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低投票率の裏に安倍政権、吉本、テレビの癒着と茶番
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/258956
2019/07/24 日刊ゲンダイ 文字起こし 実態は敗北!(安倍首相)/(C)日刊ゲンダイ 「終わったぁ〜」。5時間半に及ぶ質疑応答の後、取材記者からこんなため息交じりの声が漏れていた。22日行われた、闇営業問題を巡る所属芸人のゴタゴタを受けて報道陣の前に姿を現した吉本興業の岡本昭彦社長の会見。 23日のテレビは朝から晩まで会見の様子を繰り返し報じ、さながら“祭り”状態だった。〈岡本社長、パワハラ発言を否定〉〈要領を得ず、かみ合わない質疑応答〉……。どの局も岡本社長の発言を細かく取り上げ、それについてコメンテーターがしたり顔で、あ〜だ、こ〜だと、感想を漏らす。 フジテレビに至っては裏番組である日本テレビ「スッキリ」のMCを務める吉本所属「極楽とんぼ」の加藤浩次の発言を手書きしたフリップを掲げ、「加藤さんは、(今)こう言っている」などと“生中継”していたから、いくら何でもやり過ぎだろう。 今回の問題は極論すれば、単なる一企業の人事、報酬、雇用形態の契約を巡る労働争議、内紛劇といっていい。双方ともに言い分があるのであれば、裁判の場で堂々と決着をつければいいし、他の労働争議と同様にテレビも淡々と伝えればいいだけだ。「国民の資産」である公共電波を使って朝から晩まで時間を割くほど、国民生活にとって深刻かつ不可欠なニュースなのかといえば、そんなことは全くない。 今のテレビ報道は中国、北朝鮮よりもひどい状況 おかげで、少なくとも吉本内紛劇よりもよっぽど国民生活にとって重要である参院選挙の報道はすっかりかき消されてしまった。吉本芸人が投開票日前日に「辞める」と涙の会見を開き、投開票日翌日に社長が「処分を撤回する」と言って、これまた涙の会見を開き、それぞれの模様をテレビが生中継し、大々的に報道する。おそらく、「選挙報道に隠れて扱いはチョボチョボだろう」とタカをくくっていた吉本の芸人、社長自身がテレビの扱いに一番驚いているのではないか。 吉本内紛劇が直撃したのが参院選だろう。総務省によると、参院選の投票率(選挙区)は48.80%で、1995年参院選の44.52%に次ぐ低さ。投票率が5割を切るのは戦後2回目で、テレビは「今年は統一地方選と参院選が重なる12年に1度の亥年選挙のため、選挙疲れが低投票率につながった可能性がある」などと解説していたが、そうじゃない。選挙期間中に各政党や候補の主張をマトモに取り上げも分析もせず、投開票日に撮りためておいた録画を洪水のように流すテレビが「盛り上がりに欠けた」と他人事のように言えるのか。選挙前に毎日30分でも1時間でも、投開票日のような報道をしていれば投票率は変わっていたに違いない。有権者の関心の低さばかりを強調し、自分たちの報道姿勢には何ら問題ナシと考えているのであれば全くフザケた話だ。元共同通信記者でジャーナリストの浅野健一氏はこう言う。 「自民党の萩生田幹事長代行は過去に民放各社に対して、選挙時期における報道内容に注文をつける文書を出し、高市衆院議院運営委員長も、総務大臣の時に『政治的公平性を欠く放送には電波停止を命じる可能性がある』と踏み込みましたが、テレビはこの『誤った公平中立』に縛られて選挙報道を自粛したのでしょう。その一方で、自民党のCMは大量に流していたから支離滅裂。もはやテレビは政権の一部機関と化している。中国や北朝鮮よりも酷い状況です」 ウソから始まった(闇営業に関する一連の騒動で謝罪会見をする宮迫博之=左、と田村亮)(C)日刊ゲンダイ
「(岡本社長から)在京5社、在阪5社のテレビ局は吉本の株主だから大丈夫」――。吉本芸人が会見でこう明かしていたが、そもそもテレビは吉本の大株主であり、「客観的な第三者」とは言い切れない。ギャラ問題にしても、吉本芸人の取り分はスズメの涙もない、ピンハネされているのではないか、といった話はテレビで散々、報じられてきたし、芸人自身も一種のネタにしてきた。 つまり、吉本芸人のカネや雇用形態を巡る問題は今に始まったことじゃない。むしろテレビはそれを承知の上で吉本の大株主となり、今や“視聴率が見込めるブランド”となった「吉本芸人」という「商品」を深夜番組などに積極的に起用して安くコキ使ってきたのだ。いわば吉本とテレビは一心同体。岡本社長の「株主だから大丈夫」という発言も、うがった見方をすれば「謝罪会見なんて開かなくてもテレビは仲間だから」と暗に示唆したとも受け取れる。 そんな吉本とズブズブの関係にあるテレビが連日、パワハラ社長叩きに明け暮れているのだから笑止千万。そんなヒマがあったら、自民党の大量の選挙CMのカネは一体、どこから出たのか、あっと言う間に4億円ものカネを集めた「れいわ新選組」の山本太郎代表の演説は、どこが聴衆を引き付けたのか――を調査、解説した方が、公共電波の使い方としてずっと正しいだろう。元NHK政治部記者で評論家の川崎泰資氏がこう言う。 「NHKをはじめ民放は異常な吉本叩きを繰り返しているが、力とカネを持った政権に唯々諾々と従っているのは他ならぬテレビです。本来であれば参院選も選挙前から投開票日のようなキメ細かな報道をするべきだった。そうすれば結果は随分と変わったと思います。今のような状況だと選挙報道自体が見向きもされなくなるでしょう」 吉本の過剰報道は自民単独過半数割れの目隠し 「ファミリーなのに……」「疑似家族や仲間……」。会見で吉本芸人や岡本社長が度々、口にした言葉だが、社員を家族やきょうだい、仲間などという企業ほどロクなところはない。発言のウラには、総じて家族なんだからガタガタ言うな、というパワハラの意思が込められているケースが少なくないからだ。 元検事の郷原信郎弁護士は23日付のブログで〈吉本では、芸人・タレントをテレビ等に出演させる際に、契約書を全く作成しないということなのであるから、下請法3条の発注書面交付義務違反となる可能性がある。(中略)このような違反に対しては刑事罰の適用が検討されることになるだろう〉と断じていた。 要するに今の吉本の姿勢はヤクザ組織と変わらないワケで、問題なのは、そんな怪しい会社を側面支援しているのが安倍政権だということだ。安倍首相は4月、大阪市にある吉本のお笑い劇場「なんばグランド花月」の舞台に現役首相として初登壇したほか、吉本芸人と官邸で面会して写真撮影するなど「蜜月ぶり」をアピール。第2次安倍政権発足後の13年に設立され、政府が約586億円出資する官民ファンド「クールジャパン機構」は、吉本が参画した新会社が手掛ける「教育事業」へ最大100億円も出資するというからクラクラしてくる。 消費増税や年金資金のバクチ投資など、国民生活を徹底的に破壊する安倍政権と、その国民愚弄政権の「パンとサーカス」政策に加担するテレビと吉本――。参院選の低投票率はこの「三位一体の構造的闇」によってもたらされたのも同然で、これでも民主主義国家と言えるのか。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。 「今度の参院選で自民党にとって衝撃だったのは議席が単独過半数割れしたということ。つまり、消費増税を含め、選挙で訴えた政策に『NO』を突き付けられた証左であり、公明党にはこれまで以上に配慮せざるを得なくなった。テレビはそこをきちんと報じるべきなのに、ほとんど取り上げていない。吉本問題を淡々と報じず、過剰に大騒ぎしているのも、安倍自民党に対する批判をそらすために忖度報道していると受け取られても仕方ないでしょう」 いよいよこの国が壊れる景色が近づいてきた。
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