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消費税増税という悪魔がポイント還元を嗤っている
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/261180
2019/09/02 日刊ゲンダイ 文字起こし ※タイトルは紙面による
この人も悪魔か(C)共同通信社
10月1日の消費税率10%開始まで1カ月を切った。大新聞は1日、増税直前の現場の大混乱をこぞって報じたが、いい気なものだ。大混乱のタネは「民主主義の基盤である知識を誰もが入手しやすくする」とのタテマエで、定期購読の新聞も対象になる軽減税率である。
税率が異なる店内飲食(10%)と持ち帰り(8%)の価格の扱いで大手外食チェーンの対応はバラバラ。政府は対応レジの導入に上限20万円などの補助金を設けたが、7月末時点の申請は想定の4割ほど。対応レジの人気機種は需要に生産が追いつかず、納入が数カ月も先――とまあ、混乱ぶりを書き連ねて、社説では「あと1カ月、準備を万全に」などと上から目線で一席ぶつ。
現場が悲鳴を上げるほど混乱しているなら、それこそ「民主主義の基盤」を重んじて「軽減税率なんてヤメちまえ」と主張すべきだ。ところが、自分たちだけ軽減税率を勝ち取った手前、「日々の買い物の痛税感を和らげ、低所得者の負担を軽くする」などと取り繕う。おためごかしの論調にはヘドが出そうだ。
そもそもレジの導入や補助金の申請が遅れているのは、大嘘つきの安倍首相のせいだ。過去2度の増税延期に加え、今回も正式決定を渋った。選挙に勝つなら何でもアリの政権だけに、7月の参院選直前まで「3度目の延期もあり得る」と様子見を決め込んだ事業主も多かったはずだ。
軽減税率を巡る混乱は、まさに“オオカミ中年”の安倍がどれだけ国民に信頼されていないかを物語っている。
一石二鳥を狙うはずが総スカンの大マヌケ
さらに混乱に拍車をかけているのが、キャッシュレス決済へのポイント還元策だ。
還元率は中小店舗(資本金5000万円以下か、従業員数が50人以下)が5%、大手フライチャイズ加盟の中小店舗は2%。クレジットカードや電子マネー、スマホのQRコード決済などで代金を払えば、ポイントが付与される。
対象店舗が参加申請すれば、ポイント分は国の財源で補填。増税後の景気刺激とキャッシュレス普及の“一石二鳥”との触れ込みだが、参加を申請した店舗はまだ対象の約4分の1だけ。全国の約200万店のうち、8月29日時点で約51万店にとどまる。
そりゃあ、そうなるに決まっている。ただでさえ、中小店舗は複雑な軽減税率にウンザリなのに、キャッシュレスに対応する暇はない。手間やコストもバカにならない。軽減税率に対応できるレジを購入するだけで「業者が薦めるのは1台50万円ほど」とされる。
国の補助があっても負担は大きく、来年6月までの期間限定策に備えるためだけに、キャッシュレス端末に手を出す余裕はない。ましてや、客や店主の高齢化が目立つ商店街などでは、キャッシュレス決済など遠い存在でしかない。
その上、ポイント還元の対象外の大企業や直営店中心の大型チェーンは価格競争にさらされる。既に直営店が多い飲食チェーンは客離れを恐れて税込み価格を据え置く「実質値下げ」や、自社負担でポイントの還元実施に動いている。コンビニ大手も制度の対象外となる直営店でも自社で負担し、支払い時に2%分を即座に差し引く「実質値引き」が主流だ。大手スーパーも負けずに「消費増税還元セール」を仕掛けてくるだろう。
対立が激しさを増す中…(C)共同通信社
不公平で薄汚れた典型的な弱肉強食 |
「結局、混乱を避けるために企業の負担は増えるばかり。値引き分のシワ寄せで、その傘下の下請けは四苦八苦。従業員の給料減の要因にもなりかねません。効果ゼロの愚策です」(経済アナリスト・菊池英博氏)
これでは、ますます消費を冷え込ませるだけ。実にアホらしい話で、誰がどう見ても景気刺激策にはなりそうもない。
消費増税に伴う新たな税負担増は5.7兆円。安倍政権は今年度予算に増税対策費として、2兆円超を盛り込んだが、うちポイント還元費は2798億円。増税対策の7割近くを占めるのは「防災・減災、国土強靱化」を推進させる公共事業で予算規模はナント、1兆3475億円に上る。
消費増税対策のドサクサに紛れて、自民党の大スポンサーであるゼネコンを潤す大盤振る舞い。国民の懐に戻すはずの2兆円超の増税対策なんて大嘘。見せかけの数字でしかないのだ。
還元税率にしても対象の多くは食料品だが、総務省の家計調査によると、最新の今年6月分で2人世帯以上の消費支出に「食料」が占める割合は約28%に過ぎない。日々の交通費や光熱水費、衣類や携帯電話の通信費など、残り7割以上の支出の多くには10%の税率が重くのしかかる。
安倍はポイント還元策などについて、「十二分の対策を講じることで、経済の大宗を占める国内消費をしっかりと下支えしてまいります」と豪語したが、まったくのデタラメ。インチキ政府が打ち出した効果の薄い弥縫策で現場は大混乱とは、筋書きの悪い喜劇でしかない。元静岡大教授で税理士の湖東京至氏はこう指摘する。
「8%の税率据え置きやポイント還元で消費者を欺いたところで、消費税の“悪魔性”は覆い隠せません。税率が2%引き上げられると、きっちり価格に2%分転嫁されていると思う人も多いでしょうが、実は違います。価格の上乗せ分に法律上の義務はなく、力のある企業ほど2%以上を転嫁しがち。実際に増税前から商品の値上げラッシュは続いています。しかも税金を納めている企業と、還付される企業が併存し、大企業には『輸出戻し税』という“特典”までついてきます。不公平で汚い、典型的な弱肉強食の税制なのです」
日本経済をメタメタにする玉砕命令
低所得者ほど物価負担が重くなる逆進性という“魔物”まで抱えながら、この国では法人税や所得税の減税分を「悪魔の税制」で肩代わりしてきた経緯もある。
「庶民のカネを大企業や金持ち優遇策につぎ込んだ構図です。消費税は一般財源なので使い道も自由。政府は『社会保障に充てる』と言って巻き上げながら、社会保障に回った分はごく一部で、大半は借金返済に消えてしまった。いくら弥縫策を講じても増税後は必ず買い控えが広がり、モノが売れず、真っ先に中小企業は苦しむことになる。増税後は弱い立場の人ほど厳しい目に遭うのが、消費税が悪魔の税制たるゆえんです」(湖東京至氏=前出)
まるで消費税という悪魔がポイント還元を嗤っているかのようだ。
増税のタイミングも最悪だ。
トランプ米政権は1日、中国製品に対する制裁関税「第4弾」を発動。中国も即座に報復し、2大貿易大国が互いに課す関税率はついに平均20%を超える。
保護主義が戦禍につながった1930年代並みの水準というから、すさまじい。
休日明けのきょう以降、米中貿易戦争の本格化で外需が落ち込もうとする中、内需まで冷え込ませる消費増税に突き進むとは、日本経済への「玉砕命令」に等しい。
「第4弾の追加関税の目玉は中国製パソコンなど電子機器で、その部品の多くは日本企業が供給しています。貿易戦争の激化は日本のメーカーにとっても大打撃。対中貿易の黒字は減り、しかも安倍政権が韓国政府にケンカを売った悪影響で、対韓貿易の黒字も減る。日米貿易交渉も日本車に25%の高関税を課されたり、円安誘導を禁じる為替条項をのまされるリスクは残ったまま。つまり外需は上がり目なしで、貿易赤字へまっしぐら。アベノミクスも行き詰まり、消費増税後の日本はマイナス成長に陥って、長期低迷の時代に入っていく。今からでも増税を凍結すべきです」(菊池英博氏=前出)
アホらしい軽減税率とポイント還元で大混乱という喜劇は、本当の悲劇の序章に過ぎない。
消費税増税という悪魔がポイント還元を嗤っている https://t.co/k6uChFMGrc #日刊ゲンダイDIGITAL
— 新保吉章 (@pat052) 2019年9月2日
それ見たことか、軽減税率のアホらしさ【消費税という悪魔がポイント還元を嗤っている】自分たちだけ軽減税率を勝ち取った大新聞が増税を前にした現場の大混乱を報じているが、いい気なものだ 8%の据え置きやポイント還元で消費者を騙したところで、この税制の悪魔性を...(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/2LzfzJoBU9
— KK (@Trapelus) 2019年9月2日
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