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2019.09.28
盛田常夫 (経済学者、在ハンガリー)
れいわ新選組の消費税減税に、共産党がいち早く同調したようだが、世論の評価は総じて低い。減税を主張すれば有権者の票を獲得できるという浅はかな期待に乗っかった政策だが、これこそ国民を見下したポピュリズムであり、国民を馬鹿にした発想である。その魂胆があまりに見え透いていて相手にされない。
そもそも、消費税を廃止したり、減税したりした国を探し回り、たまたまマレーシアが廃止したことに我が意を得て、喜喜として消費税廃止へ方向を切ったようだが、比較する国が間違っている。マレーシア並みの社会保障に切り下げるなら、消費税廃止もあり得るだろう。ところが、日本的な社会保障を維持したまま、マレーシアに倣って消費税廃止という論理は、まったく説得力がない。中学生でも分かることだ。あまりのご都合主義に滑稽でもある。
いったい日本が目指すのはアジアの中進国なのか、それとも欧州の福祉国家なのか。アメリカ的な消費生活を維持して、西欧の福祉国家を目指そうということなのか。そのことを議論せず、「消費税を廃止している国があるから」というだけで、国民を説得できるわけがない。多くの若者は将来の年金を含めた社会保障に不安を抱いている。それをポジティブに解決する道を示すのではなく、後ろ向きに解決する政策は最初から「票目当て」と勘ぐられ、支持されない。「れいわ」が多くの得票を得たと言っても、高が200万余票である。ポピュリスト政策を信じる有権者がその程度いるというだけのことだ。
成熟した日本経済に求められているのは、個人消費と社会消費の関係をどうするかである。社会消費を増やそうとすれば、個人消費を減らすしかない。個人消費を増やしたければ、社会消費の減額を受け入れなければならない。膨大な公的債務を抱える日本が、将来の税収を担保にした借金経営を続ける限り、将来の社会保障は限りなく切り下げられる。年金の4割5割減、医療費の自己負担率の大幅引上げは最低限の要件である。これだけ深刻な問題を抱えているのに、ふつうに考えて、消費税減税が解決策になるとは誰も思わないだろう。そういう国民の意識や不安を解決する道を示さないで、当座の減税だけ提言する政策は国民の支持を得られない。
他方、政府は軽減税率導入による煩雑な問題に国民の目を向けさせ、いったい何のための増税なのかを真正面から議論することを避けている。明らかに安倍政権は将来社会の福祉水準の維持を真剣に考えて消費税増税を決めたのではない。安倍晋三にとって、将来社会の社会保障などどうでもよいことである。これだけ財政赤字をたれ流ししてきたのだから、少々の増税は仕方がないが、それが政権支持の票を減らしては困る。それだけのことである。だから、一生懸命に、複雑な軽減税率やポイント還元政策で、目くらまし作戦を展開しているだけだ。これこそ、右派ポピュリズムの最たるものだ。
野党が追及すべきは、法人税の取り損ないがないかを精力的に調べ、法人からの税収を増やすことだ。また、消費税軽減税率やポイント還元に右往左往するより、消費税累進税率の導入を考えるべきだ。500万円1000万円の乗用車を購入できる人であれば、30-40%の消費税であっても購入するだろう。数百万円もする宝石類を購入する人であれば、40-50%の消費税でも購入を控えることはない。奢侈品の価値はあってないようなものだから、4-5割価格が高くなっても買い控えはない。消費税が課税の不平等をもたらすと声高に叫ぶ前に、富裕者の奢侈品購入の消費税率を標準税率の5割増し10割増しにすることだ。煩雑な軽減税率導入に経費をかけるより、奢侈品の累進税率導入を考え方が良い。
ネットを通していろいろな情報が容易に取得できる時代になった。政党の政策立案者が考えているより、国民ははるかに多くの情報にアクセスできる。前向きの実現可能な政策を練ることなく、後ろ向きの政策で、当座の支持を増やそうという見え透いた魂胆は、簡単に見破られる。安易な政策提言は党の信頼性を損なうだけである。
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