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準同盟化も検討 豪の「有志連合参加」で高まる日本の懸念 トランプ騒乱の時代と中東、日本
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/260775
2019/08/24 日刊ゲンダイ
G20大阪サミットで握手するオーストラリアのモリソン首相(左)と安倍首相(C)共同通信社
オーストラリアのモリソン首相は21日、米国が主導するホルムズ海峡などの安全確保を目的とする有志連合に参加することを表明した。8月上旬に米国のポンペオ国務長官とエスパー国防長官がオーストラリアを訪問して、参加を要請したが、それに応ずる形となった。モリソン首相は、石油タンカーの自由な航行を保障することはオーストラリアの利益にかなうと述べ、海上輸送が損なわれることはオーストラリアにとって潜在的な脅威であると語った。このように、モリソン首相は「脅威」を強調するが、ホルムズ海峡周辺の「航行の自由の確保」などは、トランプ政権がイランとの軍事的緊張を招き、7月に有志連合への参加を各国に呼びかけるまで唱えられることはなかった。
オーストラリアはイギリス、バーレーンに次いで有志連合への参加表明を行った3番目の国だが、モリソン首相はトランプ大統領の国際法に違反する中東政策に従う世界でも数少ない政治指導者だ。
米国トランプ政権は、昨年5月に大使館をテルアビブから、イスラエルが軍事的に占領するエルサレムに移転させて国際的な非難を浴びたが、それに同調するかのように、モリソン政権は駐イスラエル・オーストラリア大使館を昨年12月、西エルサレムに移転させる可能性について言及した。この表明は、彼の政党である「オーストラリア自由党」が今年5月に行われた下院総選挙でユダヤ票を獲得することを考えたとか、また米国のトランプ大統領の歓心を買うためのものだったのだろう。オーストラリアにはユダヤ人人口は0.4%、11万人程度と多くないが、ユダヤ社会が潤沢な資金などでロビー活動を行い、選挙の趨勢を決定する米国の政治スタイルをモリソン首相は真似たのかもしれない。
■トランプ大統領と歩調を合わせるモリソン首相
トランプ大統領は東西エルサレムをイスラエルの首都と認定したが、他方でモリソン政権は西エルサレムだけがイスラエルの首都であり、将来東エルサレムを首都とするパレスチナ国家創設を認めるという混沌とした考えも明らかにしている。これに困惑したイスラエルのハネグビ地域協力相は、東西エルサレムは永遠に不可分のイスラエルの首都であることを強調して、オーストラリアが早急に過ちを正すことを望むとコメントした。
オーストラリアが西エルサレムのみをイスラエルの首都で認めた背景には近隣のイスラム諸国やアラブ諸国への配慮があった。マレーシアは、オーストラリアの決定がパレスチナ人を侮辱するものと強く批判した。マレーシアはイスラムを国教とする国で、マハティール首相はモリソン政権の意向を受けてエルサレムはイスラエルの首都ではないと明言している。
ムスリムが全人口の9割を占めるインドネシアでも首都ジャカルタのオーストラリア大使館の前でエルサレム移転表明に対する抗議デモが発生した。オーストラリアはインドネシアとの「包括的経済連携協定(IA-CEPA)」を今年3月に署名することに成功したが、インドネシアのムスリムを刺激すればこの協定は成立しないことが考えられた。協定によってオーストラリアからインドネシア向け輸出品の99%の品目が関税撤廃か、関税引き下げとなる。ムスリム人口が多く、かつパレスチナ人に対するシンパシーの強いインドネシアとの経済関係を考慮すると、東西エルサレムがイスラエルの首都とは言えなかったに違いない。インドネシア外務省も「パレスチナの権利闘争を引き続き支援する」という声明を出した。
21世紀の後半にかけて世界のムスリム人口は現在の25%から33%に増加するとみられているが、オーストラリアは近隣だけでなく、世界のムスリムの意向も考慮せざるを得ないだろう。アラブ連盟のサイード・アブー・アリー・パレスチナ・アラブ被占領地担当副事務総長は、オーストラリアの決定が国際社会の総意や国際法を無視するものであると強く非難した。「ガーディアン」のキャサリン・マーフィー記者はモリソン首相の決定が権力に固執する愚かな考えであると断言したが、モリソン首相が混沌とした考えを持つ人物であることは明らかで、オーストラリアを同盟国として頼りにする日本もそういう心づもりでこの政権と向き合ったほうがいい。
■安倍首相は「パートナーシップを前に進めたい」と表明
安倍首相は、今年6月に大阪で開かれたG20で「豪州との特別な戦略的パートナーシップを力強く前に進めたい」と表明したり、また中国に対抗し、自由で開かれた、包摂的なインド太平洋地域の実現のために日米豪印による安全保障協力を提唱したりしているが、2018年にインドの原油購入先としてイランは全輸入の10%を占め、1位のイラク21%、3位のサウジアラビア18%に次いで第3位で、インドはイランとの軋轢を望まず、ドルではなくて、インドの通貨ルピーでのイラン石油の購入も検討するところを見ると、有志連合には加わらないだろう。
日本とオーストラリアは、自衛隊とオーストラリア軍の共同訓練を行う機会などを増やす目標を持ち、日豪の「準同盟化」も検討されている。オーストラリアは2001年の9.11同時多発テロの直後の10月にアフガニスタンに部隊を派遣するなど米国の軍事行動に一体となってきたが、その姿勢はイスラム世界からは反発されて2002年にインドネシア・バリ島でオーストラリア人88人が犠牲になるという大規模爆破テロ事件となった。
また、シリア・イラクのIS掃討作戦にも加わったオーストラリアでは、昨年11月にメルボルンで3人が殺傷される事件が発生し、ISが犯行声明を出した。イスラム世界の感情にあまり配慮することなく、米国との軍事同盟を重視するオーストラリアに追随し、有志連合に日本が参加することは、トランプ政権が国連安保理決議に違反してイラン核合意から離脱したこともあって、日本人の安全に決してプラスとはならないだろう。
宮田律 現代イスラム研究センター理事長
1955年、山梨県甲府市生まれ。83年、慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻修了。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院修士課程修了。専門は現代イスラム政治、イラン政治史。「イラン〜世界の火薬庫」(光文社新書)、「物語 イランの歴史」(中公新書)、「イラン革命防衛隊」(武田ランダムハウスジャパン)などの著書がある。
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— 日刊ゲンダイ (@nikkan_gendai) 2019年8月23日
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