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こちら編集部
選挙なのに、この気味の悪い静けさは何だ
2019年7月17日
By マガジン9編集部
朝、NHKを見ていたら、ニュース速報が流れた。「なにごと?」と見れば「ハンセン病患者家族訴訟、控訴せずと、安倍総理が決断」みたいなテロップが。あれ? 今朝の新聞の見出しでは「控訴へ」となっていたけれど……。テレビ画面は「総理大臣の緊急発表」へと画面が切り替わり、「人権に配慮した総理の異例の政治判断」をライブで伝え、スタジオの記者は「安倍さん、よくぞ決断しましたね」的なコメントを、大まじめに流す。ああ、またか……。
テレビはこういう「印象操作」は平気でやるが、参議院選挙を巡って街頭やネット上で何が起きているかは、まったく報じない。「れいわ新選組」が、3億を超える寄付を集めたこと、候補者の異例の顔ぶれと意表を突く選挙戦略、街頭演説の熱気など、それ自体が事件であり、社会現象であり、ニュースそのものじゃないか。ワイドショーネタとしてもおもしろく、視聴率がとれること間違いなし。なのに、れいわの“れ”の字も山本太郎の“や”の字も出さないと、ダンマリを決め込んでいる。政党要件を満たしていないから? 横並びの暗黙の協定? 自粛、忖度、同調圧力?
どこのチャンネルも各党の政策一覧、比較のような解説はやるけれど、テレビならではの生き生きとしたライブ映像がない。素顔が見えず肉声が聞こえず、熱気も伝わらない。押し黙ったようなこの静けさは何なのだ。気味が悪い。
そのくせ「どこよりも早い当確」を競う開票特番の番宣はうるさいくらい。特番ではきっと密かに撮りだめた「れいわ」がらみの映像を一気に放出するのだろう。終わってからでは遅い! 放映するのは、今だろう!
選挙は祭りだ。テレビのキャスターはスタジオを飛び出し、街頭演説の輪に飛び込んで、候補者や聴衆にマイクを向け、編集なしで肉声を伝えて欲しい。
昔のテレビはもっと勢いがあった。あくまで私個人の記憶だが、久米宏や筑紫哲也が現役だった頃のニュース番組では、選挙ともなればお祭り騒ぎだった。硬軟取り混ぜ、さまざまな角度から争点を俎上に載せ、候補者を追いかけた。スタジオは喧々囂々、自由な意見が飛び交った。政党要件を満たしていようがいまいが、泡沫候補であろうが、おもしろおかしく取り上げた。オウム真理教の奇っ怪なパフォーマンスが広く知れ渡ったのもテレビを通してだった。良くも悪くもそれは政治ニュースという枠を超え、エンターテイメントとして大いに楽しめた。もうすぐ選挙だというザワザワした空気は、主権者ひとりひとりに染み渡っていたと思う。
テレビ離れと言われるが、それでも世の中の空気を作るのにテレビの力は圧倒的だ。ネットの中でいかに盛り上がろうと、パソコンやスマホにうとく、新聞・テレビしか見ない人は、「れいわ」の存在すら知らない。投票率と自民党の議席数は逆比例するとか。主権者の半分近い無党派層が「今度の選挙、おもしろそう」と思えば、世の中変わる。
(田端 薫)
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