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元助役の死にも疑念 「越後屋の小判」怪文書と謎解き<上>
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/262949
2019/10/08 日刊ゲンダイ
「原子力ムラ」でカネがぐるぐる回る(森山栄治・福井県高浜町元助役=左、関電の八木会長、岩根社長ら)/(C)日刊ゲンダイ
そもそも、なぜ、元助役はこれだけ広範に金をばらまく必要があったのか |
関西電力の高浜原発を舞台にした原発マネーの還流問題は、永田町を巻き込む大スキャンダルに発展しそうな様相だ。キーマンとされる福井県高浜町元助役の森山栄治氏が鬼籍に入ったのをいいことに、関電は森山氏の“特異性”にすべてを押し付け、逃げ切ろうとしている。しかし、「死人に口なし」「関電の破廉恥」では終わらない。「越後屋の小判」を巡る謎と闇は深まる一方である。
問題発覚の端緒は、2018年1月の金沢国税局による査察だ。森山氏が顧問を務めていた建設会社「吉田開発」(高浜町)に対する税務調査で、同氏に3億円の手数料が支払われていたことが判明。6月ごろには森山氏宅から関電幹部への金品提供に関するメモが見つかり、関電は7月に社内調査委員会を設置。9月には調査結果をまとめたが、岩根茂樹社長は「不適切ではあるが、違法性はない」として取締役会に報告せず、秘匿を続けていた。
事情を知る関係者がマスコミなどに送付した内部告発文書がここへきて出回っているが、腐敗した関電経営陣の総退陣と経営刷新を求めたものの無視されたと明かし、こう記していた。
〈最も看過できないのは、原発の建設、運転、定期点検、再稼働工事の過程で、工事費等を水増し発注し、お金を地元有力者、及び国会議員、県会議員、市長、町長等へ還流させるとともに、原子力事業本部幹部職員が現金(億単位)を受け取っていたことであります〉
指摘通り、原発マネーは関係先をぐるぐると回っていた。森山氏を通じて吉田開発から関電役員らに渡った金品は少なくとも計3・2億円。助役退任後の同氏は吉田開発顧問のほか、原発メンテナンス会社(兵庫県高砂市)相談役、警備会社「オーイング」(高浜町)取締役、さらに関電子会社「関電プラント」(大阪市)顧問に就いていた。吉田開発とメンテナンス会社は、関電プラントから3年間で計約113億円の工事を受注し、オーイングは関電の原発警備を一手に引き受け、福井県警の天下り先の機能も果たしている。巨額の金品は受注のキックバックなのか。森山氏を起点にあらゆる方面に原発マネーが流れ、原子力ムラに巣くう構造が浮き彫りである。
告発文書には、こうも記されていた。
〈平成に続く新年号の事態における、大スキャンダルの第1号となるでしょう。自殺者も出るかもしれません〉
高浜原発のために…(C)共同通信社
なぜ、重くて足がつきやすい小判なのか 共犯関係を念押しするような元助役の凄味 |
関電幹部らが森山氏から受け取った金品の形態は実にさまざまだ。
現金1億4501万円、商品券6322万円分、米ドル15万5000ドル(1705万円)、金500グラム(240万円相当)、金貨365枚(同4949万円)、金杯8セット(同354万円)、スーツ仕立券75着分(同3750万円)、そして小判3枚(同24万円)である。菓子折りの底に忍ばせる形で手渡されたというが、小判のやりとりなんぞは、時代劇の悪代官と越後屋を彷彿とさせる。
「小判は脱税目的でよく使われる手口です。現金授受と比べて足がつきにくく、骨董品と言い逃れできる余地がある。絵画などと比べて売買が容易で、現金化しやすいのも利点のひとつに挙げられています」(税務当局関係者)
だとしたら金の延べ棒の方がよりベターな気もするが、森山氏はなぜ小判にこだわったのだろうか。元特捜検事で弁護士の郷原信郎氏はこう言う。
「特別なものを贈ることによって、金品授受により重みを持たせ、一蓮托生の共犯関係にあると念押しする意図があったのではないか。関電幹部がキレイごとを言いだし、森山氏との関係を清算しかねないとの考えが根底にあったのかもしれません」
原発ムラの住人の裏切りは決して許さない――。暴力団もビックリの凄まじさである。
関電調査委員長の小林敬弁護士(左)は郵便不正事件を巡るデータ改ざん問題(右)で責任を問われ大阪地検を退官したいわくつき…(C)日刊ゲンダイ
「違法性はない」と被害者面の経営陣、辞め時と逮捕の可能性 |
金沢国税局の査察で原発マネー還流問題の露見に直面した関電は、社内調査委による調査結果について岩根社長が「違法性はない」と判断し、取締役会への報告を見送り。取締役の不正行為をチェックする監査役会も追認していた。2日に行われた2回目の会見でも岩根社長は「違法性はないということで報告しない判断をした」と繰り返し、八木誠会長ともども居直りを決め込んでいる。
被害者ヅラの経営陣のもくろみ通りにコトは収束するのか。立件の可能性があるのは、会社役員の収賄罪、関電グループが森山氏の関係企業に特命発注を続けていたことに対する独禁法違反とみられている。前出の郷原信郎氏がこう言う。
「いずれにしても立件要件を満たすハードルは高い。金品授受に関する森山メモが出てきたと報じられていますが、それだけでは裏付けは不十分。資金の出元とされる吉田開発からの情報も必要になる。特命発注については、発注額などの詳細が判明しないので何とも言えません。逆に言えば、だからこそ、嫌疑の有無を含めた捜査は絶対にやるべきです」
郷原信郎氏が懸念を抱くのは、関電と関西検察OBとの関係だ。
調査委員長を務めた元大阪地検検事正の小林敬弁護士は、郵便不正事件を巡るデータ改ざん問題で責任を問われて減給処分を受け、退官したいわくつき。関電社外監査役には「関西検察のドン」と呼ばれる元検事総長の土肥孝治弁護士が今年6月まで就き、後任に元大阪高検検事長の佐々木茂夫弁護士が就任。85歳から74歳への異例のバトンタッチである。
「今春ごろから始まった内部告発の動きは、徐々に表面化の危険性が高まっていった。関電経営陣にとって重大な問題を切り抜けるため、超高齢の検察OBを監査役に選任したのではないか。経営トップ2人が会見で見せた開き直ったような異様な態度や、関電を取り巻く環境を見る限り、検察サイドと話ができているのではないか、との印象がぬぐえません」(郷原信郎氏=前出)
大物検察OBを守護神に祭り上げたゆえの余裕なのか。
福井県高浜町の建設会社「吉田開発」(C)共同通信社
金沢国税局は過去何十年間も見過ごしてきたのか なぜ、調査が入った途端に元助役が死んだのか |
今回の問題が発覚したのは、金沢国税局が昨年1月に着手した査察がきっかけだ。金沢国税局の大金星だが、その裏で不可解な人事があった。吉田開発に査察に入ったほぼ同じ頃、当時の局長が辞職を申し出て、国税庁長官官房付を経たうえで昨年3月に退職しているのだ。
「税務署が最も忙しいといわれる確定申告の時期の辞職というタイミングは解せません。いったん、官房付になったのも通常の人事とは異なります」(司法記者)
安倍政権が不正発覚を望まない原発案件に手をつけた金沢国税局は、虎の尾を踏んだということだろうか。
関電の元役員は1990年代には森山氏から金品を受け取っていたことを明らかにしている。
だとすると、金沢国税局は怪しい原発マネー還流をアンタッチャブルな案件として、何十年も見過ごしてきたのか。
立正大客員教授の浦野広明氏(税法)が言う。
「原発マネーについて、叩けばホコリが出るのは、税務当局は百も承知です。しかし金沢国税局に限らず、全国の税務当局は、わざと手をつけないで見て見ぬフリをしてきました。国策である上に、迷惑施設である原発を進めるための不透明なお金を黙認してきた側面があります」
査察が入った1年後に森山氏が死去したのも謎だ。
「森山氏の死の真相はわかりませんが、少なくとも森山氏の死を踏まえて『死人に口なし』ということで税務調査をオープンにしたのではないか。関電に限らず、全国の原発にもメスを入れるべきですし、黙認してきた税務当局の不作為が問われるべきです」(浦野広明氏=前出)
闇は深くて広い。
元助役の死にも疑念 「越後屋の小判」怪文書と謎解き<上>
— suhama 脱原発 脱格差社会 (@suhamayuki) 2019年10月8日
関西電力の高浜原発を舞台にした原発マネーの還流問題は、永田町を巻き込む大スキャンダルに発展しそうな様相だ
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— 泉谷 章 (@Izumitani_Akira) 2019年10月8日
【捜査の壁「関電」癒着「検察」】「死人に口なし」「関電の破廉恥」では終わらない これだけある「越後屋の小判」を巡る謎と闇 元助役の死因にも重大な疑念、「まだ死人が出る」と言われる闇の深さと、怪情報が飛び交う政治家の関与(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/j0sYw2e63o
— KK (@Trapelus) 2019年10月8日
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