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追跡!謎の日米合同委員会 独立国家の名が泣く! 米軍に支配された日本の情報公開
https://mainichi.jp/sunday/articles/20191015/org/00m/010/001000d
2019年10月16日 03時00分(最終更新 10月16日 03時00分) スクープ&スコープ サンデー毎日 2019年10月27号
国会議事堂=川田雅浩撮影
見えない政府
従米構造を固定化し運用するための秘密機関、日米合同委員会。日本の高級官僚と米軍高官からなるこの組織の議事録は、「日米双方の合意がない限り」不開示とされてきた。だが、情報公開の原則に則って、この秘密体制に風穴を開けようとする画期的な訴訟があった―。
▼日米密約に挑む訴訟
安倍長期政権の下で、特定秘密保護法の制定強行、「森友・加計(かけ)」文書隠蔽(いんぺい)・改竄(かいざん)、「自衛隊日報」隠蔽など、民主主義にとって極めて重要な情報公開がないがしろにされ続けている。
政府機関が保有する公文書は、政府・官僚機構の所有物ではない。公文書管理法第1条には、こうある。
「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」
情報公開法第1条でも、情報公開の意義が次のように説かれている。
情報公開により、政府の活動を「国民に説明する責務」が全うされ、「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政」が推進される。
つまり政府機関の情報が十分公開され、公文書を国民・市民が主体的に利用して行政をチェックできなければ、「公正で民主的な行政」にはなりえないのだ。
しかし、情報公開と説明責任に後ろ向きなのは、安倍政権はじめ歴代自民党政権の悪弊でもある。例えば「核密約」など日米密約に関しても、時の政権と官僚機構は存在する文書をないと偽り、隠し続けてきた。政府の秘密主義体質は根深い。
そのような秘密主義の深奥に位置し、情報隠蔽の象徴ともいえる組織がある。日米合同委員会だ。日本の高級官僚と在日米軍の高級軍人から成り、米軍の基地使用と軍事活動の権利、米軍関係者の法的地位などを定めた日米地位協定の運用に関する密室の協議機関で、米軍に有利な秘密合意=密約を結んできた。
例えば、首都圏の上空を覆う横田空域の航空管制を法的根拠もなく米軍に事実上委任する「航空管制委任密約」、米軍機墜落事故などの被害者が損害賠償を求める裁判に米軍側は米国の利益を害する情報などは提供しなくてもいい「民事裁判権密約」、米軍人・軍属の犯罪で日本にとって著しく重要な事件以外は日本側が裁判権を行使しない「裁判権放棄密約」などである。
日米合同委員会の合意の要旨は一部、公開されている。しかし、議事録や合意文書は原則非公開で、国会議員にも公開されない。外務省などに情報公開法による文書開示請求をしても不開示とされる。理由は、「日米双方の合意がない限り公表されない」と日米合同委員会で合意したからだという。
だが、そのような規定は日米地位協定にはない。ただ一方的に日米合同委員会の密室で取り決めただけなのだ。しかも、その合意自体を記した文書の開示さえも政府は拒んできた。これでは本当にそうした合意が存在するのかどうかも確認できない。全くのブラックボックスと化している。
日米合同委の不透明さ、密室性
この日米合同委員会の秘密体制に風穴を開けようとしたのが、「知る権利」と情報公開の推進に取り組むNPO法人「情報公開クリアリングハウス」(以下、クリアリングハウス)の「日米合同委員会議事録情報公開訴訟」である。
発端は、クリアリングハウスが2015年4月、情報公開法に基づき外務省に、日米合同委員会の議事録が日米双方の合意がない限り公表されないと、両政府間で明確に合意したことがわかる文書の開示請求をしたことだ。
具体的には、1960年6月の日米地位協定下(日米行政協定から改称後)の第1回日米合同委員会の議事録の一部だが、不開示となった。理由はやはり「日米双方の合意がない限り公表できず、公にすると米国との信頼関係を損なう」からだった。クリアリングハウスは2015年12月、国(日本政府)に対し、不開示決定の取り消しを求めて東京地裁に提訴した。
「日米双方の合意がない限り公表されないとの合意自体は、単なる会議のルールで、安全保障や外交政策とは無関係です。こんな情報まで固定的に非公開とするのは、明らかに拡大解釈であり、看過できません」と、クリアリングハウス理事長の三木由希子氏は指摘する。
日米合同委員会の不透明さ・密室性を浮き彫りにし、情報公開の必要性を訴えるこの訴訟は、序盤で意外な展開を見せた。国側が自ら不開示としてきた第1回日米合同委員会の議事録中の、「日米双方の合意がない限り公表されない」と書かれた部分を、なんと全く別の裁判では自説の根拠として証拠提出していたことがわかったのだ。
それは、沖縄の米軍北部訓練場を通る県道70号の日米共同使用に関する文書(米軍と那覇防衛施設局と沖縄県の間の協定書など)を、沖縄県が情報公開条例に基づく住民の開示請求に応じて開示しようとしたのに対し、国が県の開示決定の取り消しを求めて那覇地裁に提訴(15年3月)した裁判でのことだ。
沖縄県の「(文書は)日米合同委員会の議事録ではなく三者間の協定書で開示は妥当」との説明に対し、国側は「議事録の一部で、日米両政府の合意がない限り公表されない」と主張し、前出の議事録中の該当部分を証拠提出した。つまり政府は自らが起こした裁判では、自らの主張に有利なように、非公開としてきた議事録の一部を恣意(しい)的に公開したのである。ご都合主義のダブルスタンダードだ。
この事実をクリアリングハウス側が指摘したため、国側は方針を一転、16年10月に問題の議事録の一部を開示せざるをえなくなった。これで「日米双方の合意がない限り公表されない」との合意の存在は確認できた。しかし、そもそもそれ自体が非公開に値する情報ではないことも露呈した。日米合同委員会の文書を、政府がいかに固定的・独善的に不開示としているかも浮き彫りになった。
それを受けてクリアリングハウス側は、外務省の当初の不開示決定に違法性があったとして、同年11月に国家賠償請求へと訴えを変更した。その国賠訴訟の裁判で、国側(実質は外務省)はさらにおかしな行動に出る。
外務省と在日米軍の緊密な連携
国側は初め、次のように主張した。
当初の不開示決定は、外務省の北米局日米地位協定室の事務官と在日米軍の日米合同委員会事務局長とのメールや電話で、米国側から「開示に同意しない旨の立場が示された」からで妥当であり、違法性もない。日米合同委員会の文書の開示請求がある度に、米国側の立場を確認して不開示決定をしている。
そこで、クリアリングハウス側はそのメールの証拠提出を求めた。国側の主張を検証するためだ。ところが国側は、日米合同委員会の米国側代表の同意が得られないなどの理由で、提出を拒否。そのため、強制力のある文書提出命令の申し立てを東京地裁にした。
すると国側は、裁判所の提出命令が出るのを回避するため、なんと初めの主張を撤回し、前出の米国側の立場はメールではなく電話で確認したと言い出した。だが、メール自体はあるわけで、裁判所からは「電話よりメールの方が証拠性は高い」と指摘される。
対応に窮した国側は、メールは公務員の職務上の秘密に関する文書で、文書提出命令の適用除外に当たると主張し、あくまでも提出を拒もうとした。クリアリングハウス側は、本当に適用除外の対象かどうか、裁判官だけが文書の提示を受けて実見し判断する「インカメラ審理」を求める。裁判所はそれを認め、今年3月25日、国側に6月3日までにメールを提示するよう命じた。
しかし、外務省は期限が過ぎても応じなかった。そして6月27日に突如、国側は理由も明かさずに認諾という手続きをとった。原告の訴えを全面的に認めて賠償金(110万円)を払い、訴訟そのものを一方的に終了させてしまったのである。
実に不可解な対応だが、認諾は外務省の当初の不開示決定に違法性があったと認めることを意味する。国が自ら違法性を認めて賠償する道を選ぶとは、異例きわまりない。いったい国側すなわち外務省はなぜそこまでして裁判を打ち切りたかったのか。
「よほど米軍側とのメールのやり取りの内容を知られたくなかったのでしょう。認諾の場合、判決は出ません。外務省は、日米合同委員会の密室性に“蟻(あり)の一穴”を開ける、インカメラ審理や文書提出命令が実施された情報公開訴訟の判例が残るのを、どうしても避けたかったのだと思われます」(三木氏)
今回の訴訟で、外務省と在日米軍が日米合同委員会の秘密体制維持のため、メールなどのやり取りで緊密に連携し、文書をことごとく不開示決定で封印している様が浮かび上がった。それは情報公開制度を空洞化させ、市民の「知る権利」を侵害するものだ。
同様の連携について、私は本誌今年9月1日号の記事「外務省は米軍と一心同体か!」でも述べた。前出の「民事裁判権密約」文書を含む日米合同委員会議事録の一部を開示すべきとした、総務省管轄の情報公開審査会(政府機関の不開示決定が妥当かどうかを審査)の答申をめぐり、16年3月、在日米軍の日米合同委員会事務局長から外務省北米局の日米地位協定室担当者あてに、次のような要旨のメールが送られていたのだ。
「日米間での議論」に基づき米国は開示に同意せず、日本政府(具体的には外務省)から情報公開審査会に対して「開示の撤回を求め、必要な説明を行うよう」要請する。
これは日本の情報公開制度への内政干渉ともいえる行為だ。その後、外務省はこのメールを情報公開審査会に提示し、必要な説明を行った。そして、日米合同委員会議事録を全面不開示とする外務省の決定は妥当とする新たな答申が出された。結果的に前出の答申は覆されたのである。
クリアリングハウスによる訴訟で問題となった外務省と在日米軍のメールのやり取りにも、似たような生々しい連携ぶりが書かれていたのかもしれない。
日本国民の「知る権利」を侵害する米軍
このように外務省と在日米軍が結託して、秘密の厚い壁を築く日米合同委員会。
そこでは、外国軍隊への基地提供すなわち国の主権に関わる重大事項が協議され、決定されている。米軍機の騒音被害や事故、米兵犯罪の被害、基地の環境汚染など、米軍駐留による市民生活への影響は広く及ぶ。基地の提供が妥当なものか、使用条件や周辺住民への影響はどうかなど、協議内容は当然公開されるべきだ。日米地位協定をめぐる行政は公正かつ民主的なのか、日米関係はどうあるべきかなどを人々が考え、議論し、判断するためにも、日米合同委員会の情報公開は必要である。
ところが、日米双方の合意がない限り公表しなくてもいい仕組みが、日米合同委員会の密室で作られた。米軍が明らかにしたくない、外務省などが知られたくない情報は、ブラックボックスに秘められたままだ。
前出の在日米軍の日米合同委員会事務局長から外務省北米局の日米地位協定室担当者あてメールには、「合同委員会の議事録及び関連文書を開示する権限は、ただ唯一合同委員会のみに属している」との記述もある。
つまり開示の権限を独占しているというのだ。これでは、日米合同委員会が情報公開制度に対し、縛りをかけていることになる。米国側の同意、実質的には米軍の同意なしには開示されないのだから、日本の情報公開の主権が制約・侵害されているといえる。
情報公開訴訟を振り返って三木氏は、こう総括する。
「日米双方の合意がない限り公表されないとの1960年の合意は、まだ情報公開制度がなかった60年前のものです。時代はすでに大きく変わり、政府には情報公開と説明責任が求められるようになっています。安全保障や外交は国民の理解と信頼なしには成り立ちません。外務省は60年も前の合意に固執して形式的に不開示決定をするのではなく、説明責任が果たせるよう、一件一件の開示請求について熟慮し、開示に向けて最大限の努力をする方向で米国側と協議していくよう姿勢を改めるべきです」
前出の那覇地裁の裁判では2017年3月、国側の主張を認めて沖縄県の開示決定を取り消す判決が出た。まるで政府の情報隠蔽に加担するかのような判決だった。県側は直ちに控訴。「情報公開という国民の権利に関して司法は主体的判断を放棄」したと批判し、開示決定の正当性を訴えた。県道の日米共同使用の条件など、住民の生活に直結する問題について、県民には当然「知る権利」がある。
しかし2018年4月、福岡高裁那覇支部は地裁と同様の判断で控訴を棄却。県は最高裁に上告したが、今年1月棄却とされた。一連の経過の背後には、日米合同委員会の秘密体制が冷然とそびえ立っている。
(ジャーナリスト・吉田敏浩)
よしだ・としひろ
1957年生まれ。ジャーナリスト。『森の回廊』で大宅壮一ノンフィクション賞、『「日米合同委員会」の研究』で日本ジャーナリスト会議賞を受賞。他の著書に『密約』『沖縄』『横田空域』『日米戦争同盟』など
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