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無駄な消費税は払わない 増税なんかに馴らされてたまるか 井筒和幸の「怒怒哀楽」劇場
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/263173
2019/10/12 日刊ゲンダイ
消費税を10%に上げられたおかげで、無駄遣いをやめて倹約しようと決めたら、次の日から気分も変わって良かった。こうなりゃ意地でも「消費」への欲望にあらがってやろうと思った。
服もシャツも靴下も適当にある。もう当分買う必要がないと思ったら、無性に洋服ダンスの中を整理したくなった。わぁ、まだまだ着られるジャケットやセーターがあるわあるわ。えぇ! このスエットもポロシャツも「岸和田少年愚連隊」のロケの時、しっかり着てたやつ! 25年前やぞ、まったく傷んでないぞ。昔の服はほんとに生地も縫製もしっかりしてる。歴戦の友に久しぶりに会えてうれしかった。タグを見たら、もちろん、中国製でなく日本製。何百回洗ったことか。ボタンは取れてないし、少しも縮んでない。よっし明日からまた着るぞ。
10%のおかげで心がうきうきした。早速、よく使う手前のハンガーにかけてやった。今の大量生産ブランドの2000円の安物とは品質が違う。生き残り方がまるで違う仕立てには感服するしかない。平成に入り、日本製のカジュアル服が消えていった年月と、ロストジェネレーションが生きあぐねてきた年月が見事に重なってるようだ。ロスジェネだけでなく、生産されてきたすべての物が社会から放ったらかしにされて見捨てられてきたのかな。今も形が崩れないでまだまだ丈夫な我がポロシャツ君を見てそう思った。
30年前のウインドブレーカーもまだまだ現場復活して暴れてくれそうだ。これで「無駄な消費税」は当分、払わないぞ。増税なんかに慣らされてたまるかだ。
服の整理ばかりしていて、BSテレビ「ウッドストック」のドキュメンタリーを見逃すところだった。1969年夏にアメリカ、ニューヨーク州で世界一の規模で開かれて伝説になったフォーク・ロック・ジャズ・ソウルなんでもあり野外コンサート。イベントなんてもんじゃない“愛と平和の革命的事件”だった。我らが高校2年の時。ジャニス・ジョプリン、CCR、グレイトフル・デッド、ジョー・コッカー、ザ・バンドら何十組も出たとニュースだけが伝わって、羨ましくて恨めしくて悶絶したのを覚えている。全米中からヒッピーや学生や若者40万人以上が「愛と平和と反べトナム戦争」を体現するために集まり、最高に自由な3日間を過ごしたのだ。ジミ・ヘンドリックスが破壊的なギターの音色で「合衆国国歌」を奏でたのをトランプは知らないだろうな。反体制の若者たちの顔が誰もすてきだ。我らもあんな顔してたかな。
今年の「ウッドストック50周年」はあの電通が投資を降りて中止したとか。そりゃ元から、電通なんて主催者と考えが合うわけないだろ。そうだ、ウッドストックの映画版も見たくなった。このDVDの消費税は払ってやるよ。
井筒和幸 映画監督
1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。
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