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2019/8/14 社説
「森友学園」への国有地売却や財務省の文書改ざんをめぐる大阪地検の捜査は再び「不起訴」で幕引きになった。市民の検察審査会が「言語道断」と指弾した問題だ。国会での追及は続けるべきだ。
市民十一人でつくる大阪第一検察審査会が佐川宣寿(のぶひさ)元財務省理財局長ら十人を「不起訴不当」と議決したのは今年三月だ。それを受けての大阪地検の再捜査だったが、結論はやはり「不起訴」だ。
「起訴するに足りる証拠を収集できなかった」と説明したが、納得はできない。検察もまた政権に忖度(そんたく)か、政治判断かと、国民の間で疑念が広がろう。
国有地を学園に八億円余り値引きして売却した理由も経緯も不明なままの捜査の幕引きだからだ。値引きの根拠となった国有地のごみ撤去費の積算額が不適正と認定できるかが焦点だった。
どんな再捜査が行われたのかも国民に不明なままでは、その捜査自体が公正であったかも疑われてしまう。
とくに国有地で開校予定だった小学校の名誉校長に安倍昭恵首相夫人が一時、就任していた。財務省近畿財務局などで作成された文書では十四件の改ざんが行われ、昭恵夫人の名前や「特例的な内容」などの文言が削除された。交渉記録の廃棄まで行われた。
極めて悪質な事案だったといえる。検審は「文書を改ざんする行為は一般市民感覚からすると、いかなる理由があっても許されない」と厳しく批判した。当然の不信であり、怒りの言葉だった。
財務省でさえ調査報告書で認め、佐川氏ら二十人を処分している。いわば証拠がそろった状態なのに、これを不問に付す検察とは何なのか。
「特捜検察は解体すべきだ」などと刑事告発した弁護士らは口にしている。不起訴ありきの国策捜査なら、検察は自ら国民の信頼を失墜させている。
市民の代表である検審が求めたのは、起訴して公開の法廷で白黒つけることでもあった。その意思さえ踏みにじったに等しいではないか。
行政の公平性がゆがめられたのか、国会でウソの答弁がまかり通ったのか、忖度が行政をむしばんでいるのか…疑念は民主主義社会の根幹をも揺るがしている。
真相解明が果たされぬままでは、国民の「知る権利」も毀損される。幕引きは許されない。国会が頬かぶりしたら、行政ばかりか政治への信頼も失われてしまう。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019081402000154.html
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