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韓国への過度な執着は日本衰退の象徴 嫌韓バッシングに耽溺し世界に取り残される可能性も
https://wezz-y.com/archives/69226
2019.09.14 wezzy
「Getty Images」より
政府が韓国に対する事実上の輸出規制に踏み切ったことをきっかけに、国内は韓国をバッシングする記事で溢れかえっている。あるWebメディアでは、人気記事ランキングのほとんどすべてが韓国ネタだったこともある。
一連の状況を冷静に眺めると、日韓両国とも相手国に対して異様なまでの執着を示していることがわかる。多くの日本人にとって、韓国との貿易を制限することは魂を揺さぶる大きなニュースのようだが、日本の輸出総額に占める韓国の割合は低く、日韓の産業構造も大きく変化している。誤解を恐れずに言えば、韓国との貿易など、大して重要なテーマではなくなっている。
日本は、米国と中国への輸出で何とか経済を成り立たせている状況であり、米中貿易戦争の激化は、日本にとって危機的な出来事といってよい。韓国とのいざこざにかまけている暇などないというのが現実なのだが、多くの日本人にとってその認識は薄いようだ。
■日韓両国は空前の大騒ぎ
日本政府は、半導体の製造に不可欠とされるフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3品目の輸出について、7月4日から個別に審査を行う方式に変更した。これに加えて、8月28日からは、韓国をホワイト国(輸出管理を厳格に実施している国)のリストから外すという措置も実施している。
3品目については軍事転用が可能で、原則として個別許可が必要なものだが、韓国に対しては優遇措置を設けていたことから、簡便な手続きで輸出することができた。しかし、今後は個別の案件ごとに許可を申請する必要があるため、日韓貿易の停滞が予想されている。
直接、輸出の規制にならない製品についても、購入先によっては許可が必要となるが、これを回避するためには相手国がホワイト国に認定されている必要がある。韓国がホワイト国から外れると、韓国への輸出が煩雑になり、貿易が停滞する可能性がある。
日韓両国では、この措置をめぐって、それこそ上を下への大騒ぎとなっている。日本の論者は、韓国は日本がいないとやっていけない国であり、今回の措置は韓国経済に大きな打撃を与えると主張している。一部からは、今後、韓国との関係を清算すべきだといった過激な意見も聞こえてくる。一方、韓国は韓国で、貿易制限を行えば日本側が苦しい立場になると主張しているほか、日韓の対立は日本企業にとって大きな損失だと主張している。
確かに特定の製品について輸出入を制限する措置を加えた場合、当該製品を扱っている企業にとっては大打撃となるだろう。だが経済全体で見た場合、両国にどの程度の影響が及ぶのかは、経済全体に占める輸出入の比率や両国の産業構造によって大きく変わってくる。
■日本と韓国は双方にとってそれほど重要な国ではなくなっている
2018年における日本の輸出入の総額は約164兆円となっているが、このうち韓国との輸出入が占める割合は全体の5.7%に過ぎない。日本にとって最大の貿易相手国は中国であり、輸出入の21.4%が中国向けである。次いで米国(14.9%)、ASEAN各国(15.2%)、EU各国(11.5%)と続く。
日本にとって韓国は隣国であり、かつては日本と韓国の産業構造は相互依存的だった時代もあるが、今では、重要な貿易相手国ではなくなっており、貿易制限で大騒ぎするような話ではない。では韓国にとって日本はどのような国だろうか。
韓国全体の輸出に占める日本向けの割合は4.7%、全体の輸入に占める日本の割合は11.5%となっている。確かに韓国のほうが、日本からの輸入に依存する割合が高いが、それでも貿易全体を考えると、中国や北米の重要性が高いことに変わりはない。このところ韓国の輸出が急減しているが、それは日韓関係ではなく、米中対立による中国の景気悪化が原因である。
以前の韓国メーカーは、日本メーカーから基幹部品を輸入し、安い労働力を生かして、安価な最終製品を大量生産していた。韓国メーカーは日本メーカーがないと部品を確保できないし、日本メーカーは韓国という輸出先がないと売上高を維持できなかった。つまり日本と韓国の産業は一体となっていたわけだが、ここ十数年で基本構造は大きく変わった。
韓国メーカーは自前で部品を開発できるようになり、付加価値の低い部品については東南アジアから輸入するようになっている。日本も同様に東南アジアで部品を調達するケースが増えており、日本と韓国のやり取りは減少した。もちろん韓国メーカーの中には、依然として基幹部品を日本メーカーから調達しているところがあり、日本メーカーの中にも、韓国が主な輸出先というところもあるだろう。だが、貿易全体、経済全体の問題を考えた場合、日韓の関係はあまり重要なものではなくなっているのが現実なのだ。
むしろ筆者が危惧しているのは、韓国との問題ばかりに気を取られ、米中関係という日本にとってもっとも重要なテーマがおざなりにされてしまうことである。
■日本にとって大事なのは米国と中国
先ほど説明したように、日本経済における中国と米国の存在感は極めて大きい。金額ベースでは中国との関係がもっとも密接ということになるが、モノの流れに着目すると少し違った様子が見えてくる。中国に輸出された日本製品の一部は、中国で使われるのではなく、中国の工場で製品として組み立てられ、米国に輸出されている。つまり中国を経由して米国の消費者が購入しているケースが少なくないのだ。
さらにいうと、中国が米国に再輸出せず、中国が自ら使用する目的で輸入している代表的な製品は工作機器や製造装置といった機械類である。これは中国が世界の工場として、主に米国向けの製品を製造するために必要なものである。
つまり米国の景気がスローダウンすると、米国向けの輸出が減るだけでなく、中国を経由して米国に輸出される製品の輸出も減少し、生産量の減少から、中国メーカーが購入する機械類の輸出も減少するという、日本にとっては輸出減少ドミノが発生してしまう。
日本人の多くは、米国の景気に対してあまり関心を持っていないが、実は米国の景気が良いのか悪いのかは、わたしたちの生活を左右する重要事項なのである。
米国はリーマンショック以降、めざましい成長を実現しており、日本はその恩恵をフルに受けてきた。これまでは、米国の好景気が今後も続くのかということだけが焦点だったが、トランプ政権の誕生によって状況は変わった。トランプ氏は、自ら中国との貿易戦争に乗り出しており、米国経済の不確実性はこれまでになく高まっている。
■米中関係、米朝関係への関心は薄い
米国が中国との貿易に高い関税を課したことで、中国企業の米国向け輸出が大きく減少。中国企業が今後の生産計画を見直したことから、日本電産やファナックなど、日本メーカーは大きな影響を受けた。もし米中が妥協できない場合には、いよいよ関税の影響が米国にも及んでくるため、米国の消費も低迷する可能性がある。こうした事態に陥った場合、日本経済への打撃は相当なものとなるだろう。
中国は米国との対立を受けて、輸出依存をやめ内需型経済へのシフトを模索している。もし中国が本格的に内需経済に舵を切った場合、日本から中国に輸出できる製品の種類も変わることになり、日本企業は迅速な対応が求められる。これはかなり切迫した事態であり、韓国との争いなどに時間を取られている場合ではないというのが現実なのだ。
しかも今回の韓国側の動きは、米韓同盟を弱体化させるものであり、米朝交渉の行方にも大きな影響を与える。もし韓国で文在寅政権が継続し、その間に米朝交渉がまとまった時には、日本にとってやっかいな事態となるかもしれない。
だが国内は、相変わらず韓国バッシングに終始しており、米中関係や米朝関係への関心は薄い。気がついた時には、世界経済の動向や、米中関係、米朝関係が大きくシフトしており、一気に時代に取り残されることも十分にありえるだろう。
あまり考えたくはないが、衰退していく国というのは、こういう形で周囲が見えなくなり、そして時代への対応力を失っていくのかもしれない。
加谷珪一
経済評論家。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社などを経て独立。経済、金融、ビジネスなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
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