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改めて認識すべき治水対策・防災対策の重大性
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2019年10月13日 植草一秀の『知られざる真実』
台風19号が強い勢力で伊豆半島に上陸し、各地に極めて大きな被害をもたらしている。 記録的な大雨が観測されて各地で河川の氾濫が生じた。 それでも事前に比較された1958年の狩野川台風がもたらした人的な被害と比べると、相対的には現時点での被害の程度は若干限定されているようには見受けられる。 また、9月9日に上陸した台風15号は千葉県を中心に深刻な停電被害が広がったが、台風19号による停電被害は15号と比べればやや軽微になる可能性も浮上している。 暴風の吹き方に何らかの相違があったのかも知れない。 事後的な検証が重要になる。 雨による被害に関しては、記録的な豪雨になったこととの対比ではやや限定的なものになる可能性もある。 狩野川台風による被害との相違が生じた背景を考察することが重要になる。 現時点では、三つの相違点を指摘できる。 第一は、台風に対する警戒情報が事前に広く流布されたこと。 歴史的に見ても極めてまれな強さと大きさを持つ台風が関東地方を直撃することについての警戒情報が広く流布されたことが人々の警戒姿勢もたらした可能性は高い。 第二は、治水のインフラが狩野川台風の時点と比べて相対的には整備されてきたことだ。 ダム建設に対する批判が展開されてきたが、洪水対策としてのダムの効果は大きい。 ダムの容量との関係で、「緊急放流」が検討、実施されたが、下流域の河川の氾濫を最小に抑止するために、ダムの容量が最大限に活用された。 ダムが流入する雨水を蓄積できず、上流域の雨水がそのまま河川に流れ込んだなら、下流域の氾濫の規模は想像を絶するものになったと考えられる。 第三は河川の堤防が強化されたことだ。 主要な河川においても、氾濫が生じるギリギリの水準まで河川水位は上昇した。 この状況下で、大河川において堤防が決壊したなら甚大な被害が発生する。 これまでの豪雨等による浸水被害の多くは堤防の決壊によって発生していることが多い。 事前に提示された狩野川台風との比較においては、台風被害が若干は抑制されたことは不幸中の幸いではあったと思われるが、上記の三つの要因が極めて重要である。 1990年代以降、公共工事の不必要性が強く訴えられてきた。 言うまでもないことだが、意味のない、必要のない公共工事は全面的に排除するべきだ。 地方公共団体における、いわゆる「ハコモノ行政」が典型だ。 財政危機を叫びながら、必要性の乏しい巨大なハコモノを建設することの背徳性は極めて深刻だ。 しかし、他方において、主権者の生命と財産を守るためのインフラを軽視するべきでない。 太古の昔から、為政者の最大の課題は水を治めることだった。水のあるところに文明が発祥した。 しかし、その水が文明を破壊する側面を有してきた。 とりわけ、日本のように急峻な国土を有する国においては、河川を治めることが決定的な重要性を持つ。 危機管理の鉄則は “prepare for the worst” “be on the safe side” である。 最悪を想定して対応することが危機管理の鉄則なのだ。 この意味で、適正なダムの整備と河川の護岸対応は最重要の施策になる。 これまでのところ、今回の台風が狩野川台風並みの激甚な人的被害を生み出していない背景に、河川の氾濫が相対的には限定的にとどまり、重大な堤防の決壊が発生しなかったことを挙げることができる。 しかし、各種データを見る限り、被害の限定は確実なものだったのではなく、辛うじて激甚な大被害を免れたという偶然の産物であったというべきものだ。 降水量がわずかでも今回の水準を上回っていたなら、ダムの緊急放流が早期に実施され、はるかに深刻な河川氾濫の被害が広がった可能性が高い。 箱根町などでは記録的な降水量が記録されたが、九州や中国地方、あるいは伊豆大島などで発生したような大規模な土砂崩れ、土石流による被害は、13日未明の段階では報告されていない。 地盤の強度に相違があったのか、あるいは、危険の大きい地域に住宅が立地していなかったのか、実証的な分析が求められる。 こうしたなかでお粗末さを露呈したのがラグビーのワールドカップだ。 この時期の開催で何よりも警戒するべきが台風被害である。 台風で試合を予定通り挙行できない場合に、代替措置をとることを決めていなかった。 全試合を消化できるプログラムを組むことが可能であったはずなのに、その選択が行われていなかった。 このような欠陥システムを決定したことに対する批判が生じるのは当然のことと言わざるを得ない。 |
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