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7月 19, 2019 日々雑感(My impressions daily)
<野党側が実質賃金低下を指摘する度に安倍総理が持ち出すのが「総雇用者所得」、すなわち雇用者の賃金の総額である。確かに総雇用者所得は増えているが、その理由は単に「雇用者が増えている」から。数が増えたから総額が増えるのは当然だろう。
なんと、医療・福祉が2位以下を大きく引き離してぶっちぎりの1位だ。125万人も増えていて、2位と3位を合わせた数よりもなお多い。これは明らかに高齢者の増大が影響しているので、アベノミクスとは無関係。
2位の卸売業・小売業も、円安によって恩恵を受けるわけではないし、原材料費の高騰や記録的な消費低迷からするとむしろ害を受ける方なので、アベノミクスとは無関係。
3位の宿泊業・飲食サービス業のうち、宿泊業は円安による外国人旅行客の増加で恩恵を受けるかもしれない。しかし、飲食サービス業は原材料費高騰や消費低迷の影響を大きく受けるので、アベノミクスとは無関係。
4位の製造業はアベノミクスの影響といってよいだろう。5位以下は基本的に国内需要に頼るものばかりなので、これもアベノミクスとは無関係。
アベノミクスがしたことは、要するに「円の価値を落とした」だけ。これと因果関係がなければ「アベノミクスのおかげで雇用が増えた」とは言えないのだ。
このように「増えた雇用の内訳」を見ると、アベノミクスとは関係ないことがよくわかるだろう。しかし、なぜか「アベノミクス擁護派」は、この雇用の内訳には触れない。
「民主党時代と比べて失業率も有効求人倍率も大幅に改善された」というのも、安倍総理がよくもち出す自慢だが、失業率の低下も、有効求人倍率の上昇も、共にアベノミクス前から始まっていたこと。図2のグラフを見ればわかるとおり、アベノミクス開始前後で傾きに全く変化は見られない。
アベノミクス以降もずっと改善傾向が継続しているのは、単に金融危機が発生していないから。数字が悪化した時期を見ると、まず1991年のバブル崩壊以降だんだん悪くなっていき、1997年末に発生した金融危機の影響でさらに悪化している。
そして、2003年あたりから徐々によくなってきたが、2008年のリーマンショックでまた猛烈に悪化する、という経緯が見て取れる。雇用を最も悪化させるのは金融危機で、アベノミクス以降は幸運なことにそれが発生していないのだ。だからずっと改善傾向が続いている。
安倍政権以降の実質賃金の推移を見ると、実に悲惨な結果になる。実質賃金とは、名目値賃金(額面そのままの数字)から、物価変動の影響を除いた数値のこと。本当の購買力は実質賃金を見ないとわからないので、実質賃金は国民にとって最も重要な統計といってもよいだろう。では、図3のグラフを見てみよう。
実質賃金はアベノミクス開始前より3.6%も下がっている。これは、名目賃金の伸びを、物価が大きく上回ったからである。そして、物価が上がったのは、消費税増税に加え、アベノミクス第1の矢(異次元の金融緩和)で無理やり円安にしたからである。なお、2018年の名目賃金が1年で1.4%も上がっているのは、算出方法を変えてかさ上げしたから。かさ上げしても大した数字ではないが。
この実質賃金の下落が大きく国内消費に影響した。日本の実質GDPの約6割を占める実質民間最終消費支出が異常に停滞したのである。
実質民間最終消費支出が2014年から2016年にかけて3年連続で落ちた。戦後初である。さらに、2017年は前年よりは回復したものの、4年も前の2013年を下回った。この4年前を下回るという現象も戦後初。アベノミクスは戦後最悪の消費停滞を引き起こしたのだ。しかも、この数字ですらかさ上げされている。2016年12月にGDPが改定され、数字が大きくかさ上げされた。政府は、「2008SNA」という国際的GDP算出基準への対応がかさ上げ要因であると説明していたが、その基準とは全く関係ない「その他」という部分で、消費の部分が大きくかさ上げされている。「その他」でかさ上げしていなければもっと悲惨な結果になっていたのは間違いない。
また、安倍総理は賃金というと「賃上げ2%達成」を盛んに強調するが、この賃上げ率は春闘における賃上げ率を使っている。問題は、春闘の賃上げ率のサンプルだ。当然のことながら、春闘に参加した組合員しか対象になっていない。そこで、賃上げ率の対象となった組合員数の、全体の雇用者(役員を除く)に対する割合を見てみよう。
アベノミクス以降を見ると、安倍総理が盛んに強調している賃上げ2%の対象となった労働者は全体の約5%程度しかいない。
5%にしか当てはまらない数字を声高に言い、あたかも国民全体の賃金が上がっているかのように錯覚させようとしている。
しかも、この賃上げ上昇率は名目値である。この上昇率から、消費者物価指数を差し引いた実質賃金上昇率を出すと、実に残念な結果になる(図6のグラフ参照)。
なんと、民主党時代最も低かった2012年の実質賃金上昇率1.72を上回った年は、アベノミクス以降だと、2016年のたった1回しかない。2014年なんか大幅なマイナス。このように、実質賃金上昇率でみると民主党時代よりもアベノミクス以降の方が圧倒的に低いのである>(以上「文春オンライン」より引用)
渾身の「安倍治世六年有余の総括論文」だ。引用した「文春オンライン」記事には豊富に図が掲載されていて非常に分かり易い。分析するまでもなく、統計資料を一読すればアベノミクスはインチキだと分かる。
安倍氏が自画自賛する「完全雇用確保」と叫んでいるのは120万人も雇用が増大した「介護」職か大きく数字を引き上げているだけだ。その介護職は待遇が悪いのが「定評」で、定着率は極めて低い。従って職員募集が絶えず行われて、「雇用拡大」の数字を形成している。
実質賃金で見ても「悪夢の民主党時代」よりも安倍自公政権下の六年有余の方が悪いことがお解りだろう。だから悪夢は「民主党時代」ではなく、安倍自公政権こそが「悪夢」なのだ。その「悪夢の安倍自公政権」をまだ続けたいと願っているのは法人税を引き下げてもらった企業経営者と減税してもらった富裕層だけだ。
そうした実態がなぜ国民に伝わらないのか。理由は簡単だ、腐り切ったマスメディアが「実態」を殆ど何も伝えないからだ。彼らは「記者会見」には出席率良く雁首を並べるが、実態を知ろうと統計資料を調べようとの努力は一切しない。だから「マスゴミ」と陰口を言われるのだ。
アベノミクスはアホノミクスだと、私はこのブログで批判し続けてきた。奇しくも私の論評が正しいことを「文春オンライン」の記事は証明したが、正しいのは私ではなく、現実の統計資料だ。
経済を語るものが統計資料に目を通さないで、記者会見を鵜呑みにしてシタリ顔でテレビに登場し、コメンテータとして安倍自公政権擁護の論を吐くなぞ愚の骨頂だ。その愚の骨頂にギャラを払って画面に登場させているテレビ局も「国民世論操作機関」と批判するしかない。スシローと綽名されている御仁を出演させ続けているテレビ局の見解を伺いたい。
スシローを出すのなら、当然安倍政権に批判的な評論家も出演させて議論させなければならないだろう。テレビなどのマスメディアにはそうした意見の「公平性」を確保する責任がある。偏りをなくす努力をテレビ局などのマスメディアは行っているだろうか。
行っていないと思うから、私はマスメディアを「腐り切った」と批判するのだ。だからテレビを持たず、宅配新聞を止めてしまった。それでも情報に飢えることはない。ネットがあれば充分だ。玉石混交の情報の海から質の良い情報を選び取るのは各自の眼力に依るところだが。
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