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完全避難と大河川堤防決壊防止が最重要
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2019年10月22日 植草一秀の『知られざる真実』
災害大国日本としての抜本的な対応が求められる。 地震、津波、暴風、豪雨の災害を避けることはできない。 地震の予知に巨大な公費が投入されているが、常識で判断できる以上の知見は多く得られない。 歴史的に日本列島では一定の周期で巨大地震が発生している。 連動して巨大津波も発生している。 今後もこの傾向は変わらないだろう。 地震の予知にお金をかけるより、地震や津波が発生した場合の被害を軽減するための措置に公費を投入する方が賢明だ。 これに対して、暴風、豪雨についてはかなり高い精度で予知が可能である。 この予報に基づいてきめ細かな対応を取る必要性が高い。 台風19号による被害が拡大したが、事前に多くの警告が発せられていた。 その警告に対して、事前の対応は十分でなかった。 個人レベルでの対応も不十分であったし、行政サイドの対応も十分でなかった。 事実を精密に検証して、今後の対応に生かさなければならない。 主権者の生命、生活を守ることは政治の最大の役割である。 この面で安倍内閣の対応は十分なものでなかった。 千葉県では台風15号による暴風で、極めて深刻な停電被害が広がった。 暴風自体は回避しようがなく、その暴風によって甚大な停電被害が広がった。 問題は事後対応だ。 東京電力、千葉県、そして安倍内閣の事後対応が著しく遅れた。 安倍首相は甚大な被害が広がるなかで内閣改造にうつつを抜かしていた。 そのために、深刻な被害が広がった。台風19号に伴う豪雨では数十年に一度の深刻な被害が広がることが警告され、大雨特別警報も発令された。 予報通りの豪雨被害が広がり、71河川の128箇所で堤防が決壊した。 死者83名、行方不明11名の被害も発生している。 床上浸水3.3万戸、床下浸水2.9万戸の被害も確認されている。 このような豪雨が発生した際に、ダムと河川堤防強化で水害を防ぐことは困難だとの指摘もある。 しかしそれは、ある程度の河川氾濫を容認するとの意味にもなる。 農業用ため池などを活用して豪雨に対応するとの考え方もあるが、浸水被害を回避する程度にため池を整備することを短期日に実現するのは困難だ。 仮に、ある程度の河川氾濫を容認するとの立場に立つとするなら、河川氾濫によって浸水が発生する地域への居住が制限されなければならない。 台風19号の接近に伴い、江戸川区で避難勧告が発令されたが、対象となる住民は42〜43万人に及んだ。 現状では、河川氾濫が発生したときに浸水被害が発生する地域には膨大な住民が居住している。 この人々を浸水リスクのない地域に全員移転させることも極めて難しい。 したがって、現時点では二つのことを軸に置いて対応する必要がある。 第一は、大河川の堤防決壊を回避すること。 そのためには、ダムの有効活用と堤防強化が必要である。 箱根町で24時間雨量が1000ミリに迫る最高記録を観測した。 しかし、神奈川県や東京都では河川の堤防決壊による重大な浸水被害は発生しなかった。 その理由は神奈川、東京における堤防強化が図られているからなのだ。 同程度の堤防強化が実行されていれば、他県での堤防決壊と、これに伴う重大な浸水被害は回避できたはずだ。 逆に言えば、他県の堤防強化は不十分なまま放置されてきたのである。 第二は、豪雨被害が予想される際に、浸水リスクの高い地域住民の早期避難を確実に実施する方策を確立することだ。 避難勧告、避難指示を発令しても、実効性を伴わなければ意味がない。 また、避難指示が発令される局面では、現実に避難を実行することが物理的に困難な場合が多い。 リスクの高い地域に居住する住民に対して、平時から、リスクの存在を周知し、豪雨災害発生リスクが高まった際に、予防的対応を取ることを義務付けることを検討するべきだ。 この二つの施策を確実に実行するだけで、人的被害を大幅に縮小させることが可能になる。 |
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