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戦争の懸念あちこちに 空々しい「不戦の誓い」セレモニー
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/260317
2019/08/15 日刊ゲンダイ
虚しいワンパターン式辞(C)共同通信社
今年も、この日がやってきた。74回目の終戦記念日となった15日、政府主催の全国戦没者追悼式が開かれ、安倍首相は例年、式辞で「戦争の惨禍を二度と繰り返さない」と不戦の決意を口にする。
だが一方で、歴代首相が表明してきた「深い反省」や「お詫び」の言葉は消え、第2次安倍政権では、首相式辞でアジア諸国への加害責任に言及することがなくなった。「加害と反省」の代わりに「国の未来を切り開く」ことを誓うのが、安倍式辞のパターンだ。
「戦没者を悼むのは当然のことですが、『戦禍に倒れた人たちの尊い犠牲の上に今の日本の平和と繁栄があることに思いを致す』と総括するだけでは、戦争当事国として無責任ではないでしょうか。他国の被害者にも思いを馳せ、反省と謝罪を続けなければ、不戦の誓いも空虚に響くだけです。過去の反省なくして未来を切り開くことなどできません。安倍首相は『歴史と謙虚に向き合う』と口では言いますが、原稿を棒読みしているだけで、まったく心がこもっていない。日本が加害者だったという意識はないのでしょう。侵略ではなく自衛のための戦争だったと本気で信じているのだと思う。歴史に正しく向き合い過去に学ぶ気持ちがないから、隣国に対して居丈高に拳を振り上げる。失政を隠すために外に敵をつくるのは権力者の常套手段ですが、悲惨な戦争の記憶が薄れた国民もそれに安易に乗っかってしまう。非常に危険な最近の風潮です」(政治評論家・本澤二郎氏)
慰安婦や徴用工の問題に端を発し、輸出規制は経済報復合戦にヒートアップして日韓関係はかつてないほどに緊張している。そんな中で迎えた令和最初の終戦記念日。安倍がいくら神妙な顔つきで式辞を読み上げ、世界平和を唱えたところで、実際にやっていることを見れば、不戦の誓いなど心の片隅にもないことは明らかだ。率先して世論の韓国憎悪を煽る首相によって、厳粛な終戦記念日も空々しいセレモニーになり下がってしまう。
広島、長崎も「コピペ原稿」の不誠実
安倍は広島・長崎の式典でも、犠牲者や遺族を侮辱するような言動を続けている。6日の広島市の原爆死没者慰霊式・平和記念式典と、9日の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典でのあいさつが毎回、“コピペ”だと指摘される。広島、長崎の両市長が渾身の式辞を練り上げて、世界に核廃絶を訴えかけるのと対照的だ。
原稿の使い回しは不誠実きわまりないし、本音では戦争や核兵器保持にシンパシーを抱いているのではないかと疑いたくなる。なにしろ安倍は、式典のあいさつで核兵器禁止条約に言及することもやめてしまった。
今年の長崎の式典では、市長が「日本はいま、核兵器禁止条約に背を向けている」と直言。「一刻も早く核兵器禁止条約に署名、批准してください」と訴えた。さらには「何よりも『戦争をしない』という決意を込めた日本国憲法の平和の理念の堅持と、それを世界に広げるリーダーシップを発揮することを求めます」と踏み込んだ。被爆者代表も「米国に追従することなく、核兵器に関する全ての分野で核廃絶の毅然とした態度を」と迫っていた。
憲法を軽んじ、平和の訴えに背を向けるような安倍の姿勢には、国民の多くが苛立ちと不安を強めているのだが、式典後の会見で、安倍は核禁止条約に署名・批准しない考えを改めて示したのだ。
靖国神社も不気味な策動(C)日刊ゲンダイ
大メディアは戦争を美化する首相の言動を指弾しないのか |
広島・長崎の式典を終えた安倍は地元の山口県に帰省。祖父の岸信介と父の安倍晋太郎の墓参りに訪れた。そこで7月の参院選での勝利を報告し、憲法改正を誓ったという。
「参院選で自民党は議席を減らし、改憲発議に必要な3分の2議席も失ったのに、『勝った』と言い張るのは、真っ黒なカラスを真っ白なサギと言うようなもの。それで戦争準備のための改憲をやろうというのだから、どうかしています。第2次大戦後の国際社会は、国連による協調主義を基軸にしてきました。平和が何より大切だという国連憲章の理念と、平和主義を柱にした日本国憲法はセットなのです。平和憲法は戦後日本の原点と言っていい。それをどう変えるのか、中身も言わずに墓前で改憲を誓う安倍首相に対し、大メディアは何の疑問も呈さず垂れ流す。寛容の精神がなく、盲目的に米国に追従するだけの安倍首相による“なし崩し改憲”を許せば、日本はまた戦争の過ちを繰り返すことになる。毎年、メディアはこの時期だけアリバイ的に戦争関連の特集を組みますが、うわべだけの平和論ではなく、戦争を美化し、韓国との対立を煽る現政権の危うさをきっちり指弾すべきです。その程度の言論の自由も失われているとしたら、この国は末期的です」(政治評論家・森田実氏)
終戦の日を目前に、安倍が大戦中の特攻隊を美化する発言をしていたことも分かった。米国のトランプ大統領が自身の資金集めパーティーで明かしたという。
米ニューヨーク・ポスト紙によると、トランプから「カミカゼのパイロットは酔っぱらっていたか、薬物でもキメていたのか」と尋ねられた安倍は、「いや、祖国を愛していたからだ」と答えたとか。トランプは日本なまりの英語で安倍の真似をしながら、父の晋太郎が特攻隊の生き残りだったことにも言及。「愛国心のためだけに片道燃料の飛行機で軍艦に突っ込んでいくと想像してみろ!」と揶揄した。
もはや“戦後”ではなく戦前
「物事には原因と結果がある。原爆や戦争の惨禍という結果を8月15日に語り継ぐことは重要ですが、多くの国民が戦争の犠牲になった原因を考える必要もあります。特攻隊が国のため、天皇のために喜んで命を捧げたと、安倍首相は本気で思っているのでしょうか。それが、彼の言う『美しい国』なのか。為政者の独善や、国家主義のナルシシズムを許したら、この国はまた同じ過ちを繰り返すことになる。今年の戦没者追悼式には新天皇が初めて参列しますが、安倍政権も、支持基盤の右派も、天皇の政治利用をいとわないから心配です。あの手この手で天皇を懐柔しようとしていくでしょう。戦前回帰を望む安倍政権という危険な要因を取り除かないと、確実に戦争という結果が待っている。この国は抜き差しならないところまで来ています」(本澤二郎氏=前出)
靖国神社が昨秋、当時の天皇陛下(現上皇)に神社創立150年に合わせた参拝を要請をしていたことが共同通信の取材で明らかになったばかりだ。宮内庁が門前払いしたのは英断というべきだろうが、“戦後”の常識が通用しない世の中になってきた。
参院選では、安倍の街頭演説にヤジを飛ばした一般国民が警察に強制排除されるケースが全国で相次いだ。公権力の介入で芸術イベントの「表現の不自由展」が中止になるなど、表現の自由も目に見えて脅かされている。そして、ホルムズ海峡の有志連合への参加を求める米国からの圧力――。自由にモノも言えず、戦争に巻き込まれる可能性を誰も否定できない。それが“戦後”の社会の姿なのか? むしろ戦争前夜という言葉こそふさわしいのではないか。
平成は戦争がない時代だった。終戦の日に昭和の戦争を振り返っていられたのは平和の証しだったのかもしれない。歴史に向き合おうとしない首相が長期政権で改憲をもくろみ、戦後日本の平和主義は追い詰められている。令和が戦争の時代になる懸念を拭えない不穏な終戦記念日である。
日刊ゲンダイ
— 但馬問屋 (@wanpakuten) 2019年8月15日
【終戦記念日という空々しいセレモニー】
『令和は戦争の時代になる懸念』
「戦後最悪の日韓関係の緊張の中、ワンパターン首相式辞の虚しさ」
「表現の自由への公権力介入、安倍批判の強制排除、拡大する韓国憎悪の世論、なし崩し改憲宣言、米国からの戦争参加圧力…」
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戦争の懸念あちこちに 空々しい「不戦の誓い」セレモニー https://t.co/LXrkSGx3hX #日刊ゲンダイDIGITAL
— ie1230 (@ie1230) 2019年8月15日
【令和は戦争の時代になる懸念】終戦記念日という空々しいセレモニー 戦後最悪の日韓関係の緊張の最中、「二度と戦争を繰り返さない」「歴史と謙虚に向き合う」などワンパターン首相式辞の虚しさ もはや戦後≠ナはなく戦前 大メディアは戦争を美化する首相の言動を指弾しないのか(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/Ybg8uATDwh
— KK (@Trapelus) 2019年8月15日
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