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佐川 元財務省理財局長を証人申請へ 森友文書の訴訟で原告弁護団
https://news.yahoo.co.jp/byline/aizawafuyuki/20190708-00133198/
7/8(月) 6:16 相澤冬樹 | 大阪日日新聞論説委員・記者(元NHK記者)
佐川氏の証人申請を原告側が届け出る大阪地裁(撮影・相澤冬樹) 森友学園への国有地安値売却をめぐり、国会で「交渉記録はない」との答弁を繰り返した財務省理財局長(当時)の佐川宣寿氏について、裁判で文書の公開を求めてきた神戸の大学教授と弁護団が、証人として申請し、法廷での証言を求めることになった。近く大阪地方裁判所に証人申請を提出する。佐川氏は国税庁長官を退官した後は公の場に姿を見せておらず、法廷での証言が実現すれば初めてのことになる。 公文書隠しの真相解明に佐川氏の証言求める 問題の国有地の前に立つ安倍昭恵首相夫人と森友学園の籠池夫妻(協力者提供) この裁判は2年前、森友学園への国有地の大幅値引き売却の真相を追及するため、神戸学院大学の上脇博之教授が、交渉記録などを開示しない財務省近畿財務局の対応は不当だとして情報公開を求める訴えを大阪地方裁判所に起こしたもの。財務省は開示に応じなかったが、公文書の改ざんで安倍昭恵首相夫人の名前を削るなどの問題がが発覚して世論の批判が高まる中、今年4月になってようやく面談、交渉記録を開示した。 国有地を大幅値引きした財務省近畿財務局(撮影・相澤冬樹) では、なぜこれらの文書を2年前に開示できなかったのか?国の説明は「これらの文書がどこでどのように保管されていたのか、現在のみならず今後も特定はできない」、だからわからないというものだ。原告側は、理解不能で不合理な回答で、財務省の隠蔽行為を誤魔化すものだと受けとめた。 そこで、財務省が正当な理由もなく2年近くも情報開示を遅らせたのは違法だとして、国家賠償法に基づき1100万円の損害賠償を求める裁判に、訴えの内容を変更することにした。そして、その事実を解明するために欠かせない人物として佐川元理財局長を証人として申請する。 国会答弁で「記録はない」と突っぱね通した佐川氏 佐川氏といえば、森友学園への国有地売却を追及する野党議員に対し、国有財産を所管する財務省理財局長として、「記録はない」と突っぱね通した姿があまりにも有名だ。 「売買契約に至るまでの財務局と学園側の交渉記録につきまして、委員からのご依頼を受けまして確認しましたところ、近畿財務局と森友学園との交渉記録というのはございませんでした」 「面会等の記録につきましては、事案の終了ということで取り扱いをさせていただいております。したがいまして、本件につきましては、平成28年6月の売買契約締結をもちまして既に事案が終了してございますので、記録が残っていないということでございます」 言葉使いは丁寧だが「ない」の一点張り。ところが記録は残っていたのである。 原告代理人代表の阪口徳雄弁護士(撮影・相澤冬樹) 原告弁護団の阪口徳雄弁護士は語る。「国会で虚偽答弁を繰り返したのは、文書を公にすれば安倍首相に矛先が向かうと恐れたから。それしか考えられない。その真相を解明するには、佐川氏本人を証人として呼ぶしかない。法廷でウソをついたら偽証罪になるしね」 公文書改ざんで罪に問われるか? 佐川氏は、公文書改ざんに関与したほかの職員らとともに公文書変造、公用文書毀棄(きき)などの罪で告発されたが、大阪地検特捜部は去年5月、佐川氏を含む全員を不起訴処分として罪に問わなかった。ところが有権者から選ばれる検察審査会は違った。今年3月、佐川氏らを起訴しないのはおかしいと「不起訴不当」の議決を行った。審査会は次のように指摘している。 「本件のような社会的に注目を集めた事件については、公開の法廷という場で事実関係を明らかにすべく公訴を提起する(=起訴する)意義は大きいのではないかと考える。」 事実上、起訴すべきと言っているに等しい。この議決を受けて現在、大阪地検特捜部が再捜査を行っている。 大阪地検特捜部に申し入れに訪れた弁護士・研究者ら(撮影・相澤冬樹) 阪口弁護士は5月、大阪地検特捜部に再捜査で起訴すべきという申し入れも行った。この時、次のように語っている。 「この件は、単なる普通の事件だったら必ず起訴しています。そして有罪になります。法律家としてあたりまえの話です。にもかかわらず起訴しなかった。それは政権に対する忖度(そんたく)であり、財務省に対する忖度があったんでしょう。地検だけでなく、検察庁と法務省全体に、政権に対する配慮があったと思っています」 佐川氏の人物像は? 佐川氏は理財局長の後、国税庁長官という要職についたが、公文書改ざんが発覚した直後に事実上更迭された。佐川氏とはどういう人物なのか?財務省関係者から聞こえてくる評価は次のようなものだ。 ●とにかく切れ者。極めて優秀な役人だ。 ●部下に持ったらこれほど頼りになる人間はいない。しかし上司として持ったら部下は大変だろうな。 ●恵まれない環境から苦学して東大を出て大蔵省(当時)に入り、あそこまで上りつめたんだ。 私は都内某所の住宅地にある佐川氏の自宅を訪ねたことがある。思いのほかこぢんまりとしている。車はトヨタのヴィッツだ。近所の人の話だと、最近は誰もこの家に暮らしていないようだという。だが玄関の花は生き生きしているし、誰かが定期的に訪れて手入れをしているようだ。私は自分の著書に手紙を添えて郵便受けの中に入れた。 翌朝、再び佐川氏の自宅を訪ねると、やはり人の気配はないが、玄関前に止まっていた車がなくなっている。そっと郵便受けの中をのぞくと…前の日に入れた本がなくなっていた。私は再び手紙を書いて封筒に入れ、郵便受けに投函した。 しっぽ切りの被害者でも説明責任はある 考えてみれば佐川氏は森友事件発覚以降、国会で答弁の矢面に立ったが、肝心の国有地売却交渉時の担当ではなかった。公文書改ざんに関与して役人人生の最後を棒に振ってしまったことを考えると、彼もまたしっぽとして切られた一人なのかもしれない。 しかし、しっぽとして切られた最大の被害者は、命を絶つところまで追い込まれた近畿財務局の職員だろう。彼は改ざんについて「もとはすべて佐川理財局長(当時)の指示だ」と記している。その責任を明らかにするためにも、佐川氏にはぜひ法廷で真相を語ってほしい。そのためには、裁判所が佐川氏についての証人申請を認める必要がある。 原告側はきょう8日大阪地方裁判所に訴えの変更を申し立てた。佐川氏の証人申請も近く提出する方針だ。 亡くなった近畿財務局職員の職場はこの建物の9階にある(撮影・相澤冬樹) 相澤冬樹 大阪日日新聞論説委員・記者(元NHK記者) 1962年宮崎県生まれ。1987年NHK記者に。山口、神戸、東京、徳島、大阪で勤務。神戸で阪神・淡路大震災を取材。大阪でJR福知山線脱線事故を取材。大阪司法記者クラブ担当の2017年に森友事件に遭遇して取材を進めるが、2018年記者を外されてNHKを退職。大阪日日新聞に移籍した。この時の経緯を「安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋刊)という本にまとめて出版した。
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