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何の「調査・研究」に行くのか意味不明な自衛隊の中東派遣 トランプ騒乱の時代と中東、日本
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/263805
2019/10/26 日刊ゲンダイ
海外派遣が当たり前のようになっていく自衛隊(ソマリア沖に向かう海上自衛隊の護衛艦)/(C)共同通信社
10月23日、自民党は外交・国防両部会などの合同会議を開き、自衛隊の中東海域への派遣をめぐって議論を行った。この部会では日本政府が米国の主導する有志連合に参加しないこと、他方で緊密に連携していくことで米国政府の理解を得ていることなどが中山康秀外交部会長から伝えられた。ペルシア湾岸地域で緊張を煽る米国主導の有志連合への不参加は理解できるが、何について「緊密に連携していく」かがわからない。
米国トランプ政権のイランに対する敵対政策に「緊密に連携していく」のではイランの日本に対する不信を招く。会議ではペルシア湾やホルムズ海峡を含めるべきだと一部議員たちが発言し、また中谷元・元防衛相も会議後に記者たちに対して「(ホルムズ海峡などは)日本船舶がかなり通っている。一番危険が予想されるところや今まで事件が起こったところをあえて外すのはなぜか。派遣する以上は、しっかりと我が国の船舶の安全のために情報収集することが必要ではないか」と記者たちに語った。
中谷氏の発言にはイラン核問題のこれまでの経緯や現在の中東事情など考慮に入れず、日米同盟の観点しか視野にない様子がうかがえる。日米同盟だけで中東政策を追求すれば、日本のこの地域での立場は相当危うくなる。米国ほど中東地域で反発されている国はなく、トランプ政権による米大使館のエルサレム移転や、1967年の第3次中東戦争の結果、イスラエルが占領を続けるシリアのゴラン高原にイスラエルの主権を認めたことなど第2次世界大戦後に、国際法や国連決議を無視してイスラエルを一方的に支援してきたり、またイラク戦争で無辜の市民を殺害してきたりした米国の介入政策に不快感もつ中東の市民はきわめて多い。
■日本人がテロの標的になりかねない
その米国に従順に追随すれば、日本は中東で好意をもって見られなくなり、日本人もテロの標的になるなど日本の国益にならない。9月に亡くなったフランスのシラク大統領は、イラク戦争に一貫して反対し、査察の継続と平和的解決を訴えたが、米国との同盟関係がそれで壊れることはなかった。他方、イラクの大量破壊兵器保有を理由に国連の承認なしに戦争を開始した米国ブッシュ政権の戦争をいち早く支持し、自衛隊をイラクに派遣した小泉純一郎首相の日本はイラクで反発され、イラクを訪れた日本人たちが拉致されたり、殺害されたりした。
ホルムズ海峡は最も狭いところはイランとオマーンの海域となっている。イランは、1993年5月に「ペルシア湾及びオマーン海におけるイラン・イスラム共和国の海域に関する法律」を制定したが、その第6条は無害通航の要件となっていて、無害とは見なされないことの(a)項には「武力による威嚇又は武力の行使であって、イラン・イスラム共和国の主権、領土保全若しくは政治的独立に反するもの又は国際法の諸原則に違反する他のあらゆる方法によるもの」とある。自衛隊のペルシア湾やホルムズ海峡への派遣はこの要件に抵触する可能性がある。例えて言えば、津軽海峡にロシアの軍艦がやってきて日本に軍事的圧力を加え、それに協力して駆けつける北朝鮮の軍艦に日本人が否定的感情をもつのと同様に、軍事力でイランを威嚇する米国に協力する国には決して好感を持てないことだろう。
■ホルムズ海峡はイランにとって日本の津軽海峡のようなもの
10月23日の衆議院外務委員会で防衛省の槌道明宏防衛政策局長は、現時点では(日本関連船舶の)防護を要する事態にないが、かりに状況が変化し、船舶の安全を確保するために必要な措置をとる場合、海上警備行動の発令が考えられると述べた(毎日新聞)。 海上警備活動は自衛隊法が根拠だが、防衛省設置法による「調査・研究」ではない。「調査・研究」では武器の使用が認められないことから中谷氏など自民党議員の主張に応じるように、船舶防衛のために現れた方針の変化のように見えるが、こうした議論はまさに「木を見て森を見ず」の世界で、外交はもっとバランスよく考える必要がある。中東イスラム世界には日本に対する良好な感情は確かにあるが、しかし、これらの国で頻繁に聞かれるのは、日本は米国に従い過ぎるという声だ。9月に会ったあるシリア人は、日本人の礼儀正しさなどや平和な社会を称賛しながらも、米国との関係ではまるで「占領されているようだ」と語っていた。
トランプ大統領が来年の大統領選挙で敗れ、民主党の政治家が大統領に就任し、米国がイラン核合意に復帰すれば、歴史的に見て現在日本で行われている議論など極めて矮小なもので、場当たり的なものだ。奇矯なうえに、国際秩序を無視し、自国(自分)の利益を最優先させるトランプ大統領の顔色を見ながら右往左往する日米同盟一辺倒の議員たちの姿は、滑稽にすら見え、いったい世界の何カ国がトランプ政権のイラン核合意からの離脱やイランとの緊張の高まりを支持しているというのか。日本が外交上重要と考えるASEANのインドネシアやマレーシアもイラン核合意をかたくなに支持している。交渉からわずか20日で締結され、日本を破滅に導いた日独伊三国同盟の「バスに乗り遅れるな」どころか、トランプのバスに乗る国すらない状態である。
中東海域への自衛隊の派遣と「有志連合」への不参加は、イランとの友好関係をトランプ政権に説明した上で、了解を得たものだろうが、ペルシア湾有事の際には自衛隊が協力することを約束したのかもしれない。
「調査・研究」というならばイエメンと東アフリカを海上で行き来する難民の調査を行うことを世界に訴えたらどうか。意外なことに2015年3月から続くサウジアラビアなどによるイエメン空爆にもかかわらず、国際移住機関(IOM)の見積もりによれば、2019年前半に東アフリカから8万4378人の難民たちがイエメンに到着した。高い失業率や政情不安が難民たちを、イエメンを通って政治・社会的安定があるサウジアラビアなど湾岸諸国の労働に向かわせている。しかし難民たちは移動の過程でボートの転覆による溺死、人身売買、誘拐などの危険に遭遇するようになっている。逆にイエメンに難民として逃れていたソマリア難民たちにはイエメンの紛争によって母国への帰還の動きもある。
難民たち現状を調査・研究史、その救助や支援を視野に入れることのほうが本当の意味での「国際平和支援」になり、気まぐれなトランプ政権の核合意からの離脱に協力するかのように自衛隊を派遣することよりも国際社会からはるかに敬意を得ることになると思う。
宮田律 現代イスラム研究センター理事長
1955年、山梨県甲府市生まれ。83年、慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻修了。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院修士課程修了。専門は現代イスラム政治、イラン政治史。「イラン〜世界の火薬庫」(光文社新書)、「物語 イランの歴史」(中公新書)、「イラン革命防衛隊」(武田ランダムハウスジャパン)などの著書がある。近著に「黒い同盟 米国、サウジアラビア、イスラエル: 「反イラン枢軸」の暗部」(平凡社新書)。
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