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新たな対立の時代に世界は入りつつある。国益を声高に追求する自国中心主義が米国や中国、ロシア、欧州などに広がる。歴史が逆流するかのように、ポピュリズムやナショナリズムが世界を蚕食しているように見える。
悲惨な戦争を経て歴史がようやく手にした国際協調主義を思い起こすべきだ。一つの時代を想起したい。第1次世界大戦が終結し、第2次世界大戦が始まるまでのおよそ20年間。英国の歴史家E・H・カーが「危機の20年」と呼んだ「戦間期」だ。
史上初の総力戦となった悲惨な大戦を経て、欧米を中心に平和を求める切実な声が強まった。誕生したのが初の国際機構である国際連盟。さらには、紛争の解決を平和的手段によるとした不戦条約もこの時代に成立した。
「力による支配」から「法による支配」を目指し、国際秩序の維持に関する各国の基本的な考え方が大きく転換した。国家間の紛争解決は戦争に訴えるのではなく、国際会議や裁判によって国際協調を追及し、世界平和を実現しようとする試みだ。
歴史のかなたにかすんでいるが、この時期のある日本人の貢献を忘れてはならないだろう。国際連盟の常設司法裁判所の所長を務めた安達峰一郎だ。山形県出身の安達は外交官を経て、国際連盟の理事会や総会で活躍、アジア人で初の裁判所長となった。
欧州の少数民族や国境画定の調停などに傾注し、その公平な態度と熱意は各国から絶大な信頼を得たという。所長就任から間もなく、満州事変や日本の連盟脱退通告などで心労がたたり、オランダで没した。国際平和のために奔走した生涯だったという。
その安達が賛意を惜しまなかったのが不戦条約だ。国際協力の一つの頂点とされる同条約は、締約国による紛争解決のための戦争を非とし、国策としての戦争の放棄を定めた。その精神は現在の日本国憲法に引き継がれている。
条約に対する評価は現在でも「世界的な政治協定として画期的だった」というのが一般的であり、原締約国に続く追加加入を含めて80カ国近い賛同を得た。罰則がなく戦争防止の手段としては不完全だったが、条約の趣旨は後世に大きな影響を与えている。
現在の世界を見れば、米国が「アメリカファースト」を叫び、中国は「核心利益」を主張して領土的野心を隠さない。欧州は移民への反発から国益重視にかじを切った。ロシアは力による現状変更の態度をあらわにしている。
各国に国益があるように国際社会には公益とも言える全体としての利益がある。そして、どの国にとっても平和と安全、それによる繁栄以上の国益は存在しない。人権の擁護や法の支配など普遍的な価値が定着している日本は、歴史を踏まえ、進んでそのことを語らなければならない。
河北新報社説 2019年08月15日
https://www.kahoku.co.jp/editorial/20190815_01.html
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