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捜査尽くしたか 森友問題「終幕」相次ぐ疑問、怒りの声
https://digital.asahi.com/articles/ASM895DWVM89PTIL01P.html
2019年8月9日22時14分 朝日新聞
再び不起訴処分の判断を受け、会見する阪口徳雄弁護士(右)=2019年8月9日午後5時5分、大阪市北区、井手さゆり撮影
森友学園問題の経緯
学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、元財務省幹部らが再び不起訴となり、一連の捜査が終結した。捜査は尽くされたのか。国民への説明は十分なのか。関係者からは怒りや疑問の声が相次いだ。
会見する阪口徳雄弁護士(右)と愛須勝也弁護士=2019年8月9日午後5時13分、大阪市北区、井手さゆり撮影
「再度の不起訴処分は極めて遺憾。非常に怒りを持っている」
公文書の改ざんを主導したとされる佐川宣寿(のぶひさ)・元財務省理財局長らを告発した阪口徳雄(とくお)弁護士らは9日午後5時すぎ、大阪市北区で会見を開き、検察への憤りをあらわにした。
阪口弁護士は、財務省を強制捜査しなかった点について「組織的な犯罪は、強制捜査抜きには真相の解明はできない。捜査しようという気迫が感じられなかった」と嘆いた。
同じく佐川元局長らを告発していた上脇博之・神戸学院大教授も取材に対し、「権力犯罪の真相を解明するため、起訴すべきだった。これが不起訴であれば、簡単に公文書の改ざんや廃棄ができるようになる」と話した。
国有地取引の舞台となった地元で早くからこの問題を追及してきた大阪府豊中市の木村真市議は「悔しいし、納得できない。政権への忖度(そんたく)があったのかもしれない」。
木村氏は、財務省近畿財務局の職員(氏名不詳)を大阪地検に告発し、検察審査会の議決後も起訴を申し入れた。学園への国有地売却額などを一時不開示とした国に損害賠償を求める訴訟を起こして一部勝訴。大阪高裁に控訴しており「財務省担当者の出廷を求めるなどして、国有地取引の背景に何があったのか真相を解明したい」と力を込めた。
佐川元局長らを告発し、最高検に厳正な捜査の指導を求めていた醍醐聡・東大名誉教授らもコメントを発表。「参院選が終わったこのタイミングで不起訴処分の決定を発表したのは、安倍首相夫妻が深く関与した本件を、出来レースの国策捜査で幕引きしようとするものにほかならず、検察に対する国民の信頼を失墜させる」などと批判した。(野田佑介、米田優人、波多野大介)
近畿財務局OB、同僚の死「浮かばれない」
近畿財務局OBの喜多徹信さん(70)は、元同僚職員が改ざんを苦に自殺したとされる問題に触れ、「死んでしまった職員が浮かばれない。本当に森友問題はこれで終わりでいいのか。国会でまだまだ議論を続けてほしい」と求めた。
3月の検察審査会の議決は、改ざんは「一般市民感覚からすると、いかなる理由があっても許されることではなく、言語道断の行為」とし、財務省幹部について「不起訴不当」とした。喜多さんは「市民がまっとうな判断をしてくれた。再捜査して公判で真相を解明してほしい」と訴えていた。
それだけに、大阪地検が「起訴するに足りる証拠を収集することができなかった」と結論づけたことについて「土地取引については籠池さん自身が詳しく話している。改ざんは財務省自身が調査で認めている。証拠が足りないというのは納得いかない」と述べた。(一色涼)
理財局幹部「疑問、みんな思っている」
学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却や財務省関連文書の改ざんなどをめぐる問題で、佐川宣寿(のぶひさ)・元財務省理財局長ら10人全員が再び不起訴処分となったことについて、財務省は9日、「検察当局の捜査の結果としての判断であることから、財務省としてコメントすることは差し控えたい」との談話を出した。
財務省幹部の一人は「不起訴だからといって一喜一憂しない。多くの職員はまじめに仕事に取り組んでおり、信頼回復に努めていくだけだ」と淡々と話した。
財務省は昨夏以降、不祥事からの立て直しをめざして、改革に取り組んできた。今夏の定期異動後には、新たに課長補佐級の職員を「主任文書管理担当者」として配置するなど文書管理の体制を整えた。法令順守やハラスメントに関する研修も継続的に行い、問題の背景にあったとされる「上意下達の文化」の改善を図っている。
取り組みの進み具合をチェックする、外部有識者会議の「財務省再生プロジェクト推進会議」も設置。コンプライアンスに詳しい弁護士や企業経営の専門家ら3人をメンバーに迎え、今年7月に発足させた。財務省理財局の幹部はこうした取り組みについて、「上司に意見をしやすくはなっているし、改革は実感できている」と話す。
ただ、複数の職員から聞かれるのは、森友問題が生じた直接の原因に迫れていないとの思いだ。同じ理財局の幹部は「『どうしてそういうことになったのか』という疑問は、みんな思っている」と話す。(岩沢志気)
予定地にそのまま残る建物
2017年2月に不透明な国有地取引が発覚して2年半。大阪府豊中市にある国有地(8770平方メートル)には今も、小学校の校舎や体育館になる予定だった建物がそのまま残っている。
瑞穂の國(くに)記念小學(がく)院――。敷地北側の建物の壁には、そう刻まれている。鮮やかだった壁面の朱色は風雨にさらされてくすみ、工事資材は置きっぱなしだ。
近所の主婦(38)は「建物は使われておらず、雑草が茂っていて不気味。いつまでこのままなのかしら」と建物を見上げた。
森友学園は同年3月、小学校の設置認可の申請を取り下げた。国は土地を学校用地にする条件で売却したため、同年6月に買い戻して再び国有地に。更地にして戻す契約だったが、学園に資金的余裕はなく、建物はそのまま残っている。
建物を建てた業者は「学園から工事費の支払いを受けていない」として、建物や土地を自らの管理下にとどめ置く権利などを主張。土地を所有する国土交通省は、更地を基本姿勢としつつ「建物をどうするのかは検討中」との立場だ。
近くに住む有友耕二さん(72)は「早く更地にして公園にして欲しい」と話す。航空機の騒音対策や土地区画整理事業で住民は移転した。有友さんもその一人で、跡地は公園になると聞いていたという。「いつの間にか小学校の話が持ち上がり、住民は振り回された。なぜ8億円も値引きされたのか。検察には問題の背景をきちんと捜査し、責任を追及してほしかった」(吉村治彦)
佐川宣寿氏、取材に応じず
公文書の改ざんや廃棄を主導したとされるのは、当時の財務省理財局長佐川宣寿(のぶひさ)氏だ。しかし佐川氏は、国会の証人喚問などで「刑事訴追の恐れ」を理由に詳しい説明を避けてきた。捜査終結を受け、朝日新聞は佐川氏の自宅を訪ねたが応答はなかった。
佐川氏は公文書改ざん発覚後の昨年3月、国税庁長官を辞任した際の会見で文書改ざんについて問われ、「捜査を受けているのでコメントを差し控える」として回答しなかった。その後の証人喚問でも「刑事訴追の恐れがある」などとして40回以上にわたって証言拒否を繰り返した。同年6月に公表された同省の調査報告書では改ざんや廃棄の「方向性を決定づけた」と認定されたが、報告書の内容からは、佐川氏がなぜ、どのような指示を出したのかといった動機や経緯は不明なままとなっている。
朝日新聞は7月末、佐川氏の自宅に一連の問題の経緯や理由を尋ねる質問状を内容証明郵便で送ったが、受け取りを拒否された。(久保田一道)
籠池泰典被告「首相を守るため忖度」
「元々、検察は何もやる気がなかった。結論ありきの国策捜査だった」。詐欺などの罪で大阪地裁で公判中の森友学園前理事長、籠池泰典被告(66)は、当時の財務省幹部らを再び不起訴とした検察の処分に憤りをあらわにした。
籠池被告は2017年6月に自宅などの家宅捜索を受け、その後、逮捕・起訴された。「私と家内の逮捕は、目くらましや口封じのため。財務省の問題こそが本丸で、財務省も捜索すべきだった」と主張した。
新設予定の小学校の名誉校長には一時、安倍晋三首相の妻昭恵氏が就任していた。大幅値引きが発覚した後、財務省が昭恵氏の名前を削除するなど決裁文書を改ざんしていたことも判明した。籠池被告は「財務省の役人を守らないと官僚から反乱が起きかねない、と検察は考えたのではないか。安倍首相を守るために忖度(そんたく)した判断だ」と訴えた。
元検事の落合洋司弁護士の話
起訴の可能性を感じていたからこそ、長く引っ張って捜査したのだろうが、検察の現在の仕組みでは「100%不起訴になる」と予想できた。捜査を尽くして1度不起訴になったものを、新しい証拠もなく起訴するのは難しく、やむを得ない。ただ、制度上の問題は浮き彫りになった。一つの行政機関である検察の判断だけで、多くの国民が疑問を持つ事件が裁判にかけられなくていいのか。
決裁文書を300カ所も改ざんしているのだから、不起訴に納得がいかない国民がいるのは当然だ。大幅な値引きといえ、背任容疑についても疑われていた。報道などで明らかになっている事実関係を見ても、国に大きな損害を与えたのに誰も責任を問われないのはどうか。裁判で審理が尽くされて無罪になるならやむを得ないが、どんな経緯で不起訴になったかわからない「ブラックボックス」では国民の納得は得られない。
川崎英明・関西学院大名誉教授(刑事訴訟法)の話
検察審査会が「不起訴不当」とした議決に対し、大阪地検はどんな捜査をして不起訴を維持したのか。判断に至った理由を具体的に説明しなければ、十分な捜査を尽くしたのか疑問を持たざるを得ない。
文書改ざんの前後で、公文書の意味合いはどう変わったのか。8億円の値引きは適正かどうか。事実関係の解明は不十分だ。
刑事裁判には「疑わしきは被告人の利益に」との原則があり、もともと刑事責任の追及には限界がある。一連の問題に国民は不信の目を向けている。国会は「行政の公正性」の観点から、憲法に基づく国政調査権を活用して関係者らを聴取し、真相究明すべきだ。
公文書改ざん、こういう結末ですか。
— 朝日新聞佐賀総局(カチロー) (@asahi_saga) 2019年8月9日
捜査尽くしたか 森友問題「終幕」相次ぐ疑問、怒りの声:朝日新聞デジタル https://t.co/36DsmCPgAA
阪口徳雄弁護士「組織的な犯罪は、強制捜査抜きには真相の解明はできない。捜査しようという気迫が感じられなかった」
— 赤旗日曜版Uスタ (@akahatausta) 2019年8月9日
上脇博之・神戸学院大教授「権力犯罪の真相を解明するため、起訴すべきだった。これが不起訴であれば、簡単に公文書の改ざんや廃棄ができるようになる」 https://t.co/wyoiTfzHnM
上脇博之・神戸学院大教授「権力犯罪の真相を解明するため、起訴すべきだった。これが不起訴であれば、簡単に公文書の改ざんや廃棄ができるようになる」https://t.co/oVYzpFyqBm
— 福地慶太郎(朝日新聞記者) (@kei_fukuchi) 2019年8月9日
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