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10月1日に予定されている消費税率10%への引き上げまで1カ月を切った。だが家計の負担増や景気への悪影響が懸念され、慎重意見や反対論は根強いままだ。
今回の引き上げは、外食・酒類を除く飲食料品などの生活必需品について税率を8%に据え置く軽減税率が導入されることが大きな特徴だ。商品によっては8%と10%の二つの税率が存在することになるが、税率区分などの制度は複雑であり、企業などの準備も十分とは言えないようだ。
小売店は複数の税率に対応するためにレジを更新しなければならない。だがレジ生産が追い付かず、県内でも販売業者が注文受け付けを停止せざるを得ない状況だという。レジの更新が間に合わない場合、税率ごとに料金を計算しレシートや領収書は手書きで対応する必要がある。経理や税申告にも支障が生じる。
さらに不安なのは来店客への周知、対応だろう。飲食料品は軽減税率の対象だが、例えば店内のイートインコーナーで飲食すると外食扱いで10%になる。みりん風調味料は食品で8%だが、本みりんは酒類扱いで10%だ。
共同通信社が8月中旬に実施した全国電話世論調査によると軽減税率制度を「あまり理解していない」「ほとんど理解していない」の合計が約44%に上った。消費者に制度が浸透しているとは言えず、店頭での混乱も心配される。
増税に伴う景気の腰折れ懸念も払拭できないままだ。
2014年の8%への消費税率引き上げでは景気低迷が長引いた。政府は今回、経済の冷え込みを防ぐため、キャッシュレス決済時のポイント還元や低所得者ら向けのプレミアム付き商品券などの景気対策を実施する。
これら景気対策には「大盤振る舞い」との批判があるが、一方でポイント還元策などの消費下支え効果を疑問視する見方もある。米中貿易摩擦に伴う輸出低迷や円高進行、人手不足など、さまざまリスクを抱える時期での増税の是非自体を問う声は消えない。
消費者心理が冷え込めば本県の主力産業である観光への波及も避けられない。専門家は県内の賃金・雇用環境への影響にも警鐘を鳴らしており、留意する必要がある。
政府は増税について年金などの社会保障費や幼児教育・保育の無償化の財源になると説明するが、そもそも消費税は低所得者ほど負担が重くなる「逆進性」の課題を抱える。軽減税率も高所得者ほど恩恵は大きい。困窮者らにさらなる家計負担を強いるような増税の在り方には大いに疑問がある。
8月中旬の全国調査では10%引き上げに反対が51・3%と賛成の43・3%を上回った。野党は増税中止や減税を求めている。消費税を引き上げる状況にはない。増税は見合わせ、法人税や所得税とのバランスを含めて税制全体を議論し直すことが必要だ。
琉球新報社説 2019年9月2日
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-981843.html
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