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総理の辞任不可避か。明るみに出た「桜を見る会」の不都合な真実
https://www.mag2.com/p/news/424456
2019.11.15 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』 まぐまぐニュース
総理大臣主催の「桜を見る会」に関して野党の激しい追求を受けるや、突然2020年の会の開催中止を発表した政府。早期の幕引きを図りたいという意図は明白ですが、事は官邸の思惑通りに進むのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、改めてこの「疑惑」について整理し不可解な点を洗い出すとともに、「桜を見る会」が選挙対策の一つと見られても仕方がないという見方を示しています。
総理、「桜を見る会」招待は後援会へのご褒美ですか
「内閣総理大臣 安倍晋三」の名でその“晴れの催し”の招待状は送られてくる。
季節外れの話のようではばかられるが、毎春恒例の総理主催「桜を見る会」が、今国会のホットな問題になっている。ある理由によって。
吉田茂氏が総理大臣の頃から続く「桜を見る会」。その一般的なイメージは、各界の著名人や功労者が会場の新宿御苑に集い、桜を愛でながら歓談する風景に違いない。もちろん、税金が使われる催しであるから、ときの首相が、招いた人々の日ごろの活躍や努力をたたえ、慰労するという意味合いがあるだろう。
しかし、その実態たるや、型通りの美しい言葉だけで尽くせるものではないようだ。「桜を見る会」のニュースに映し出されるテレビでなじみの顔に隠れて目立たないながらも、政治権力の蜜のひとしずくの甘さをいちばん知っているのは、安倍首相や有力議員らの後援会の人々らしいのである。
11月8日の参議院予算委員会で、「桜を見る会」をめぐり、共産党の田村智子議員が安倍首相らに投げかけた問題提起は、「さもありなん」と思わせる内容だった。
安倍晋三氏が総理になって「桜を見る会」の参加者は年々増え、安倍以前は参加者が概ね1万人程度だったのに2014年になると1万3,700人、今年はなんと1万8,000人に。
当然、かかる費用もどんどん増加し14年の3,000万円から19年は5,520万円にふくらんだ。もちろん、この費用は税金で賄われている。
なぜ参加者が増えたかの内訳をみると、皇族、各国大使、地方議会、行政関係者の数は約2,000人ほどでほぼ一定しているが、「その他各界の代表者等」が大幅に増加している。
各界の代表者まではいい。どうやら「等」が曲者らしい。「等」は誰を指すのか、と田村議員が安倍首相に問う。大塚幸寛・内閣府大臣官房長が手を挙げた。
「等、でございますが、幅広く招待できるよう“等”をつけているものでして、特定の分野、カテゴリーを想定しているものではございません。各省庁からご推薦をいただき、最終的には内閣府でとりまとめております」。
質問に答えていない。安倍首相も口を閉ざしたままだ。
そこで、田村議員はとっておきのネタを次々と繰り出した。自民党議員たちのブログなどの記事らしい。稲田朋美、世耕弘成、松本純といった大物自民党議員の名前が続々と登場する。
「稲田朋美・日々の活動報告には、桜を見る会に地元福井の後援会の皆様も多数お越しくださり、たいへん思い出深い会になりました、とあります」
「世耕弘成後援会ニュースには、桜を見る会にて、地元女性支援グループの皆さんとと、写真が載っています」
「松本純衆院議員・国会奮闘記には、選挙のうぐいす嬢の皆様をはじめ後援会の皆様と参加いたしましたと書かれています」
どうやら「等」は、後援会の人々のことのようである。こうした議員の後援会に入っていれば、総理大臣名で招待状が届くのである。ありがたいことではないか。きっと、家宝として、名誉の証として、大切に招待状と封筒は保管されているに違いない。
そして新宿御苑のみごとな桜並木の下、あちらこちらと移動して回ってくる安倍総理と運よくカメラにおさまることができれば最高だが、それが叶わぬとも、自分はこういう場に招かれる人間だという錯覚に陥らせてくれる。あらためて、自民党大物議員の後援会員であることに喜びを感じるのだ。
田村議員はまだ切り札を隠し持っていた。この日の予算委員会には今国会で野党から最大のターゲットにされている「身の丈」発言の萩生田光一文部科学大臣も出席していた。萩生田大臣は、かつて永田町見聞録なるブログにこんな投稿をしている。
「総理主催の桜を見る会が催され、今年は平素ご面倒をかけている常任幹事会の皆様をご夫婦でお招きしました。しかしご夫婦で参加されたのはほんの数組であとは単身、本当に奥様達に伝わっているのでしょうか?(笑)」(2014年04月18日)
総裁特別補佐だった時期の記事。「お招きしました」などと、まさに主催者である安倍首相の気分になりきっている。
それにしても、何の常任幹事会なのか。田村議員はこれも後援会だろうと目星をつけたうえで、「常任幹事会はどういう人たちで、どこの府省が推薦してくれたんですか」と質問した。それに対する答弁。
萩生田文科相 「桜を見る会は各界において功績、功労のある方を各省庁からの意見を踏まえ幅広く招待している。最終的にはとりまとめは内閣官房および内閣府において行われている。実際に参加された方は、手続きにのっとり招待された方であると承知している」 |
萩生田氏は内閣府大臣官房が用意したペーパーをそのまま読み上げた。むろん、田村議員は納得できない。あきれたように苦笑いし、予算委の理事が議長席に集まって一時中断、という毎度の風景。
萩生田文科相は「自分の知り合いをのべつまくなく呼べる仕組みにはなっていない。常任幹事の方に長がいらっしゃって、その方たちが…」とかなんとか、ごまかそうとする。
そこで田村議員が「何の団体の常任幹事か」とあらためて追及すると、ようやくあきらめたのか、「後援会の中の常任幹事の方だと思います」。
安倍首相のいちばんの子分も、後援会の世話人たちを春の宴に送り込んでいた。「招待枠を自民党内で割り振っているのではないか」という田村議員の指摘はおそらく間違っていないだろう。
だが、田村議員の真のターゲットは、萩生田氏でもなかった。満を持して切り出したのは、これだ。
「後援会のみなさんを最も大勢招待しているのは、安倍首相です」
安倍首相の地元、山口県の下関から「安倍事務所がとりまとめ役となって毎年数百人が(桜を見る会出席のため)上京する」と、安倍首相の後援会会員が証言したというのだ。
安倍首相自身の後援会だけではない。下関市選出の友田有・山口県議会議員がブログで「今回は私の後援会女性部の7名の会員の方と貸し切りバスで同行しました」と発信していることからして、安倍首相を支持する地元議員の後援会メンバーまでもが招待されているのだ。
田村議員 「案内状発送は内閣府が一括して行い、必ず招待者一人ひとりにあてて送付する。安倍事務所がとりまとめをしなければ、下関市の後援会員の名前や住所がどうしてわかるのか」 |
安倍首相は答えない。代わりに、大塚・内閣府大臣官房長が答弁する。
「推薦者のとりまとめにかかる情報は、円滑な取りまとめに支障をきたす恐れがあるので、答えは差し控える」 |
田村議員 「総理、安倍事務所に確認してください」 |
ここで、しぶしぶ、安倍首相が立ち上がった。「個人に関する情報であるため、回答を差し控える」。この政府、都合が悪いと「差し控える」だ。
いずれにせよ、安倍首相も、後援会の会員を多数招待するのはマズイかもと、少なからず後ろめたい気分が湧いてきたようだ。
田村議員は「税金を使った公的行事だ。どのような功労・功績があるのか説明できないとおかしい」と迫った。
今年、安倍首相の後援会関係者850人が「桜を見る会」参加のために上京し、安倍晋三後援会の「桜を見る会前夜祭」で気勢を上げた後、当日早朝、宿泊先のホテルから貸し切りバス17台を連ねて新宿御苑につめかけたという。
しかも、安倍首相は桜を見る会の開門より30分も前に、地元後援会の人々を会場内に招き入れて記念撮影をしていたといわれる。なぜそんな特別扱いができるのか。
これについて安倍首相は「セキュリティーにかかわることなので回答を差し控える」と、事実上の答弁拒否をした。セキュリティーとどうかかわるのか、教えてほしいものだ。
本物の桜もさることながら、有名人の「サクラ」も、このイベントに彩りを添え、参加者の気持ちを高ぶらせる要素だろうが、税金を5,000万円以上もつぎ込んで、国会議員の選挙応援団を招待し、1万8,000人もの規模に膨張させる安倍首相は何を考えているのだろうか。「桜を見る会」が選挙対策の一つと見られても仕方がない。
蛇足ながら、この件について各メディア、とりわけテレビ各局はほとんど取り上げていなかったが、11日に野党統一会派が共産党とともに追及チームを立ち上げると、いっせいに派手な報道を始めた。そのおかげで、「桜を見る会」を日程に組み込んだ観光ツアーの案内状が「あべ晋三事務所」から地元有権者あてに送られていたことなど、新事実も判明した。
それにしても、メディアの反応がいささか鈍かったのが気になる。「赤旗」の後追いになろうとも、どの党の議員の質疑であろうとも、問題提起にニュースバリューがあると思えば、積極的に報じるべきだった。
大手メディアの幹部は毎年、招待状を受け取り、若手記者が取材に駆けつけていたはずだ。あたかも春の風物詩のごとく、タレントらと写真におさまる首相の誇らしげな姿を垂れ流すだけで、何の疑問も抱かなかったのだろうか。実態を知っていて、その中に同化するばかりだったとしたら、メディアの罪は重い。
image by: 首相官邸
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記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。
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