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神戸製鋼+大林組で決定の怪情報 311億円の下関市長府浄水場整備 また代議士出身企業が大暴れか
https://www.chosyu-journal.jp/yamaguchi/12952
2019年8月31日 長周新聞
競争性を担保せよ
下関市では市内の水道水の80%の浄水を担う長府浄水場の更新事業がいよいよ動き始めている。この更新計画は、20年以上前から検討されてきたものだ。当初は長府安養寺にある長府配水池の場所に移転して全面更新する計画だったが、土地交渉の難航などから2008(平成20)年に現地更新の方針へと転換し、計画の具体化が進行してきた。そのために2011(平成23)年には水道料金の約15%の値上げも実施された。そんな水道料金を投資する超大型事業だが、来年6月に予定される業者選定をめぐって、入札公告の直後から、すでに落札業者は神鋼環境ソリューションと組んだ大林組に決まっているという怪情報が業界内で流れ、競争なき入札ではないかと疑問視する声が上がっている。この先何十年も市民生活を支える水道施設の建設事業が落札者ありきで進むことは、品質面・価格面ともに将来にツケを残すことになりかねないことから、公正な入札がおこなわれるよう厳正に対応すべきとの声が上がっている。
長府浄水場
長府浄水場は旧下関市、豊浦町、菊川町の一部にかけて広い範囲に水を送っており、市内の80%の水を賄う重要なインフラ施設だ。人口が増加し、給水範囲が広がるなかで拡張を重ね、現在は一日13万立方bの浄水能力を持っている。しかし人口減少と水需要の減少=水道料金の減収が続くなかで、老朽化した施設を更新しなければならないという課題を抱えている。これまでに部分的な施設の更新事業をおこなってきたが、これからほぼ全面的な更新事業を開始することになる。
2008年に現地更新の方針が決まって以降、水道局内で検討を重ね、2010(平成22)年段階で、現在と同じ急速ろ過方式で更新することを決定し、具体的な工程まで公表していた。しかし、2013(平成25)年に突然、ろ過方式の再検討がおこなわれ、@処理水質の安全性の向上、A建設期間短縮の可能性、B建設スペースの縮小、C建設費の削減、D将来の人口減少への対応などを理由に、「生物接触ろ過+膜ろ過方式が有効である」という判断が下された。
この夏の8月21日の入札公告では、新しい施設は浄水能力を現在の13万立方bから9万7000立方bに縮小し、ろ過方法を「生物接触ろ過(上向流)+粉末活性炭+膜ろ過(凝集池をもちいた凝集処理を必須とする)」方式に変更することとなっている。
この突然のろ過方式の変更の背後には、営業攻勢をかけていた神鋼環境ソリューションの存在があり、当時水道局内からも疑問視する声が上がった経緯がある。足かけ20年かけて練ってきた計画が、最後の最後に神鋼環境ソリューションが特許技術を持つとされているろ過方式へと急展開で変更されたのである。
突然のろ過方式の変更
下関市上下水道局は今回の更新にあたって、PFIの手法の一つであるDBO方式を採用している。DBOとは、デザイン・ビルド・オペレイト、つまり設計、建設から運営までを一括して民間事業者に委託し、施設の所有や資金調達については公共側がおこなう方式だ。民間企業と20年間の契約を結ぶもので、今年3月に実施方針を公表し、今月21日に入札公告とともに入札説明書などを公表したところだ。
予定価格は、設計・建設工事期間と施設維持管理期間(来年九月の事業契約締結の翌日〜2048年3月)をあわせた28年間で311億5000万円(税抜き)と、近年の下関市の大型事業のなかでも大規模かつ巨額な事業である。
市水道局によると、PFI可能性調査の段階でもこの事業に対する関心は高く、ろ過技術を持つメーカーをはじめ建設・土木業者など、現場見学会には多くの業者が参加したという。
しかし入札公告の直後から、「これでは神鋼と組んだゼネコンしか入れない仕組みだ」「ゼネコンは大林組になりそうだ」といった話が出始め、神鋼が結成するJVに入れそうもない業者らは、すでに入札参加をあきらめているといった指摘もなされている。そうなると競争性は失われ、業者が切磋琢磨して持てる技術を駆使しながら設計・建設・運営に対する提案をしたり、業者間で競ってよりよい設備更新への知恵や情熱を注ぐといった営みが排除され、入札価格そのものも高止まりすることが懸念されている。いい値になるからだ。しかも入札条件に示されているのは、その後の管理運営とかかわって20年間分の電気代と水は下関市が無償で提供するという超優遇措置を施された契約内容であり、受注企業には相当に利益が転がり込むことが予想されている。
なぜそのような指摘が上がっているのか事情を聞いた。今回の入札は機械設備工事(代表企業)・土木工事・建築・電気設備の業者で一つのJVを結成して入札に参加することになっている。そして建設工事が終わったのち、SPC(特別目的会社)を設立して20年間、施設の維持管理を担うことになる。市上下水道局はこの入札方式を採用したのは、「JVを組むことで費用をより安く抑えることができる」からだと説明している。
しかし、上向流式生物接触ろ過という処理方法とかかわって、部分部分に神鋼グループの特許がかかっているため、ゼネコンなどのあいだに、「神鋼が代表企業を務めるJVに入らなければ、入札に参加しても落札の見込みがない」という判断があるようだ。神鋼グループは特許を公開しており、特許料を支払えば技術を使うことはできる。しかし価格面で圧倒的に神鋼が有利な位置に立つからだ。
これまでに国内で浄水場建設にたずさわった実績を持つ電気設備業者は少なくとも五社、ゼネコンでは10社以上あり、たとえば土木・建築・電気設備の部分を分割すれば、少なくとも五JVはできるはずだといわれている。複数の業者が入札に参加して競争したうえで、プラントメーカーと組むのであれば、工事費をより安くできるはずだと、業界関係者らは指摘している。
もし神鋼が率いる1JVしか参加しないという結果になれば、品質面でも価格面でも競争のないまま、業者が決まることにもなりかねない。しかも、名前のあがっている大林組については、これまで長府浄水場内でおこなわれてきた施設の更新を請け負っているものの、2011〜2013年に施工した濃縮汚泥の排水処理施設は完成から6年しか経過していないにもかかわらず、壁面のコンクリートは施工がひどすぎるためにヘドロが吹き出していたり、クラック(ひび)が入っていたり、コールドジョイントといわれる現象があらわれていることが関係者のなかでは問題にされている。「よくあれで(行政の)検査が通ったものだ」といわれるほどだ。ひび割れた部分が茶色く変色しており、業者らによるとコンクリートの打ち方としては最悪の例で、こうなると劣化も早いのだという。311億円もの水道料金を投入して劣化の早い施設が完成したのでは元も子もない。これらは将来的に市民の水道料金にも影響してくる問題でもある。
コンクリートが劣化した排水処理施設の壁面(長府浄水場)
上下水道局は、あくまでも多くの業者の参加を得て、おおいに競争がおこなわれ、よりよい提案がなされることを期待していると話している。特許の有無に関しては、総合評価点を性能点八価格点二の割合とし、技術面での評価に重点を置いた配分をしており、「特許料などの対応で価格が高い事業者であっても、提案内容によっては落札の可能性がある」と説明している。今後、
2019年9月30〜10月4日…入札参加資格確認申請書の提出
2019年10月31日…入札参加資格確認結果の通知
2019年4月6〜9日…提案書等の提出
2020年5月…提案書に関するヒアリング
2020年6月…落札者決定の公表、基本協定の締結
2020年9月…事業契約の締結
というスケジュールで更新事業の契約が進むことになっており、公平・公正な入札がおこなわれるかどうか、はたまた怪情報の通りにはじめから決まっているとされる出来レースによって神鋼環境ソリューション+大林組JVが請け負っていくのか、注目されるところとなっている。
過去も環境利権総なめ
リサイクルプラザ(左)と奥山処理場のストックヤード
「神鋼環境ソリューション+大林組」ではじめから話は決まっていると聞かされて、「さもありなん」と思ってしまうのが下関市政に関係する人人の常識で、安倍晋三の出身企業でもある神戸製鋼が歴史的に市政に寄生し、大型箱物事業を食い物にしてきた経緯について曖昧にすることはできない。ゴミを燃やす奥山工場焼却施設(2000年、約110億円)ではストーカ炉を作った実績もなかったにもかかわらず入札に参加させ、もともと実績のあったタクマなどの業者を入札から排除したうえで、3社という異常に少ない業者指名で入札を実施したうえで神鋼が受注し、その後の管理運営を請け負ったのも関連会社の神鋼環境ソリューションだった。
そして、同じく環境利権ではリサイクルプラザの建設事業(2001年、約60億円)も、当初は7つのJVが入札に参加したものの、2回目の入札でその他の6つのJVが辞退するという異常事態のなか、二転三転しつつも最後は談合情報そのままに神戸製鋼が受注。落札率は99・93%というものだった。その後の管理運営も神鋼環境ソリューションが請け負った。
その他にもあるかぽーと開発利権に手を伸ばしたり、なんでもかんでも神鋼及び関連会社が市発注事業を総なめにするためひんしゅくを買ってきた。街中でも「また安倍晋三の出身企業がとった」と大評判になるなか、近年は少しおとなしくしていた印象だったが、総額311億円という巨額な利権だけに、ここぞとばかりにエンジンをフル回転させて登場してきた――と見なす人人も少なくない。
水ビジネスをめぐっては、全国でももっとも多く導入されている急速ろ過方式は長年の蓄積で技術が洗練され、すでに完成していることから、新たな手法を開発する動きが活発化している。と同時に、後進国に水ビジネスで乗り込むうえで、「高度処理」の開発が盛んにおこなわれており、膜ろ過や生物接触ろ過などの手法もその過程で出てきたものだ。
生物接触ろ過方式は、北九州市上下水道局と神鋼環境ソリューションが、九州でもワースト上位に入るほど汚染が深刻な遠賀川から取水するに当たって開発した方式なのだという。臭い物質となるプランクトンや水に溶けたマンガンなどの溶解性物質を除去できることをセールスポイントにしており、それ自体は綺麗な水をつくることができると評価もされている。
北九州市上下水道局と神鋼環境ソリューションは、この方式の国内特許をとっており、生物接触ろ過が普及すれば特許料が入る関係でもある。さらにはベトナムの自治体に売り込んで現地法人が工事を受注するなど、後進国への売り込みにいそしんでいる。下関での巨大浄水場での実績は、今後の足がかりになる関係でもある。
今回下関市が導入しようとしているのは、さらにそれを膜ろ過と組み合わせるという全国的にも前例がない方式だ。国内の水道関係者たちも、「膜ろ過を導入する自治体はあるが、生物接触ろ過というのは聞いたことがない」「生物接触ろ過+膜ろ過は前例がないのではないか」「山口県は水がきれいだから必要ないのではないか」とみな首を傾げている。
本紙でもこれまでとりあげてきたように、下関市の水道は全国九番目という早さで整備され、市民の生命を守り、生活を支えるインフラとして重要な役割を果たしてきた。水道を支えてきた先人たちの精神を継承する更新事業となるよう、多くの市民は願っている。それは水道の現場を担い、この長府浄水場更新計画に情熱を注いできた関係職員たちの願いでもあるし、まさか水道料15%値上げが代議士出身企業を養うためだったなどといわれぬよう、公正公平な入札を実施することが求められている。はじめから「もう大林で決まっているじゃないか」などといわれ、切磋琢磨のない無競争でクラックやコールドジョイントだらけの施設にされては困るのだ。
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