁の幹部を除いて「功績者」の大半は氏名と役職が「黒塗り」であった。「首相枠」の1000人を含む政治的配慮による招待者1万4000人分以上の名簿については「すでに廃棄済み」として提出もしなかった。これらすべてが見られては不都合な「政治的配慮」による招待との見方もできる。
菅官房長官は「最終的な意思決定は私が責任者だ」と強調し、主催者でありながら国会での説明責任から逃げ続ける首相の擁護に乗り出し、「支援者招待は民主党政権でも続いていた慣行だ。安倍政権固有の問題ではない」とも強弁している。だが東日本大震災や北朝鮮ミサイル騒動での中止もあり、民主党政権でおこなったのはわずか1回のみ。それ以前は自民党政権でも参加者1万人以下がほとんどであった。
疑惑にまみれた「前夜祭」を含めて、公私の区別も付かなくなった首相による公費を注ぎ込んだ盛大な選挙活動になっていたことが露呈している。これまでの官僚や大臣の不祥事について「本人が説明責任を果たすべきだ」と豪語してきた首相自身の説明が求められるとともに、芸能人逮捕に熱を上げてきた検察がまともに機能するのかどうかも統治の自浄能力を図る試金石として世間の注目を集めている。
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