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亡国の日米交渉には沈黙 韓国叩き“自称右翼”の支離滅裂
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/261146
2019/08/31 日刊ゲンダイ 文字起こし
日米貿易交渉が大枠合意しランプ米大統領と握手する安倍首相(C)ロイター
どうしてネトウヨや自称右翼が問題にしないのか、摩訶不思議である。トランプ大統領に、余った飼料用トウモロコシ275万トンを押しつけられた一件のことだ。
“日米貿易交渉”について大枠合意した8月25日、日本政府は米国産トウモロコシの購入までのまされてしまった。
トランプは共同記者会見で、「中国が約束を守らないからアメリカではトウモロコシが余っている。そのすべてを日本が買ってくれることになった」と大喜びだった。275万トンは、ざっと3カ月分の飼料である。
しかし、これほど国益を損ねる話はないのではないか。どうして中国が「いらない」と拒絶した売れ残りを、日本がカネを払って引き取る必要があるのか。残り物を押しつけられたというのに、よくも国のメンツを大事にするはずの自称右翼は黙っているものだ。
「いまアメリカから飼料用トウモロコシを買う必要はまったくありません」と、東大教授の鈴木宣弘氏(農政)は、こうつづける。
「安倍政権は“害虫被害でトウモロコシが不足している”と購入理由を説明していますが、まったくのフェイクです。たしかに害虫は発生していますが、トウモロコシに被害は出ていません。かりに国産トウモロコシに被害があったとしても、アメリカからトウモロコシを輸入しても意味がない。国産の飼料用トウモロコシは、葉や茎もまぜて砕いて作っている。牛に繊維分を与えるためです。でも、アメリカから輸入するのは栄養価の高い粒コーンです。まったくの別モノ。代替できません。牛には両方を与える必要がある。それに日本は、コメを飼料にする方針だったはずです。栄養価の高いコメは、粒コーンの代わりになる。安倍政権が決めたトウモロコシの輸入は支離滅裂です」
しかもアメリカのトウモロコシは、まだ安全が確認されていない「遺伝子組み換え」食品である。フランスの実験では組み換えのエサを2年間、食べつづけたマウスの50〜80%にがんが発症している。アメリカの環境医学会も「免疫機能やアレルギー、妊娠、出産に悪影響を及ぼす」と発表している。中国が輸入を拒否したのも、危険食品だと判断したからだろう。
すでに日本は、アメリカから飼料トウモロコシを輸入しているが、本当は、安全なコメなどに飼料を切り替える必要がある。なのに、安倍政権は、必要もないのに、トウモロコシを爆買いすると決めたのだから信じられない。
韓国批判で喜ぶのは安倍だけ(C)ロイター
よほどアメリカの方が勝手なのではないか |
普段、国益を叫んでいるネトウヨはなぜ、不要なトウモロコシの大量輸入に異議を唱えないのか。本当は、国益などどうでもいいと考えているのか。
安倍政権の“国益無視”“国益毀損”は、トウモロコシの爆買いだけじゃない。
アメリカの要求に従って、必要もないのに兵器も大量に買っている。その象徴が、秋田と山口に設置する予定の「イージス・アショア」である。2基で2400億円というベラボーな額だ。しかも、イージス・アショアの導入が、日本の防衛のためなのかさえ疑わしい。ハワイとグアムを守るため、という疑いがある。ちょうど北朝鮮からの延長線上に、秋田とハワイがあり、山口とグアムがあるからだ。ハワイとグアムを狙うミサイルを撃ち落とすには、秋田と山口は最適の場所なのだ。もし、東京や大阪を守るなら、秋田や山口には設置しないはずである。
だいたい、イージス・アショアをバカ高い値段で買うのは、日本くらいのものだ。ルーマニアやポーランドは1銭も払っていない。
安倍政権がシャカリキになっているカジノの開設にしたって、国益ではなく、トランプのためなのは明らかだ。
カジノを開設しても、儲かるのはカジノ業者だけである。すでにトランプのスポンサーである米カジノ最大手「ラスベガス・サンズ」の参入は既成事実となっている。カジノ運営のノウハウがない日本企業には出番がない。
どうして、ネトウヨは黙っているのか。韓国叩きに血道を上げ、「これ以上、韓国の勝手を許すな」などと叫んでいるが、よほどアメリカの方が、日本をバカにし、日本の富を吸い上げ、勝手なことをやっているのではないか。
「安倍政権の外交は、二重基準になっています。アメリカに対しては、どんな要求でも受け入れ、アジア諸国に対しては居丈高な態度で応じる。恐らく、安倍政権の応援団であるネトウヨにも、無意識のうちに二重基準が伝播しているのでしょう。もし、本気で国益を考えていたら、アメリカの横暴に対しても、国益を差し出している安倍首相に対しても、黙っていられないはずです。ほとんど、植民地扱いですからね。でも、二重基準が染みつき、そうした発想にならないのでしょう」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
韓国叩きが安倍政権の“外交失敗”を隠している |
うれしそうに「韓国叩き」をしているネトウヨは、結局、憂さ晴らしをしたいだけなのではないか。なにが本当の国益なのか、分かっていないのではないか。
アメリカは、この先も、日本に次々と勝手な要求を突きつけるつもりだ。すでにトランプは、日本が輸出している自動車に対して、制裁関税を課す可能性があると宣言している。日米貿易交渉は取りあえず大枠合意したが、トランプは「日本はアメリカから長年、すさまじい貿易黒字を稼いできた」「私がやりたいと思えば、制裁関税を発動するかもしれない」と言い放っている。
これまで安倍政権は、アメリカの要求をはねつけたことは、ほとんどない。大枠合意した「日米貿易交渉」も、日本はアメリカの要求を百パーセントを受け入れ、アメリカ産の牛肉や豚肉の関税をTPP水準にまで下げたのに、日本がアメリカに求めていた自動車の関税撤廃はゼロ回答だった。そのうえ、余ったトウモロコシの輸入までのまされてしまった。これからもアメリカの要求を丸のみするのは明らかだ。
最悪なのは、どこまで自覚しているのか分からないが、ネトウヨの韓国叩きが、安倍政権の“外交失敗”を見えにくくしていることだ。
政治評論家の森田実氏が言う。
「トウモロコシの全量輸入だけでも、本当は政権が吹き飛んでおかしくない話ですよ。中国やフランス、ドイツだって買わなかったシロモノでしょう。日本が輸入したって、倉庫に眠らせることになる。典型的な朝貢外交ですよ。歴代の自民党首相も、アメリカにはスリ寄ったが、安倍首相は恥じることもなく屈している。どうかしているのは、大マスコミがトウモロコシの輸入についてほとんど報じなかったことです。日米貿易交渉の大枠合意だって、日本の全面譲歩なのに、大手メディアは“TPP水準で決着”などと、日本の交渉が成功したように報じていた。どうかしています。しかも、テレビは公共の電波なのに、まるでネトウヨのように韓国批判の番組を流している。これでは安倍外交の実態は国民に伝わらない。安倍首相はニンマリしているはずです」
安倍政権が“嫌韓”をあおる裏で日本の国益はどんどん毀損されている。
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