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求心力維持に躍起 安倍首相のできもしない「改憲妄想」
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/259017
2019/07/25 日刊ゲンダイ 文字起こし 本当は苦しい(C)日刊ゲンダイ 参院選が終わった途端、安倍首相が「改憲、改憲、改憲」と前のめりなのは焦りの裏返しだ。 「少なくとも議論すべきだというのが国民の審判だ。野党は民意を正面から受け止めて欲しい」という22日の記者会見での発言は、苦し紛れの詭弁。「自民党案だけにとらわれない」「(2020年新憲法施行目標の)スケジュールにはこだわらない」と与野党に呼びかけたのも、自民党だけではどうにもならないつらさを物語っている。 一体、「改憲を議論すべき」のどこが民意なのか。 自公の与党に日本維新の会を合わせても、参院選で獲得した議席は改憲発議に必要な3分の2(85議席)に達しなかったし、そもそも自民党は改選前から9議席もの大幅減だ。単独過半数も失った。全有権者に占める得票割合である「絶対得票率」は18.9%でしかなく、支持は2割にも達していないのだ。それで「改憲に信任」とはよく言えたものだ。 選挙後の22、23日に実施された世論調査でも、安倍政権の下での改憲に「反対」が「賛成」を上回っている。朝日新聞の調査では反対46%、賛成31%。共同通信でも反対56.0%、賛成32.2%だった。重視する政策で「改憲」は、朝日3%、共同6.9%とわずかしかなく最下位で、自民党支持者や安倍内閣支持層ですら同4%、同8.4%に過ぎない。つまり、世論は改憲などまったく求めていないのである。 だから安倍が「改憲も大きな争点となった」と言い切ったことに、公明党の山口代表から「争点設定が国民に伝わっていない。議論すべきだと受け取るのは少し強引だ」と批判されるわけである。 その公明党も改憲にはもともと消極的で、参院選結果を受け、ますます態度を硬化させそうだから安倍にとっては泣きっ面にハチ、だ。 「メディアはみな判で押したように自公維を『改憲勢力』としていますが、公明の山口代表は『我々は加憲』だとして『改憲』でひとくくりにされることに抵抗してきた。公明が本当に改憲勢力なのか、私は疑問です。参院選で公明は、選挙区と比例でともに7議席を獲得し、目標をクリアしたものの、比例は全国で653万票で、3年前から100万票も減ってしまった。基礎票とされる700万票を、一昨年の衆院選に続き、今回も割り込みました。これ以上、組織を弱体化させないため、福祉や平和の党に原点回帰せざるを得なくなるでしょう。 安倍首相は国民民主党に秋波を送っていますが、最も改憲にNOなのは足元の公明ですよ」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏) 自民は参院で単独過半数を失い、普通の法案を通すのすら公明の協力が必要。安倍は難しい政権運営を迫られる。そんな中で「改憲に信任」とは妄言妄想の類いでしかない。 この2人が野党のキーマン(C)日刊ゲンダイ
それでも安倍が「改憲」で強がるのは、レームダック化を隠すのに必死だからだろう。 安倍が改憲に固執するのは、祖父・岸信介の成し得なかった“遺志”を引き継ぐという執念であり、憲法9条を書き換えることは、安倍にとって第1次政権時代から続く悲願だ。 「これが実現できなければ、もはや安倍さんが首相の座に居続ける意味がなくなる」(自民党のベテラン議員)ため、首相を辞めない限り、「ヤルヤル詐欺」じゃないが、「改憲」を目指し続けるしかないのである。 「9月にも内閣改造が行われる」だとか、「参院選の勢いのままに秋解散か、年末解散」といった情報が流されるのも、政権の求心力維持が目的だろう。 安倍本人も22日の会見で、「解散は今、全く考えていないが、あらゆる選択肢を排除しない」といかにも思わせぶりだった。そして、大マスコミがこれに乗っかって、垂れ流し、話題作りに一役買っている。 改憲にしても、大メディアは安倍の意欲をそのまま報じるだけ。世論の望まない改憲など決して実現できないことを、どうしてもっとハッキリ書かないのか。安倍の応援メディアに至っては、「(世論調査で)改憲議論に『期待』66%」「参院当選者 改憲賛成61%」(いずれも24日の読売新聞)と盛り上げようとしているのだからどうしようもない。日経新聞も24日、「18〜30代だけなら改憲勢力3分の2超」という大見出しの分析を報じていたが、そこにどんな意味を見いだしたいのか。 もっとも、いくら大メディアが応援しても、内閣改造・党役員人事が終われば、安倍の求心力低下は避けられない。 政治評論家の野上忠興氏はこう言う。 「安倍首相が『改憲』にこだわるのは、右派のコアな支持者の求心力を維持し続けたいからでもあります。それだけ党内外での人心が離れるのを恐れている。安倍首相は表で強気の発言をする時ほど、内面でガクッときているものです。4選なんて話がありますが、今度の改造を最後と受け止めている自民党議員は少なくありません。求心力は間違いなく低下するでしょう。それを少しでも避けるため、今後もアノ手コノ手で解散カードをチラつかせるのではないか。追い込まれている証左です」
だが、早期解散なんてやれるのか。参院選の結果で注目すべきは、自民は240万票減、公明は100万票減と、3年前より比例票を大きく減らしているのに、野党はほぼ横ばいだったことだ。 立憲民主と国民民主の比例票の合計は1139万票で、3年前の民進党が取った1175万票とさほど変わらない。ゆ党の維新を除く野党の合計でも2019万票で、3年前の2037万票とほぼ同じなのだ。 自民は鬼門の東北1人区で2勝4敗だったが、24日の朝日新聞が興味深いシミュレーションを行っている。<32の1人区で野党統一候補の得票が、協力関係にあった野党各党の比例票の合計より14%多かった>というのである。 協力関係にあった野党とは、立憲民主、国民民主、共産、社民、れいわ新選組のこと。きっちり手を組んで応援し合えば「共闘効果」による票の上乗せ効果は明確で、特に愛媛88%増、滋賀46%増、秋田41%増など野党候補が勝利した選挙区ほど効果が大きかった。 これを衆院の289の小選挙区に置き換えると、当選者は、与党(自公)191、野党79、維新19となり、17年衆院選に比べ与党は35議席減らし、野党は20議席増えるという。 1対1の対決なら野党が結束すれば与党に負けないと言われてきたが、やはりそれはクッキリで、次の解散総選挙で野党が本気で共闘すれば、安倍政権は野垂れ死にだ。 立憲の枝野代表が共闘よりも自党の躍進を優先してきたから、参院選では“この程度”の共闘効果だったが、今後はれいわが本格的に加わる。山本太郎代表が参院選同様の“捨て身”の本気度を見せ、野党が一致団結して政権奪取に動けば、小選挙区の衆院選はオセロのように白黒が入れ替わるだろう。前出の鈴木哲夫氏が言う。 「今度の参院選で、れいわの山本代表は『野党をひとつにまとめる』という点で既存野党の尻を叩いた。立憲や共産の候補者とともに街頭に立ち、結果、立憲の宮城の候補は当選しました。これは本来、野党のリーダーとして立憲の枝野代表がすべきことで、山本代表がその手本を示したようなものです。立憲と国民で2位争いをするなんてバカげている。相手は自公です。野党共闘に成果があることがハッキリ分かったのですから、衆院選に向け、早く具体的に進めるべきです」 その通りで、野党が選挙に備えて固まれば、負けるのが怖くなって安倍は解散できなくなる。自民党内の求心力維持のためのブラフも通用しなくなって、自壊の道へまっしぐらだろう。
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