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「プロレス国会」が官僚のブラック労働を生み出す 与野党の談合する「国対政治」はもうやめよう
2019.11.1(金)
(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)
10月11日、大型の台風19号が首都圏に接近していた夜、霞が関では15日の参議院予算委員会の審議に備えて数百人の官僚が待機していた。野党の質問通告を受けて答弁を書くためだ。その提出期限は17時と決まっていたが、期限を過ぎても質問が出てこない。
これに困った1人の官僚が「森ゆうこ糞」というツイッターアカウントをつくり、国民民主党の森ゆうこ参議院議員に対して「早く質問通告を出してくれないと台風で家に帰れなくなる」とつぶやいた。これと前後して、官僚とおぼしき多くのアカウントが「早く質問通告を出してほしい」とつぶやき始めた。
「情報漏洩」騒ぎで自爆した野党
この国会待機というのは、日本独特の習慣である。 昔は国会で野党から出てくる細かい質問には政府委員として出席した官僚が答弁していたが、この制度は「官僚主導だ」として廃止され、今は原則として閣僚が答弁する。
しかし閣僚があらゆる問題に精通しているわけではないので、ぶっつけ本番で質問をされても答弁できない。このため前々日の正午までに質問内容を通告することが与野党の話し合いで決まった。だが、これはまったく守られていない。
今回の森ゆうこ議員の場合にも、最初に出たのは質問項目だけで、追加の質問内容が何度も出され、最後に質問が更新されたのは12日の午前0時25分だった。ここまでは珍しいことではなく、森氏が謝罪すれば終わった話である。
ところが16日になって彼女は「質問通告が事前に漏洩されたのは問題だ」と論点をすり替え、国民民主党の原口一博国対委員長が加わって、野党の「調査チーム」が官僚にヒアリングを始めた。
彼らは「官僚のツイッターで質問通告が外部に漏洩された」と騒いだが、これは森氏が11日の20時22分に自分のツイッターで公開した情報だった。
規制改革推進会議の国家戦略特区ワーキンググループ座長代理である原英史氏に内閣総務官室が送った電子メールに質問通告のFAXが添付されていたが、これは彼を参考人として国会に出席要請するための資料だった。原氏はこの話を(私を含む)数人に知らせたが、彼は民間人なので国家公務員法の守秘義務は適用されない。
野党議員の目的は?
松井孝治氏(民主党政権の官房副長官)がツイッターで公開した参議院予算委員会の議事進行表まで「情報漏洩だ」と騒ぎ始めた。しかしこれは機密ではなく、議場で多くの人に配布されている公開情報である。
おまけに高橋洋一氏(嘉悦大学教授)が質問の前日にその内容を知っていたと今井雅人議員や柚木道義議員が国会で質問し、北村誠吾地方創生相に「責任を取れ」と迫ったが、その根拠にしたツイートの時刻が、アメリカ太平洋時間(16時間前)だったというお粗末な話が出てきて、野党はすっかりおとなしくなってしまった。
野党議員の目的は国会で暴れて目立つこと
これは笑い話ですむ問題ではない。国会待機は、会期中は毎日続く非生産的な仕事である。このためキャリア(国家公務員総合職)の残業は、毎月200時間近くに及ぶ。
質問通告が遅れるのは日常茶飯事で、それも項目だけで、何を聞くのか分からない通告も多い。こういう時は議員に何度も問い合わせ、深夜までかかって答弁の分担を決める。
担当した官僚は関係各省に問い合わせ、徹夜で資料を集めて答弁を書き、明け方に省内の決裁を取る。これを各省の局長級が翌朝8時ごろ閣僚に説明する。国会答弁のスケジュールは、担当者が徹夜することが前提になっているのだ。
他方で野党は、法案の中身を論じる能力も意欲もない。予算案を議論しても、それが修正されたことは戦後一度もない。このためなるべく質問通告を曖昧にして、クイズのような質問で閣僚の失言を引き出そうとする。
今の野党が、政権を取る可能性はゼロに近い。野党が政策を論じても、有権者には難しい話はわからない。それより誰でもわかる金銭スキャンダルや失言で閣僚の首を取り、テレビで騒ぎを起こして、自分の名前が選挙区に知られることが野党の最大の目的なのだ。
こういう慣例は55年体制で確立したもので、万年野党の生き残り術としてはそれなりに合理的だが、迷惑するのは役所である。長時間労働をきらって優秀な若者は役所に集まらなくなり、霞が関の就職偏差値は大きく下がっている。
日程闘争の茶番劇はやめよう
「日程闘争」の茶番劇はやめよう
しかし自民党は、こういう野党の騒ぎをなぜ放置しているのだろうか。その原因は、日本の国会が多数決で決まらないからである。
国会議員の数は衆参両院ともに自民・公明が絶対多数だから、採決すればどんな法案も予算案も可決できる。しかしどんな法案をどんな日程で審議するかは、議院運営委員会で原則として全会一致で決まる。野党が同意しない限り質問者が決まらないからだ。このため国会の審議日程は、直前まで決まらない。質問者が決まるのは1週間前である。さらに答弁で閣僚の失言が出ると、野党はそれを理由にして審議を止めるので、役所は失言を恐れる。
それを調整するのが国対委員長会談だが、国会対策委員会という組織は法律に存在しない。これは各党の国対委員長と称する議員が集まって取引する密室の会合である。これも全会一致が慣例なので、野党が1つでも反対すると国会は動かない。
この日程闘争が、弱小野党の最大の武器である。審議が遅れて会期末までに可決できないと、審議未了の法案は廃案になるので、与党は野党に譲歩して審議をスムーズに進めようとする。自民党の森山裕国対委員長が、野党の主張に理解を示すのもこのためだ。
こういう不透明な「国対政治」が続く根本的な原因は、憲法で「国権の最高機関であって国の唯一の立法機関である」と定められた国会が、現実にはその役割を果たしていないからだ。
国会で成立する法案の8割以上は内閣提出法案であり、これは国会に提出する前に与党の政務調査会と各部会の事前審査で官僚や利益団体と調整が行われ、自民党の総務会で全員一致で決まると党議拘束がかかるので、法案が国会に出たときは勝負はついている。
だから国会質疑は、最初から勝負のわかっている戦いを与野党が演じるプロレスのようなものだ。野党は悪役レスラーのように派手に暴れ、与党はそれをなだめるふりをして戦いを引き延ばす。国会は政治家の官僚に対する優位を示す見せ場なのだ。
これを改めるのは簡単である。こんな茶番劇をやめればいいのだ。国会の日程は会期前に最後まで決めて審議時間を割り当て、審議が終わったら採決する。審議未了になった法案は次の国会で継続して審議する。
今の国会運営は慣例で決まっているだけなので、この改革に法改正は必要ない。政府と与党が変えると決めれば変えられる。史上最強の安倍政権にとっては、憲法改正よりはるかに簡単な仕事だろう。
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クルド人見殺し「次は台湾」が現実味
米国のドナルド・トランプ大統領は10月27日、過激派組織イスラム国(IS)の指導者アブバクル・バグダディの殺害に米軍が成功したと発表した。米軍のIS掃討作戦の節目を迎えたとは言えるが、トランプ大統領の「世界はこれで一段と安全になった」という主張は手前味噌過ぎる。次に見殺しにされるのは台湾かという懸念が高まっている。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58126
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