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あなたの参院選
氷河期世代の人生再設計は
ロスジェネの逆襲も?
デジタル毎日 2019年7月15日 14時00分(最終更新 7月15日 14時00分)
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「この層が氷河期世代です」。1975年生まれの小島鐵也さんは、人口ピラミッドのグラフを指さした=愛知県豊橋市で2019年6月28日午後0時54分、奥山はるな撮影
平成不況のあおりを受けた就職氷河期世代(ロスジェネ)がクローズアップされている。4月の経済財政諮問会議(議長=安倍晋三首相)で民間委員が「人生再設計」を提言したことがきっかけだが、インターネット上には当事者から「もう手遅れ」「人生がムリゲー」といった声も上がる。時代に翻弄(ほんろう)され、無職や非正規雇用のまま40歳前後を迎えた人たちに、政治は何ができるのか。ウェブライターのヨッピーさん(38)ら氷河期世代の3人に取材した。【奥山はるな、日下部元美】
■「取り残されてゆくばかり」
「年齢が高すぎるから無理です」
グラフィックデザイナーを志す愛知県豊川市の小島鐵也さん(44)は5年前、文部科学省の委託による人材育成プログラムで投げかけられた言葉が忘れられない。参加者の多くは学生だったが、負けないよう作品をつくり、リクルートに訪れた企業の担当者に話しかけようとした。すると、講師に引き留められ、冒頭の言葉をかけられたのだ。
「この年齢で実務経験もないから、どんどん取り残されてゆくばかりです」。ここ10年は無職のまま、実家で母と2人暮らしをしている。
小島さんのように、バブル崩壊後の景気悪化で企業が新卒採用を絞った1993〜2004年ごろに高校や大学を卒業した人たちは「就職氷河期世代」と呼ばれる。現在30代半ば〜40代半ばとなった約1689万人が中心層で、正社員として就職できなかった人の多くは非正規雇用や無職の立場となった。
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正社員を目指したが就職氷河期の壁にはばまれた1975年生まれの小島鐵也さん=愛知県豊橋市で2019年6月28日午後1時40分、奥山はるな撮影
小島さんは2歳で父を亡くし、トヨタの下請け工場で働く母が、女手一つで家計を支えた。94年に高校を卒業。「グラフィックデザインの仕事をしたい」という夢を抱いて上京し、働きながら専門学校に通う資金をためることにした。
東京・八王子で月2万8000円のアパートを見つけ、警備会社でアルバイトを始めた。線路の工事現場に立ち、列車が来ないか見張る仕事。日勤は9000円で、夜勤なら1万円になる。差額の1000円が惜しくて夜勤を選んだ。冬はしんしんと冷え、つま先から凍り付くように寒かった。
■正社員を目指したのに
連日夜勤を続けたが、不況で仕事が減り、月給は17万、18万円に下がった。働き始めてから2年がたった頃、社長に「正社員にならないか」と声をかけられる。応じたものの、保険料などが天引きされ、手取りは14万円になった。週3回の泊まり勤務も任され、時給に換算したら「500円くらい」だった。
苦労を重ねて24歳で専門学校に入学した。ところが、卒業した2001年3月は就職難が底を打った時期だ。正社員の門は極めて狭かった。「フリーター」にしかなれず、追い詰められた。
「これは自己責任ではない。時代のせいだ」。そんな思いをブログにつづり始めたのは30歳の頃だ。07年、会員制交流サイト「mixi」に「氷河期世代ユニオン」というコミュニティーを作ると、全国各地の同世代が参加し「仲間がいる」と思えた。リーマン・ショック後の08年暮れ、東京の日比谷公園に失業者のシェルターとして設けられた「年越し派遣村」の運動にも参加。しかし、ブームが去ると交流は途絶えていった。「みんな自分の生活で精いっぱいなのかな」と想像する。
「人生再設計」が提言された動きについて、小島さんは「私たちの世代が注目されたのは、ありがたい。冷や水をかけたくない」という思いがある。けれども経済財政諮問会議の民間議員がまとめた提言には「人手不足産業への就職促進」「地方への人材移動の促進」という言葉が踊っていた。
「また雇用の調整弁にされるのか」。そんなあきらめのような感情も覚えている。政府によるスキルアップのプログラムは参加してみたいが、5年前の経験から「期待しすぎないように」と自分に言い聞かせている。
■常見陽平さん「人生がムリゲー」
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「僕らの世代は人生がムリゲー化している」と語る1974年生まれの常見陽平さん=東京都千代田区で2019年6月26日午前11時38分、奥山はるな撮影
千葉商科大の専任講師で、働き方評論家の常見陽平さん(45)は自分たちの世代の人生を「ムリゲー」と表現する。「かつては正社員でも、工場のラインや事務の仕事があった。けれども工場は海外移転し、事務は派遣に委託され、正社員の枠が大きく狭まった。自己責任とはどう考えても言えない」。自身も企業で働いていた頃に、日付が変わるまで猛烈に働かされ、転職情報誌を開いてあまりの求人の少なさにがくぜんとしたことを鮮明に覚えている。行き場のなさを実感させられた。
■本来は存在感のある世代
政府が6月に閣議決定した骨太の方針には「就職氷河期世代支援プログラム」が盛り込まれた。正規雇用を希望する非正規労働者や無職の人、ひきこもり状態にある人ら約100万人を対象に、3年間で正規雇用を30万人増やす目標を掲げている。この中には民間事業者に就職相談や教育訓練などを委託することも明記されている。
こうした動きに対し、常見さんは「企業でなく労働者に金を配るべきだ」と指摘する。氷河期世代に向けた就職イベントでは会場がガラ空きのこともあり、参加するための時間や金がないことを痛感した。「今年の10連休の時にも問題になったが、不安定な雇用の人はカツカツの生活で、シフトを減らせない。生活費や交通費のバウチャー(引換券)を配れば、イベントに参加する余裕ができる」
支援プログラムで気になるのは、どんな層にどんな仕事に就いてもらうか、踏み込みが足りないことだ。「政府はよく『成長産業に人を動かせ』というが、誰でもできる仕事でない。介護は過酷だし、IT(情報技術)にはスキルがいる。誰にどんな仕事をしてもらうか、ターゲット別のプランを作らなければいけない」。人材ビジネスへのばらまきで終わってしまうことを懸念している。
企業側は、再就職の門戸を開いているのか。マイナビが昨秋に行ったインターネット調査「ミドルシニア採用企業レポート」では、直近3年間に中途採用をした2372社のうち、40代を1人でも正規雇用したのは約5割。だが、採用の理由には「豊富な経験」「専門性が高い」といった点があがっており、新卒の時点でつまずいた人にとってハードルは高いようにみえる。
常見さんは参院選で、同世代の政治家による発言を期待している。「当事者としての視点から、アラフォー男女に寄り添う政党が出てきてほしい。政治不信は根強いけれど、団塊ジュニアで人口は多く、本来は存在感がある世代だ」
■ヨッピーさん「ロスジェネの逆襲が始まる?」
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「氷河期世代はかわいそうなんですよ」と語る1980年生まれでウェブライターのヨッピーさん=東京都新宿区で6月28日午後3時39分、日下部元美撮影
「インターネットで最も数字を持っている」といわれる人気ウェブライターで38歳のヨッピーさんも氷河期世代の一人。「人生再設計」について聞くと「遅い!」「動機がむかつく!」と憤りつつ、「ロスジェネの逆襲が始まるかも」と展望を語った。
僕が人生で唯一うつ病になりそうだったのが就活の時でした。
当時はまだ履歴書やエントリーシートが手書きで、1社書くだけで大変なのに、50〜60社エントリーして。面接官の前に就活生が並んで「はい、次」「はい、次」ってベルトコンベヤーみたいな面接を受けさせられました。
繰り返し落とされると「俺は間違った人生を歩んできたのかな」って考えるようになる。振り返れば、就活なんて実はそこまで重要じゃない。今の若い世代には「終身雇用制度は終わっているし、新卒で入った会社で人生決まることないから落ち込まなくていいよ」って言っています。でも僕の時代はまだ終身雇用の空気があって、だからこそ「これで人生が決まる」というプレッシャーがありました。大手に決まった人は、業種を選ばずに片っ端から受けていた。なりたいものになれる人なんて、ほんの一握りの時代でした。
■外れくじを引いた世代
僕らの世代って、外れくじを引いている感覚なんです。団塊ジュニアなんで、人口も多くて、受験もそこそこ厳しい。そのくせバブル世代ほど楽に就職できなくて。
憂鬱な就職活動って、安定した雇用との対価のはずだったのに、就職したら「終身雇用、終わります」って雰囲気になった。ちょうどいろんな価値観の変化が起きる境目にいたんです。長時間労働とか、旧時代のつらいことをやらされたのに、旧時代のおいしいところはもらっていない。そんな世代かな。
新卒で専門商社に入ったら、まだ猛烈に働く風潮がありました。残業して午後9〜10時くらいに帰ってたんですけど、大学の同期はみんな終電で帰ってて「9時に帰れるの、ええなあ」なんて言われる時代で。でも今はそういう時代じゃない。先輩にたくさん仕事を振られたのに僕らは後輩に仕事を振れないんですよ。
■国や社会に期待しなくなった
氷河期を経験して、ざっくりした言い方ですけど、国とか社会に期待しなくなりました。政治に対する期待度にもつながっていると思います。同世代で飲むと「日本脱出しよう」みたいな話題にしょっちゅうなります。日本社会は変わらないし、政治も若者の意見なんて聞いてくれないし。若い人でもこういう考えの人は多いのでは。今の若い世代は僕らの世代がひねくれた感情をもってたどりついたところにスッとたどりついているような気がします。若い人ってはじめから日本という国に対して思い入れがないですよね。
骨太の方針に支援プログラムが盛り込まれた。対策はありがたいけど、遅いですよね。僕としては、動機もむかつくんですよ。「氷河期の人たちが大変で救わないといけないからやりましょ」。これならいいんですけど「10年、20年後、生活保護受給者が一気に増えたら財政も大変やから、何とかせなあかん」っていう考えで始まっているんじゃないですか? 「そのツケが自分に回ってくるのが嫌だからやろう」っていう発想。支援プログラムって一部を人材派遣会社に委託するんですよね? 人材派遣会社なんて、氷河期で非正規雇用が増えて散々もうけてきたのに、なんでまたそこに税金で予算を組むんだと思いますね。
もちろん再設計は、今からでもできるはずです。でも「できる」っていうと「自己責任」や「努力不足」と言うことと変わりません。氷河期世代が生まれてしまった責任を、個人に押しつけるのは違うんじゃないか。「できる」という前提は、やめてほしい。
かわいそうなんですよ、氷河期世代。でもあと10年たったら、氷河期世代が会社の中で偉くなって、現場のトップ層が氷河期世代になりますよね。そのとき社会がどうなるか、ちょっと楽しみです。復讐(ふくしゅう)が始まるんじゃないかって思う。上司の首をばんばん切るとか。それでも全然世の中よくならなかったら、日本を捨てるのかも。
■投票は「行かないとだめ」
政治に氷河期世代の声を反映させるのは、難しいかも。本当は良くないけど、諦めてますよね、みんな。でも、未来が良くなる兆候が出てきてほしい。せめて子ども世代にはこういう思いをさせたくないから、子育てにかかるお金は全部無料にしてほしいです。
そのためには、みんな選挙に行かないと。そこは氷河期世代にも非があって、投票しないから、ないがしろにされる面はある。やはり選挙は、行かないとだめですね。
連載「あなたの参院選」
この連載は毎日新聞社とYahoo!ニュースによる共同企画です。参院選を新たな目線から伝えます。
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190715/k00/00m/010/035000c
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